危機の時代の地域と自治体 〜地域から平和な世界を
ー第51回神奈川自治体学校ー
延べ189人が参加
11月12日、横浜市健康福祉総合センターで第51回神奈川自治体学校が開催されました。今回のテーマは「危機の時代の地域と自治体〜地域から平和な世界を」でした。
岸田政権が、ウクライナへのロシアの侵略や米中対立の激化などを挙げて軍備増強を進めるなかで、自治体は、そして私たち一人ひとりは何をすべきかを一緒に考え行動しましょう。という趣旨です。
参加者は午前中の全体会に88人、午後の分科会に74人、先立って開催されたプレ自治体学校に15人、地方財政講座に12人、延べ189人でした。
<学校長あいさつ>
まず、長尾演雄理事長が、自治体学校長のあいさつを次のとおり行いました。
「おはようございます。学校長を務めることになりました長尾です。よろしくお願いします。51回目の学校ということで、もうなじみの人はいっぱいいるだろうと思いますけど、学校の作り方だとか、学校に対する我々の思いみたいなことを少しお話しして学校長の挨拶に代えたいと思っています。
私たちはいつも4月の段階で実行委員会を立ち上げます。そして毎月1回ずつ会議を持って今年はどういうテーマで学校を作ろうかということを真剣に議論します。その上で全体会の講師の先生を決めるとか文化会のあり方をどうするとかというような形で、半年以上かけて学校を作り上げる。そういう作り方をしています。
今年のスローガン、全体会のテーマをどうするかということも真剣に考えました。テレビとかいろんなことで報道されていて、もうどうすればいいのか、何かしたいという、そういう気持ちにはなっていても、どういう動き方をすればいいのかがもう一つ見えてない。市民として地域の住民として、どう生活することが、どう生きることが平和につながることなのか、というようなことを一緒に考えられればいいな、そういう学校が作れればいいな、というようなことで、全体のスローガン。今日掲げてあります、危機の状況の中で地域自治体から平和を築くような、そういうスローガンにしたいというのがありました。そして全体会のところで平和の問題をお話しいただいて、みんなで考える機会を作れればいいなと思っていたところに、今日快く引き受けていただきました猿田先生にお話ししていただこう、ということで進めてまいりました。市民と自治体で平和を作る方向が何かできないのか、というようなことを一緒に考える、そういう学習の機会ができたことを大変喜んでいます。どうか猿田先生のお話をお聞きしながら心の中で対話するような形で、「そうだな」とか「そういうことなのか」と心を動かしながら私たちに何ができるのか、自治体として平和に貢献するような自治体とはどういう自治体なのかを真剣に考える時間を作れればいいなと思っています。それがお話ししたい一点目であります。
それから横浜市従の皆さんが国際連帯の活動をやっている。そこで相談をしたところ、留学生の人と対話ができる。留学生の方と一緒に国際連帯の話ができると話されました。今回特別報告をいただくとなれば、全体会はずいぶんつながりがある学習会になるのかな。こういう形で全体会を作り上げることができました。
午後の分科会についてお話ししておきますと、私たちは実際この学校を、みんなが先生でみんなが生徒であるような、みんなで教え合いみんなで学び合うような、そういう学習会にできればいいなと50年の間それを追求してきたような経過があります。全体会の中で対話するということは無理ですから講義をお聞きして質問を受けて質問に答えていただくという形で双方向の学習会ができればと考えています。分科会は規模の上からもそれぞれが自分のテーマ自分が深めたいテーマについて参加できるという、そういう学習の場所になっていますから、それこそまさに参加者全員が生徒であって参加者全員が先生であるような、今学校のあり方が問われていますけど、自治体学校はそれを乗り越えられるような学習の場を作れればいいと思っています。ぜひ積極的に問題意識は持って分科会に参加していただきたい。そして遠慮もいらない。まさに発言を堂々として、質疑をうんと深めて、そして旺盛ないわば対話討論ができるような、そういう学習会ができればと思っています。
自治体学校に参加して良かったな、思いっきり発言ができて、質問ができて、みんなで学び合えた学校だよ、というそういう実感を持ちながら帰っていただければ、実行委員みんなが半年かけて作った学校が成功したと考えます。ぜひそういう学校にしていただきたいと思っています。これから先生の話をじっくり聞きながら平和に貢献できるような、我々のあり方、市民生活のレベルから平和が築けるようなそういう学びができればと思っています。」
<実行委員長あいさつ>
次に、自治体学校実行委員長の政村修さん(神奈川自治労連書記長)が、実行委員会を代表して次のとおりあいさつしました。
「第51回神奈川自治体学校にご参加をいただきありがとうございます。神奈川自治体学校も、50回の節目を経て新たな歴史を刻む一歩をふみ出すこととなりました。
1970年代からみんなが先生、みんなが生徒これを合言葉に地方自治や自治体行政をめぐる様々な課題を神奈川自治体問題研究所と県下の運動団体、県民、議員、自治体労働者、労働組合がともに学び合う場として積み重ねられてきました。こうした歴史を引き継いで今年も4月に第1回実行委員会を開催して以降、約半年にわたり神奈川自治体問題研究所の役員の皆さんやとりわけ分科会の構成や運営については関係する運動団体の皆さんに一方ならぬご尽力をいただきました。本日の運営を含め準備に携わっていただいた関係者の皆さんにまず感謝を申し上げたいと思います。
さて神奈川自治体学校が新たな歴史を刻む一方を生み出す一方で今日本社会と地方自治さらには国際社会全体が平和と民主主義、自由と人権、さらには生存自体を巡るせめぎ合いの中で大きな分水嶺を迎えているのではないでしょうか。昨年2月以来続くロシアによるウクライナ侵攻は、国連憲章に基づく平和秩序を脅かし、新たなブロック間の武力による対抗を発生させています。パレスチナガザではハマスによる攻撃を契機にしたイスラエルの軍事行動によって、凄惨な事態が連日報道され人道危機が深刻化しています。コロナパンデミックも新たな変異種の出現や感染拡大の波が再び到来する機器も払拭されていません。
岸田政権はウクライナ侵攻や中国北朝鮮の脅威を口実に敵基地攻撃能力保有を含む大軍拡と改憲策動を強め地方自治を巡っても沖縄辺野古新基地建設をめぐる状況に象徴されるように、また地方制度調査会の審議内容においても地方分権から中央集権へと戦争できる国づくりと不可分の動きが強まっています。
振り返ってみますと2020年の第48回以来神奈川実際学校では「危機の時代の地域と自治体」をテーマに掲げてまいりました。危機が顕在化するもとで、憲法を基礎に地域から住民一人一人が主権者として何をすべきか、みんなが先生、みんなが生徒として学び合いたい、そんな思いが込められています。「新しい戦前」が流行語大賞にノミネートされる状況、それは多くの国民も危機を認識している証左でもあると思います。
本日の自治体学校で全大会と分科会それぞれのテーマで学び、議論を深めるとともに参加者の皆さんがそれを地域に持ち帰り、それぞれの地域で危機を認識している多くの住民と自治体労働者労働組合、運動団体が共同を広げ、憲法と地方自治の原理に立って自治体のあり方を問い直しそれを体現した社会を地域から作り上げていくために、力を合わせていただくことを呼びかけ、実行委員会を代表しての挨拶に代えさせていただきます。今日は1日どうぞよろしくお願いいたします。」
<記念講演>
ND(新・外交イニシアティブ)代表で弁護士の田佐世(さるた さよ)氏が「市民と自治体による平和の構築」と題して記念講演を行いました。
記念講演の大要は以下のとおりです。
「日曜日の朝早くからこうやってたくさんの方にお集まりをいただいてこうなんて皆さん勉強熱心なのかなというふうに思っております。今日は自治体として、世界のどこでも危ぶまれてしまっている平和をどのように築いていくのかに焦点を当ててお話をさせていただきます。
去年の12月にあった安保3文書と言われる日本の安全保障政策を大きく軍事力拡大の方に切りました。敵基地攻撃ができるようにするということを政府が決め、日本の防衛予算軍事予算を2倍にするということを決めた。その3文書が発表された前夜ぐらいから実にたくさんのところから、光栄なことなのか残念なことなのか分かりませんけども、講演の依頼が増えました。この平和の問題は、初心者の方、気持ちはあるけれど知識はほとんどない、勉強をゼロからしたという方から、大変よく知っておられて私なんかもう話すこともないのではないかという方まで、かなり差がある問題であるので、今日どうしようかなとも思っていますが、自治体に焦点を据えた形で、難しい話ではなく分かりやすくお話ができたらなと思っています。
<攻められたらどうする>
最初に「攻められたらどうするのか」という疑問。何で最初に持ってきたかというと、平和運動に関わってらっしゃる方はこの中にもたくさんいらっしゃると思いますけれども、例えば街頭宣伝で、この前の12月に安保3文書の改定をして敵基地攻撃ができるようにするということを政府が決めたわけですし、日本の防衛予算軍事予算を2倍にしますということを決めたことについて反対します、というような街頭宣伝をされた方もこの中に何人かはいらっしゃるのではないかなと思います。その時にその意見に賛成をしてくれる人はもちろんチラシを受け取っていると思いますが、「そんなこと言ったって攻められたらどうするんだ」みたいなことをぶつけられる事が一番街頭で多い。そういう時にどんなふうに答えていったらいいのかということを私なりのお話をさせていただきます。
そのあと、軍事力を拡大するということを去年の12月に決めましたけれども、本当に安全になっただろうか、というところをちょっと振り返ってみたいと思っています。特に自治体にとって、今回の軍事拡大、あるいは政府が今取っているような政策を取り続けるとどんなことが起きるのかというところを、今日は自治体学校ですから中心にお話の時間を割いていきたいというふうに思っています。特に私は東京都練馬区に在住していまして練馬駅でミサイル攻撃を受けた時の避難訓練になるものを東京都が実行しまして、まさに私が今一番気にしていることを目の前の駅でやってくれたなと思って、つぶさに全部見てまいりました。今日、自治体職員の方もいらっしゃると思いますが、そんな避難訓練をやれと、業務として職務命令でやれという日がもう来たかもしれないし、これから来るかもしれない。そんな状況もご報告させていただければいいかなと思っています。
そのあと、「軍事力の批判ばっかりしているけど、外交・外交、私の団体の名前は新外交イニシアチブ、外交を推進しましょうという、そういうイニシアチブですけれども、じゃあ外交って何やったらいいのよ」というようなところを残りの時間さいていきたいと思っています。
私の団体の一番の売りはアメリカに直接行って、ワシントンにあるアメリカの議会とか、アメリカの政府、国防省、国務省に対して、例えば沖縄に新しい基地を作らないで欲しいというロビーイングをしたり、この夏1ヶ月滞在した時には沖縄の基地の問題も訴えますけれども、それよりさらに時間を割いてやったのが台湾有事を絶対に起こさないでほしいと。アメリカと中国が非常に険悪な状態に、トランプ政権からなり続けているけれども、そして戦争になった場合に戦場になるのはこの沖縄であり日本であるということで、絶対に戦争してくれるなということを訴えている。そんな団体で、戦争を回避せよという政策提言書というのが大変人気でして、これのおかげで私が毎週のようにあちこちに呼んでいただいていますけれども、どのようにして戦争を回避していったらいいのかということをその後お話しします。実際にすごい外交をやっているところはたくさんある。今申し上げたように「外交で平和なんか作れるわけないじゃないか」とよく言われるわけですよね。ですけど「ちゃんと周り見たことありますか。アメリカ以外の国見たことありますか。」周り見てみるとこのアジアの国々にはたくさんすごい外交をやって、自分の国を平和に保っている国がたくさんある。そういう国についてどういう外交をしているのかというのを、その他の国から学んでいきましょうというようなこともお話をさせていただければというふうに思っています。
本題に入ります。今日ここでお話しする予定では、ガザの話、ウクライナの話、一言も触れなかったんですが当然ながら平和を思った時に、今私たちが真っ先に思い浮かべるのは、ガザの人々が日々日々もう本当に、逃げ場もなく壁の中に囲われて、やれることといえば、もう空を見上げてミサイルが落ちてくるのを待つのみ、みたいな生活をしている人たちが何百万人もいるというような、そういう状態なわけです。その中身についても後半でしっかり触れていきたいと思っています。戦争を止めるっていうこと、平和を作っていくっていうこと自体は、どの分野においても原則はやっぱり変わらなくて、結論から最初に言うようなことになりますけれども、結局のところあのガザの攻撃、イスラエルに攻撃を止めるにしても、今アメリカが世界のまだ王者であるという事態が揺らぎつつも変わっていない中で、それを変えていくためには各国が声を上げなくちゃいけないし、その各国政府が日本の政府みたいに動かない場合には、日本国民あるいは日本に住む市民一人一人が声を上げて変えていく他ないので、そういう意味ではどの戦争について止める、あるいは戦争が始まっていない場合にはそれを止めるためには市民一人一人が声をあげなきゃいけない、というところは変わらないと思います。今日の新聞を開くとロンドンで30万人ですか、このガザへの攻撃が10月7日に始まってから起きたデモでは一番大きいと報じられていました。そういった30万人のデモを行って、アメリカに追随して支持を表明しているイギリスのスナク政権をなんとか止めていこうという、イギリスの市民の人々の声の集まりだと思います。
今からお話することは、今日の学校ということからすると私が先生として教えられることがそんなにあるわけでもないですけれども、どこか少しでもヒントになることがあれば、それを市民の声をこれから作っていく時のヒントにしていただければと思います。中には台湾有事あるいは沖縄の状態というものをテーマにしながらその方法のヒントになるようなもののお話ができるかもしれないし、それはウクライナだったりガザだったりするかもしれませんが、何か私の話の中で仮に得ていただけるものがあるとすれば、そこからどんな戦争に対してでも声を上げる、そんな一つのヒントになるのではないか、というところで聞いていただけたらいいのかなと思っています。
前置きが長くなりましたけれども、そもそも街宣してチラシを配って軍拡反対と言った時に「でも侵略されたらどうするの」と言われる事がある。それにストレートに答えるときに、「外交で」と言っても「外交で何をやるのさ」と言われて答えに詰まってしまうという現実がなくもないのかなと思う。そこをちょっと整理していきたいと思います。
<日本は攻められるのか>
一つ目。なかなか街頭宣伝でこれを話して聞いてもらえるかどうかちょっと微妙ではありますけど、私が確実に全国どこに講演に行っても必ず話すこととしては「日本って本当に攻められるのか」ということです。これ言うのは結構勇気要りますけど、説明をすれば本当にそうなんです。「北朝鮮が攻めてくる」と言いますけど、本当に北朝鮮のミサイルって日本にめがけて当たるんでしょうか。確かに北朝鮮はこの何年もの間ミサイルの演習と称してたくさんのミサイルをこちら側の方向に飛ばしてきてはいます。けれども日本に当たったらどうなるんでしょう、北朝鮮は。その後、一応お約束されていることとしては、もし北朝鮮が核兵器なんかを積んだものを日本に当てたらその瞬間、アメリカが北朝鮮という国をもう跡形もないぐらい破壊するか、少なくともキム王朝がある平壌の中枢部分というのは攻撃をして今の北朝鮮の体制は一瞬にしてなくなることになっています。
北朝鮮は当然それをわかっていてやっているわけで、何でこっち側に飛ばしているかというと、ミサイルは飛ばしたい。いいことじゃないけどミサイルを飛ばしたい。飛べるように、飛ばせるようになりたい。アメリカの東海岸のワシントンのある、遠くまで核兵器を積んだミサイルがちゃんと飛ばせるようにして、それで自分の国を守り且つアメリカとの交渉力をつけたい、ということを考えているので、日本に当てるつもりもない。北に飛ばしたらロシアに当たってしまう。西に飛ばしたら中国に当たっちゃう。南に飛ばしたら韓国に当たっちゃうわけですよ。何もない日本の方向に飛ばしているだけで、日本を狙っているわけじゃないです。ロシアは今南下して侵略する余裕はありません。ウクライナで手一杯です。
中国は攻めてくるんですかというのが皆さん一番気にするところだと思いますが、中国と日本の間に、何かあんな大きなガザの紛争やウクライナの紛争のような2国間の問題って何か1つでもあるんでしょうか。尖閣諸島があると思うかもしれないけれど、あんな誰も住んでいなくてエネルギーがあるかどうかももうわからないようなあんな島のために、中国だってそれを侵害されて守る立場の日本だって、あんなウクライナ戦争やガザの紛争になるような戦争は絶対しないです。今日本と中国の2カ国だけ見た時にはですね、戦争なんて起こりえないんですよ。じゃなんで、ちょうど今頃の時間帯にやっているワイドショー、特に平日の昼間にやっているワイドショーでは、あんなに明日にも日本が中国に攻められてそれに対応するため日本が軍拡しなきゃいけないみたいな話をしているのかということですけれども、日本が唯一戦場に仮になるとした場合はどんな場合かというと、それはアメリカと中国の紛争である台湾有事。私が台湾有事、台湾有事というものですから私の大学での授業、東京六大学の一つの大学でうちの学生は「台湾有事の意味が分からない」と言ってクラスの80%ぐらいの学生が「1時間何を言っているか分かりませんでした」というコメントを書いてきたので、「台湾有事」と呼ぶことはやめて「台湾戦争」と呼ぶことにしますけれども、「ゆうじ」というのは人の名前ですか」と聞かれましたからね。大学生に。
<日本が戦場になる場合>
話を戻すと、日本が戦場になるとすると、唯一今ある可能性としてはアメリカと中国がその2カ国間の地域における派遣国争いの中で戦争を起こして、日本が自衛隊を送るとかこれもまた日本の選択が入らなきゃ日本も巻き込まれないんだけれども、日本政府が、麻生さんが言うように「戦う意思を示すぞ」と「覚悟を示して行かなきゃ抑止力にならないんだ」とか、台湾でこの8月に言ったわけですけれども、日本が自衛隊をその台湾有事に派兵をするとか、あるいは日本にある米軍基地、横浜界隈でもその米軍基地が増えていくということに残念ながらまあこの1年決まっているんですけれども、米軍基地そちらの基地から飛ばされれば横浜のノースドックは米軍が使うわけですから、そこから台湾有事に船が派遣されれば横浜の港っていうのは攻撃を、反撃をされたって自衛権の行使として認められるようなことになっていくわけですよね。中国の方の自衛権の行使として。日本が戦場になる場合としては日中の戦争ではなくて米中の戦争が起きた時に日本政府が何らかの形でそこに関わるということを表明した時に反撃を受けて、攻撃の対象になると。それが唯一の戦争になる可能性であると理解をしています。
だからこそ日本の安全保障政策の絶対命題としては日本を戦場にしない。私たちを戦場の場に置かないということを、今沖縄なんかでは「再び沖縄を戦場にするな」ということが合言葉になっていますが、その戦場になるようにしないために何をするかというと、台湾戦争を回避するということが決定的に重要になります。ご覧いただいたこの提言の「戦争」は何を意味するかというと、台湾有事、台湾戦争を回避することということになります。日本において台湾戦争を回避することだよ、台湾有事を回避することだよ、と言うと政府側の方も「いやいや私たちだって戦争を回避したいんだよ」と言います。今日はそれなりに軍事の問題に関心がある方がたくさん集まっておられると聞いているので細かく説明をしませんけれども、「日本政府だって戦争を回避するために方法を色々取ろうとして頑張っているのだ。」その方法は何なのかと言うと、先ほど説明をしているように去年の12月に大幅に拡大された軍事力の増強でして、敵の基地、敵の基地とは書いてなくて敵を攻撃できると書いてありますけど、文章を見ると敵を攻撃する能力だとか、防衛費を倍増するだとか、武器をたくさん輸出する、生産を日本で高めてそれを海外に輸出をし、それをアメリカ陣営に入ってくれそうな国に提供することでその多くに具体的に言うと一番の筆頭はフィリピンですけれども、フィリピンに軍事力を高めてもらってアメリカ陣営で頑張ってもらうというようなことが決まっていったわけです。これが、日本が戦争を避けるために今政府として取っている政策なわけです。加えて自衛隊がじゃあ中国にかなうのかというと中国には全くかなわない。どうするかというと米軍と一体化をしてたくさん軍事訓練を行い、たくさん施設を増強した上でアメリカとも日本の自衛隊も一緒になって使うよ、ということを決めて、そして中国に対抗していくんだということを決めているわけです。米軍すごく強いからこれで安心だというのが向こう側の論理です。
<軍事力か外交か>
私は夏には、1ヶ月必ずワシントンで過ごすようにしていて、「台湾有事を絶対に起こしてくれるなよ」ということを、アメリカの政府だとかに訴えるということをやっていますが、この夏8月はターゲットをアメリカの中でも非常にタカ派政策をとっている中国特別委員会というのがあるんです。議会の中で言うと最近ちょっとお気づきかもしれませんがウクライナの戦争は続いていて、アメリカはそこに武器をいっぱい提供しています。イスラエルが、ガザ攻撃していますし、アメリカはイスラエルに全面的な支援を約束して揺るぎません。なんだけどどうやら何だか3日後あたりにアメリカと中国の首脳会談は行われるらしい。それだけじゃなくこの2、3か月の間、ケリーさんとかイエレンさんもまた面談したのかな。財務長官ケリーさんは気候変動の担当、みんな閣僚級で大臣級の政治家ですけれども次々中国と面談してるんですよね。中国の方も習近平さんをはじめトップの政治家の人たちが対談をしている、相手に応じているということで、アメリカのバイデン政権の姿勢としてはですね、この米中対立の問題に関しては、対話の姿勢で行こうっていうのがありありと出ている。特にこの半年ぐらいその対話方針、外交方針というのはすごく強い。それ自体はとても歓迎するべきことだと私は思っていますけれども、アメリカの国内全体を見ればそういった中国との対立において外交を推進する姿勢というのは政権もそうだし、いわゆる有識者と言われる専門家もそうですし、まあまあ市民も関心を持っている人は「平和で行こうや」と「外交で行こうや」というようなことを言っています。でも議会が、政治家というのはどこの国でもそうなのかもしれませんけれども、すごく軍事力に頼ってすごく強い自分、タフオンチャイナと英語では言うんですけども、中国に対して強硬な姿勢を見せることで、来年特に大統領選挙が迫っているアメリカにおいては自分たちの方に1票を、君たちの仕事を奪っている、私たちがずっと築き上げてきたITの知識なんかを勝手に盗んで自分たちの国を繁栄させている憎き中国に対して、自分はこれだけ強く当たるんだから1票くださいよ、という感じで政界が、政治の世界がめちゃくちゃに中国強硬派なんです。その筆頭というのがアメリカの連邦議会の中国特別委員会と言われる委員会で、その筆頭からは今様々な提言が出ていて中国に対して制裁せよとか、委員会から毎日のようにEメールが送られてきて、「この人もウイグルで変なことをやったので制裁せよ」とか、前に出された提言では「中国に勝つためには、日本にある米軍基地を含め周辺にある米軍基地がとても重要なので、米軍基地を早く強化しろ」というようなことの提言がされたりしている。私がワシントンで働きかけをした時にその対象としてその委員会を、その委員会のメンバーというのをターゲットにして行った。「絶対戦争起こさないでくれ」という提言のターゲットにして行ったんですが、その中でもギャラガーさんという議員の筆頭、委員長がいるんですけれども、そのギャラガーさんのその担当の補佐官に面談をした時にこんな話がありました。
ギャラガーさんはとてもタカ派の人なので、会う前に私の親しいアメリカ人のリベラルな友人から、「あんな人に会いに行っても、あんたの提言を言っても全く聞いてもらえない」と。私が何を一番言おうかとしたかというと、「日本国民は戦争に巻き込まれることを全く望んでない」と、「とにかく外交で戦争を避けて欲しいということを思ってるんだ」、ということを言ったんです。その証拠に、ある世論調査が日本でなされたものがあって、自衛隊をもし台湾有事が起きたとしても派兵することには75%の日本国民が反対をしているんだっていう、そういう世論調査があるんです。いやそんなこと言ったって麻生さんがついさっき台湾に行って「戦う覚悟を示すことが日本国民の意思だ」とか言っているわけですよ。全く違うわけですよ。そこで世論調査を示して、日本国民は、政府あんなふうに威勢のいいこと言っているけれども自衛隊すら、台湾に送ることに反対なわけだから、言わんや一人ひとりの国民おやで、私たち1人1人に覚悟なんか何もないわけですよ。私のそのリベラルな友人に、これこそ中国特別委員会議会に行って話をしてくるんだと言うと、その私のリベラの友人は「そんなこと言ったらね、きっとNHKとかにめちゃくちゃアメリカ政府はお金を流して、プロパガンダをして日本国民の意思を変えることまでやり始めるから、そんなこと言わない方がいいよ、言わない方がいいよ」と言われるぐらい、ものすごいタカ派なんです。とは言うものの、だからといって伝えないというのもどうなのかな。例えば沖縄の県民が辺野古の基地反対だけど、反対っていうことを一生懸命言ったら、日本政府がいろんなメディアを使って反対の声を封じ込めに入るから、じゃあ反対の声を上げるのをやめようとするかと言ったらしないわけですよ。当然日本政府が莫大なお金を使って、もう国策を全部プロパガンダで流して、政府に言われなくても日本のメディアみんなそれを流して、みんな辺野古に賛成、賛成と誘導はするけれど、それでも沖縄の人達というのは一生懸命反対の声を上げるわけじゃないですか。そうじゃなきゃ声というのは届かないわけで、こういうことを考えると沖縄の人たちに習えばやっぱりここで、この人に話をしたらプロパガンダがもっと流されるからやめよう、というよりはやっぱり声があるってことを、絶対伝わっていないことだから伝えなきゃと、私やっぱりこれ伝えるべきだと判断をして、その事務所に会いに行ったわけです。そして会いに行きました。ギャラガーさん、とってもタカ派の共和党のその特別委員会の委員長の事務所です。担当しているその委員会付の担当の補佐官が相手をしてくれました。アポを取っていきました。女性でした。最初私がなごやかに話をして、「日本から来ました。沖縄の人たちはこんな風に反対をしているんです。」というようなことで世論調査とかも見せて、「戦争になったら日本というのは戦場になってしまう。もしかするとあなたたちの委員会ではアメリカと中国の対立で、やはりかつそこには台湾という当事者がいるので、その話をする時に日本国民の顔なんていうのは全く思い浮かべもしないだろうし、沖縄の人たちが今どれだけ必死に反対をしているかということについてもほとんど考えることもないと思うが、私たちはとても反対なんだ。世論調査の結果でも自衛隊すら送らないと出いるんだ。何とか強気の姿勢をやめて中国と対話をしてほしい。バイデンさんは対話に入ろうとしている。議会として足を引っ張らないでほしい。」このように話すと、話が終わったのを見計らって、最初に言った言葉というのは「私たちの委員会としては軍事力が高ければ高いほど平和はそこについてくると思っています。それで全てです。」とその一言ばしっと言った。「外交とかではないです。軍事力を高めれば高めるほど平和はそれについてくる」ピースフォローズと言ったんです。「可能な限り軍事力を高めていくしか平和を作る方法はないんだ」と彼女は言って、「あなたが今話したことの全てを私は日本の大使館アメリカにワシントンに大使館ありますから外務省の。大使館から常に連絡を取り合いながら全部聞いているからこれ以上話を聞く必要はない。全てを分かった上で私たちの委員会としては軍事力を高めることが全てであると思っている。」と彼女は言い放ってそれで面談は終わりました。これがアメリカの空気感だと思いました。特にアメリカの議会で多数派を占めている共和党の雰囲気なんだと思いました。こういうアメリカにどこまでついて行って、どれだけ軍事力高くさせられてそれで戦争になるかもしれないということが分かっていて、日本政府は政策作っているのかな、アメリカと心中するつもりなのかな、とその時思ったんです。後で考えると心中というのはアメリカも死ぬことですから、アメリカは死にませんから日本だけが死ぬことになる。そうなると台湾有事になった時に、このアメリカについて行くと言っているということがわかるのかな、と恐怖に思えて、そういう体験をその後いろんなところで話すようにしています。
<米軍と自衛隊の一体化が加速>
この米軍と自衛隊の一体化の加速というのはなぜ進んでいるかというと、日本政府もアメリカにくっついていかないと日本の平和はないからと思っているからでもありますが、アメリカの方としても軍事力をめちゃくちゃ高めたいんですよ、まあギャラガーさんみたいな人は。高めたいけれどもご存知のように今中国というのは圧倒的に力をつけてきていて、経済力もあと何年かしたらひょっとするとアメリカに中国が追いつくんじゃないかと言われている中、中国に対して相対的にアメリカは力を落としている。アメリカ一国ではかなわない。アメリカの政策としては、この前もアメリカの軍隊のトップの人が日本に来てそんな話をしてましたけど、その政策のメインは同盟国を強くして同盟国と一緒になってアメリカの安全を守ることなんです。これは統合抑止と言うんですけど、別に日本の平和を守るためではなくて、アメリカの平和を守るためには同盟国を強くして、強くなってもらって、その同盟国とアメリカは一体となってアメリカの平和を守るというのが、アメリカの国家安全保障戦略に書かれているアメリカの安全保障戦略なんです。別にアメリカが日本を守ることを考えてやってるわけでもないですし、もちろん日本が守らなければ自分の国が不安定になると思えば一定のことはやるでしょうけれども、そんなアメリカとどこまで心中ならぬ自分たちだけの被害を甘受して、一体化を進めていこうとしているのか、というのは、非常に私は疑問に思っています。
日本に戻すと、そういう背景があるのを日本政府は一定承知の上で安保3文書を去年の12月に改定をして抑止力を強化し、そして抑止力の強化だけなら近年まで続いてきた傾向と同じなんですけれども、どうやっていざ戦争が始まった時に戦っていくのかということも決めましたし、いざ戦争が始まった時にすぐに負けない能力。ずっと戦争を継続してウクライナみたいに頑張る能力、継続して戦争する能力、継戦能力をいかに維持するのかということを決め、フィリピンなんかに武器を輸出してどうやってアメリカ陣営を強化していくのかということを決めていったというのが、今の日本の台湾有事をいかにして防ぐかという政策だけど、防げなかった時の話がいっぱい入っているので、防げてない前提も入っているそういう状態なんです。
<軍事力を高めて安全になったのか>
今日現在、軍備の拡大が着々と進んでいます。日々安全になったかというと、もうこの世界不安しかないですよね。もうどんどん不安になっていく。どんどん軍事力による私たちへの生活がむしばれているような状況を肌感覚で感じるようになる。これが進んでいく一方なわけです。それをもっと具体的に見てみると、日本は安保3文書を拡大しました。日米同盟もこうやって強化をしています。そしてまあ西側と今再び呼ばれるようになったヨーロッパ・アメリカを中心とした国々が中国・ロシア・北朝鮮といった国を囲い込んでいく枠組みというのが様々山のようにできています。細かく説明しませんけれども、例えばフォイップ(FOIP)というアジア太平洋だけではなくてインド洋の先のアフリカまでたどり着くような、大きな枠組みで中国を牽制したりだとか、アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟であるとかアメリカ、イギリス同盟みたいなものができたりとか、この夏には保守政権になっている韓国の勢いも借りて、日米韓が軍事演習を毎年必ずやりましょうというようなことで、日米韓の軍事同盟に類似なものもできたりとか、アメリカは世界を二分して「民主主義と権威主義の戦いでお前たちはどちらの側につくのか」ということで民主主義の我々の方が偉いんだよ、当然我々の側に来るよな、というスタンスで相手方を追い込もうとしてるわけです。相手方が追い込まれて大人しくなって、静かになって、戦争がなくなるならこれも一つの方法だと思うんですが、どうなんでしょう。8月に米日韓の3か国の軍事同盟ができた後、9月にロシアと北朝鮮は金正恩さんがロシアを訪問する形で、ミサイルの発射場のようなものを見学するということで、軍事的な協力をロシア北朝鮮で進めていくということを約束しました。これも本当に初めての出来事で、日本中が今後どうなるんだろうということでずっと注視をしていかなきゃいけないというコメントに溢れていました。中国とロシアは日本の周りで太平洋側まで出て、軍事演習を時折やっています。中国は核兵器の保有数を1000発まで、2030年までには増やすということを言っています。ロシアはCTBTから抜けるということをつい2週間ぐらい前に決めて、核兵器の実験を再開するということをやっている。全く安全になる兆候なんてかけらもないんですよね。
<軍事力に頼る愚かさ>
軍事力に頼る政策というのは愚かだと私は思っていて、この30年間日本は軍事力を拡大し続けてきたけれども、そろそろこの方法だけでは日本が安全にならないんだということに気づくべきじゃないかというふうに思っています。どんなに愚かなのかということをちょっと整理して分かりやすくしたのがこの2つです。1つ目は自分たちへの戦争になった時、あるいはこの安全保障政策が進んだ時にどういう立場に自分たちが置かれるのか、どんな影響が自分たちにあるのかということを語らないということ、それからもう一つはですね、極めてもう力をつけて経済力もある中国に対して軍事力のみで対抗しようとすることが極めておろかであるという、その2つに私は整理をしています。
一つ目ですけれども、自分たちへの影響というのを語っていない。それは台湾有事が起きるということが前提で安全保障3文書はいろんな対処方法というのを中に書いているんです。対処力、継戦能力と先ほどご紹介をしたものですけれども、どんなことが起きるのかあちこちでシミュレーションが今なされていますけれども、防衛省の外郭団体である防衛研究所というところが出したシミュレーションはこんな風です。
中国が東シナ海等に船を出してその船からミサイルをばんばん台湾に飛ばし、日本の沖縄をはじめとした南西諸島に飛ばし、というそういう戦略なんだそうなんです。その攻撃を受けるのはたまらないものだから、日本の自衛隊とそれから日本にいる米軍がそこに一生懸命やり返して船を沈める形でミサイル攻撃を止めていこうとする。けれども日本にいる米軍というのは、今とても中国全体にいる中国軍に比べると規模も小さくてかなわない可能性がある。米軍全体なら中国にかなうんだけれど、ここにいるだけの米軍だと足りないということで呼び寄せるんだそうです。その呼び寄せる間、半年から1年間ミサイル攻撃続くんだそうです。すごいですね、ミサイルが降り注ぐ。もしかすると横浜、東京には降り注がないのかもしれないけど、沖縄南西諸島に降り注ぎながら私たちは半年から1年援軍が来るのを待たなきゃいけないんですよ。沖縄新報社の記者さんが「この報告書では民間人は一人も死なないという想定ですがそうなんですか。」と、報告書を書いた人に聞いたそうです。そしたらその答えが秀逸なんです。「中国は非常に精密な攻撃能力を持っているので被害は米軍と自衛隊使用の飛行場や港湾に収まり民間人が巻き込まれることはほとんどないであろう。」と言ったんです。ここで中国をほめてどうするのか。どこでも民間人の被害ってのほとんど触れてない。けれども当然ながら1年、半年です。ミサイルが降り注いでいて、あるシミュレーションでは嘉手納基地においてはもうそこに置いてある飛行機はほとんど全滅をし、地上から飛び立つ間も与えられないままに中国軍から全部粉砕されるっていうシミュレーションになっているんです。それで嘉手納基地の周りに住む市民が一人も死なないなんて絶対ないわけですよね。この状況というものを私が知ったのは、こんなシミュレーションがあるということをどこで知ったかというと、今年の1月1日、元旦号の沖縄の琉球新報紙の一面トップの記事なんです。沖縄の雰囲気がわかっていただけるんじゃないかなと思うんですが、沖縄ではミサイル戦争に備えて自衛隊の基地が司令部はじゃあ地下にしましょう。ミサイルに耐えられるように自衛隊病院が地下でベッド数を増やしましょう。そんな変化が進んでいます。避難訓練も進められていてどうしたら全市民が、全国民が避難できるのかということのシミュレーションというのは次々やらされていて、台湾にほど近い宮古島とか石垣という市町村では飛行機が、宮古・石垣10万人いますから合わせて800機、延べで800機必要だ。避難に800機で10日間かかる。ガザへのイスラエルの攻撃が始まってから10日間でどれだけ人が死んだんでしょう。しかも800機の飛行機なんてそんな戦争になった時に石垣や宮古に飛んで行くわけもないですよね。誰が飛びますか。いやいや自衛隊が飛ぶのではないかと思うかもしれません。最近国民保護っていうのが問題になっているのでいろんな本を読むと、自衛隊は台湾有事が起きた時には戦地に飛び立つのでとても忙しいので国民避難に手を割いてる時間はない、と書いてあります。国民避難というのは自助であり共助でありそしてやっと最後に来るのは公助なので自助を基本にやって欲しいと書いてあるんですよ。勝手に戦争を始められて、勝手に自助だと言われて、コロナの時にも自助・共助・公助とか言われてかなり苛立ちました。そんな無責任な政府、その本は自衛隊の幹部とかが書いてる本なんですけれども、それより前にやることあるだろう、戦争を起こす前にやることあるだろうと思うわけですよね。横浜にも大きな米軍基地がありますし、私の住む東京にももちろんありますし、この横浜の港にも自衛隊、米軍の基地が増やされていく中で沖縄に限った話ではない。必ずしも基地がなくたって、戦争になればウクライナで見られたように、今ガザで行われているように、人々をいっぺんに簡単に殺せるよう、みなとみらいに落とそうか、ということだって当然に起こるわけですよね。これは必ずしも沖縄に限った話じゃない。
<前面に出る国民保護と自治体>
そんな中で今日は自治体学校なので自治体の話をすると、国民保護ということが本当に前面に出るようになっているんです。現状としては基本的には国民保護の責務というのは自治体にあるということになっています。自衛隊じゃないです。東日本大震災の時に被害地に行ってドラム缶にお風呂を沸かして避難した人を入れてくださったりだとか、お弁当配ってくださったりだとか、自衛隊がやる必要があったかどうかはさておき、自衛隊の人たちがやった行為というのは誰からも歓迎をされる素晴らしい行為だったと思いますけれども、これは別に自衛隊の責務になってないんです。基本的には一議的には自衛隊はやることになってない。自治体がやるということになっているんです。だからこそ今練馬区をはじめとしてあちこちで武力攻撃事態に備えた避難訓練というものが用意されているわけなんです。その計画にしても消防庁が作っていて普段敵というものを概念として持っていない消防庁が準備をしたもので、基本的には地震や火事の時の避難と同じ内容になっています。災害というものは基本的には1回起きたら余震は地震では続くかもしれないけれども、そんなにやたらめったら全国であちこちで発生するものでもないし、どんどん悪化するということはない。でも武力攻撃はどこに逃げたらよいのか。逃げた先が攻撃されるかもしれないというものであって、全く類似のものではないんです。国民保護のポータルサイトっていうものを内閣官房は作っていて、そこでどこに逃げるかという避難先をリストアップしたりだとか、攻撃にあった時にどうするかという指示を出してるんです。ウェブサイトを見ていただくと、こんな図があります。屋外にいる場合はJアラートが鳴って、ミサイルが飛んでくると分かったら近くの建物の中か地下に避難しなさい。これは分からんでもない。建物がない場合物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭を守ってください。そしてこんな写真が載っているんです。ミサイルが飛んできたら部屋に身を寄せて頭部を守りましょう。コンクリートに身を寄せて頭部を守りましょう。ベンチの下に目を隠しましょう。駅構内で隙間に身を隠しましょう。これミサイルが飛んできたとき何か意味ありますか。
この11月6日私の住んでいる練馬駅で避難訓練があったらちょっとその様子を見ていただきたいと思います。
−練馬駅構内の避難訓練の様子が映像で流れる。−
練馬区でやっただけで終わるわけはなくて今後避難訓練はどんどん増えていきます。小学校とかでやるようになるかもしれません。沖縄の訓練はこども園で子供達を動員してやっています。多分神奈川県でも随所でやられることになると思いますし、今見ていただいた避難訓練の後には反省会と称した振り返りの会を行う。そこも全部見て記者会見まで最後まで見てきたんですけれど、こういうことを少しずつやることで、国民にいかにこういう時にどう身を守るのかということを伝えていくことが大事なので、教育啓蒙活動が何よりも大事であるという総括を彼らはしています。教育啓蒙活動が私たちのところに次々これから来るというふうに思います。大きなジレンマというものがそこに特に避難訓練をさせられるここにいらっしゃるかもしれない自治体職員の方なんかにはあるわけです。こんな訓練したって絶対人の命は助からないんですよ。例えば沖縄県民150万人なんですけど、そのうちの1万5000人ぐらい助かるかもしれないです。もしかしたら15万人ぐらい助かるかもしれないですよ。でも150万人です。助けるためには戦争を始めないことが何より大切なことです。
イスラエルのハマスからの攻撃によるあのイスラエル人の被害を見たらわかるものなんです。イスラエルは96%の迎撃率96%の防御率を誇って今までずっとやってきたわけです。核兵器を持っているんですあの国は。その96%のアイアンドームと言われるもう鉄壁の守りをくぐってあんな被害が起きているんですよ。日本は96%どころか60名限定の避難訓練を初めてやってみましたみたいなそんな国ですよ。これから毎月毎月全自治体で避難訓練をやっても、1億2千万人もいる国で、全国民どころか99%の国民は守れないわけですよね。それをやっている人たちもそれは分かっているんです。やっている町の自治体職員に研究者の人が「これどうですか、やってみて」と聞くと「いやー意味ないですね。」と、自治体職員が言うような状況です。何の役にも立たない。この状況について沖縄の辺野古の基地とか今の台湾有事に伴っての自衛隊の配備、増強の様子をずっと映画にとってきている映画監督の三上智恵さんという方はこんな風に言っています。かつての戦争中、第二次世界大戦の戦争中、国民というのは竹槍訓練をやらされたらしいと聞いている。竹槍訓練というのは私も見たことも聞いたこともなくて「はだしのゲン」で読んだぐらいですけど、銃後の子供たちや大人、女たちが小学校の運動場に集められて藁人形かなんか刺していたらしいじゃないですか。何の役にも立たなかった。本当に意味のなかった竹槍訓練だったわ。ということなんだけれど、一つだけ竹槍訓練が決定的に役に立ったことがあるよと、それは何なのか。「そのことで敵に対する憎しみをさらに増強させ、国に対して国が何をやろうともそれに対して従順になって従っていく。その国民を作るためにはものすごく役に立った。」と言うんです。あの時も隣組じゃないですけれども非国民と言われるような人たちを、何か物事を聞いたら警察に訴えて、特攻警察がはだしのゲンのお父さんの家とかに来るわけじゃないですか。今回も自治体を使って各自治会一人ずつ自治会長とか自治会長に声をかけてもらって。自治体が使われていくわけですけれども、その三上智恵さんが言うようにこの避難訓練って本当に竹槍訓練と一緒なんじゃないですか。何か意味があるんですか。でも三上さんは言います。そんなことやったって無駄でしょ。それより今必死に戦争をしない方法を考えるべきではないですかということを言っています。
今の状況で平和になる可能性というのはほとんどない。むしろ戦争に突き進んでいく方向なんじゃないかなと思います。すでに日本というのは世界第5位の軍事力を持っていると、去年の12月の段階でも評価をされていて今回軍事予算を2倍にすると世界で3番目、アメリカ中国に次いだ軍事大国になるんですけれども、それでも中国のたった4割にしかならないんです。なんで2倍にするのに何で4割にしかならないのか中国の。当然です。GDP比で中国はもうすでに日本で4倍出してるからです。もう中国の方がスーパー経済大国でそれに全くかなわない。4分の1にしかならない日本が1兆円どこから出すのか防衛予算結局増やせない。増税先送りになりましたけど、そんなこと言ってる間に中国はどんどんどんどん経済力高めてますからその差がどんどん開いていくの当たり前なんです。アメリカが助けてくれる、と思う人もいるかもしれないけれどもアメリカはウクライナに戦争のために兵士を送っていない。それは何でかというと、核兵器大国であり軍事大国であるロシアとの戦争に巻き込まれたくないからなんですよね。それは中国だって同じで本当に台湾有事になった時にアメリカがこちらに助けに来るとは限らない。どうしたらいいか。
<戦争を回避するためにはどうしたらよいか>
台湾有事を回避するための絶対命題としては、ただ軍事力を強化すれば相手を抑止できるわけではないというところを忘れてはいけない。ただ軍事力の強化で抑止できるんであれば、例えばこの前敵基地攻撃能力、敵基地攻撃をできることになったんだけれども、何ヶ月か前、北朝鮮からミサイルが発射されて北海道にその一部が着弾するかもしれないということがニュースとして流れました。その時Jアラートが適切に鳴らなかった、ということで内閣府が責められたりしていたんですけど、Jアラートがちゃんと鳴って着弾するかもしれないとなったら、敵基地攻撃能力も行使できるんだから、敵基地攻撃しなきゃいけないでしょ、発射される前に。発射される前に攻撃してたらどうなっていますか。北朝鮮と戦争になっていた。結果 J アラートが鳴るのが失敗して責められた内閣府は「ごめんなさい適切に鳴らせなくて」と、謝っていたんだけれども、北海道には何も着弾しなかったんですよね。むしろ適切に敵基地攻撃能力を使って、ミサイル飛ぶ前に攻撃していたら、着弾もしないミサイルのためにですよ、戦争始めているんですよ、日本は。ちょっとした誤解とかちょっとした一人二人の間違った判断によって、ものすごく高められた軍事力によって一瞬にして大戦争になっちゃうんですよ。軍事力を高めることで抑止力による戦争がなくなると思うのは大きな間違いです。抑止力を仮に機能させたいのであれば、ここは踏み込んじゃいけないよと、冷戦時代していたというその安心供与と言うんですけれども核兵器を使って攻め込んじゃいけないよと、そうしたらあんたこっちもやるからね、というようなことをお互い約束しあってレッドラインを明確にした上でそこを踏み越えないという、そういったことを細々とではあったものの外交のチャンネルでクリアにした上で、そして一定の平和が冷たい平和が保たれたということがあるわけで、それには外交が必要で、その安心供与というものがなされない限りどれだけ軍事力があっても平和にはならない。冷たい平和であってすら実現できないんです。そういう意味で今、台湾有事を避けるためには安心供与というものがアメリカと中国、そして日本と中国の間に決定的に必要である。それは何かというと中国が台湾を一つの中国であると主張している。台湾が中国の一部であると言っている、一つの中国政策というものについて必ずしも中国がそう言っているって事については、私たちは反対するものではなくて尊重しているよ、ということを繰り返し発言して、さらにそれを行動でも示していく。アメリカはそう言いつつ破っているわけですけれども、それを行動でも示すことが大事です。
「台湾の人たちの気持ちはどうなるんですか。」と、今のような話をすると言われるわけですけど、台湾の方々の今の世論調査の結果というのは100%中たったの7%の人たちだけが台湾の即時独立というのを支持していて、残りの93%は即時独立支持派じゃないんです。むしろ日本の政権の方が台湾の独立をあおりたてている、と言った方が良いと思います。
<どのような外交を進めるか>
どういう外交していくかということですけど、私が一番おすすめしているのは東南アジアの国々の政策でして、東南アジアやはり中国から南シナ海の領土を狙われている状況にあり、非常に中国に対する嫌悪感というのも強い。中国脅威論というのが日本以上に東南アジアの国々でははびこってはいます。とはいえ逆に中国があってこそ自分たちは経済発展を遂げてきて、発展途上国の地位からようやっと先進国に手が一瞬届くかなというような状態になっている国というのもあるわけですよね。中国との関係がない限り自分たちの国の経済ももたないんだということも、120%の確信で思っているわけです。シンガポールのリーシェンロン首相なんかが、アメリカの大変力のある雑誌、影響力のある雑誌に「どちらも選べないよ」と、いうことを掲載して、「どちらの側か選ばせてくれるなよ」と、「ドントメイクアスチューズ」としきりに言ってアメリカをけん制し続けています。私たちに選ぶことをさせるなよという意味です。
アメリカとイギリスとオーストラリアのオークス(AUKUS)という軍事同盟ができた時も、マレーシアインドネシア直ちに軍拡競争に反対するという懸念を表明しています。日本政府は同時にこの時には「ウエルカム」、この地域の不安な軍事要素を遮るためにとても良いものができたというコメントを発表している。米中対立の中でASEANはどういう態度をとるべきなのかということについて世論調査をしているんですけれども、米中いずれかを選ぶと言ってるのはたったの6%、あとの94%のASEANの専門家たち、政治家たちが、影響力のある人たちだけに取った世論調査で、ASEANの対応力と一体性を強化したり、第3極を目指したりして、どっちのサイドも取らないで自分たちは生き抜くんだ、ということを言っているんです。それを考えて日本は何をするべきかというと、非常にこのASEANの動き、こんな中小国の集まりではあるものの、非常に参考になる。日本の現実だって、中国からの商品がなかったら、届かなかったらどうなりますか。今日この部屋にある椅子だとか、私の使ってるコンピューターだとか、何一つ中国の部品だとかあるいは製品そのものも輸出輸入の関係がなければ、ここに存在しないものであるわけです。日本の貿易額の24%かな、中国との貿易になっているという意味では日本の現実だってドントメイクアスチューズなんだということを決して忘れてはならないというふうに思います。地域対立を緩和していくことこそそしてアメリカと中国との間の対立を緩和していくことこそが、日本の国益という言葉は好きではないけれども、国益が何かと言ったら、決定的な国益だと私は思います。対立の緩和をしていく必要がある。民主主義対権威主義のたたかいというふうにアメリカが定めた土俵の上で、アメリカの一番の急先鋒という形で民主主義の側につくんだということで、一生懸命日本自身が軍事力を拡大して、フィリピンに武器を提供して、自陣営をどれだけでも拡張してやるということで一生懸命になっているわけですよね。
<西側中心の国際秩序の終わり>
私たちは日々こういった日本政府の姿勢だとかあるいはニュースを見ていると西側からしか流れてこないニュースを見ると、私たちが世界の多数だっていう気持ちになっている。しかし振り返ってみるとどうでしょう。ウクライナ戦争についてだってロシアに対する経済制裁をやっている国が世界で何カ国あるのか。最近グローバルサウスという発展途上国の声というのが非常によく取り上げられるようになってきましたけども、大半がロシアに対する経済制裁なんかに参加していません。グローバルサウスはすでに国の数でも国民の数でもほぼ世界の3分の2になっています。私たちが民主主義・法の支配・人権というのは素晴らしいからこっちの陣営に当然みんな来るよねと思ってやって遂行している戦争でも、大半は中立の立場を明確にしていて振り返れば誰もついてきてない、西側諸国には。今回のウクライナ戦争の時点で大半がついてきてないんだということは分かっていたんですが、今回のイスラエルによるガザの侵攻でついに西側諸国を中心とした国際秩序というものの終焉が始まったんじゃないか。終わりの始まりなんじゃないかなと思っています。
今申し上げたように西側諸国、アメリカを筆頭として法の支配、民主主義、人権のためにこちら側につけ、ということの踏み絵をずっと私たちは発展途上国等々に踏ませてきたわけなんですけれども、今のイスラエルの攻撃どうですか。アメリカはイスラエルの側に断固として立つということを表明していますけれども、多くの国々はそれを見て言っています。ヨルダンのラーニア王妃は「イスラエルによるガザ砲撃での民間人の死を非難しない西側指導者は明らかな二重基準である。」と言った。明らかな戦争犯罪をしているイスラエルを断固として支持すると言っているわけだから、どこに法の支配があるんですかっていうことですよ。ウクライナの場合はロシアの侵略であることは間違いないので、ウクライナの側につくってことはわかるし、国連決議でも主権侵略という意味ではみんな賛成をしました。国連決議に。でも今となってはあれも嘘だったんじゃないか、ただ自分の都合の良い時に人権とか民主主義とかを振りかざしているだけではないのか、と世界中の国々がそう見ています。そういう意味でもちろん民主主義は法の支配や人権というものはとっても大事なんだけれども、そんなものを二重基準で振りかざしたところで、武力で押し付けようとしたって、世界にそんなもの広がっていかない。もしそれを広めたいのであれば自分の国の中でちゃんと人権状況をよくし、民主主義は素晴らしいものだということを示して、それが他の国に伝わっていくようなことをしなければ他の国に一切そんなものは広がらないわけです。
<日本がとるべき外交>
今日のまとめとしては今もう日本のいる西側陣営、西洋側陣営っていうのは必ずしも世界に多数派でもなければ世界をリードしている存在でもなくなり始めているということです。日本自身も中国とのアメリカ中国とアメリカの対立においてアメリカを絶対取る、なんてふりをして言っていますけど、絶対どっちも取れない。ドントメイクアスチューズであることは変わりがないわけですよね。しかも軍事力を強くすれば何か中国に勝てるんじゃないかみたいなふりして増やしてますけど、中国にはもう4倍の差をつけられてるということからすると、ちゃんと自分がミドルパワー、超大国ではないミドルパワーであるということを認識した上で、絶対にこの地域で中国とアメリカには戦争させないということを、他の中小国と一緒になって声を上げていく。それが何よりも重要であろうと思います。アメリカの仲間であるとして日本政府はイスラエルに寄った政策というものを取っているんではあるんですけれども、国連決議も休戦を求める決議で棄権をしましたが、実は長らく日本というのは中東における中立外交というものを標榜してきた。パレスチナに沢山の援助をし、そしてたくさん石油を、9割方の石油を中東から買っていますからイランとも仲良くする。中東の一番のアメリカの敵はイランですからそのイランとも対話ができる国ということを「誇りに」思ってきている。中東における中立外交をずっと誇りに思うんであれば、今こそガザの危機の停戦に向けて仲介をするべきであると私は思います。これは当然パレスチナの人々の命を救うためにすることでありますが、昨日かな、北海道新聞に寄稿して書きました。「命を守るために何よりも早く停戦を推進してほしいと思いますけれども、日本政府はあまりパレスチナの人たちの命一つ一つには関心がない。もっと彼らに関心があるのはアメリカを中心とした国際秩序の維持なんですよ。アメリカを中心とした国際秩序の維持にものすごく長いこと関心を払い、それを維持するために軍拡をし、フィリピン等に武器を提供してきているわけですけど、ほっといたらどうなりますか。このグローバルサウス、西側を中心として国際秩序に対して今反旗を翻し始めてますよ。この戦争が長引いてパレスチナの人たちの命がもっともっと失われていけば、この二重基準に対する世界の国々の声というのはもっと強まって批判的になっていきます。あなたが大事にしたい、パレスチナの人たちの命よりも、もしかしたら大事にしたいと思っている西側が中心となる国際秩序というものを維持したいのであれば、そういう場合であってもこの中東における中立外交をちゃんと使ってこの紛争を終わらせない限り、この西側の地位というのはガラガラと転落していきますよ。」ということをいやみたらしく書いたんです。まず、すぐガザにおける戦争の停止のために動かなくてはいけない。そしてもしかするとこの地域でも紛争が起きるかもしれないというふうにまことしやかに言われていますけれども、この地域での戦争を避けるために私たちはほかの地域の「ドントメイクアスチューズ」と叫んでいる小さい国、中くらいのサイズの国と一緒になって、米中対立の緩和を呼びかけるということをしていかなくてはいけないと思います。
ご清聴いただきましてありがとうございました。
<質問に答えて>
1つ目は軍事力に関することでたくさんご質問いただいていて、例えば「中国が攻めてきたらどうする、との疑問にどのように答えるといいでしょうか。」とか、「軍事費を増やすことで、日本を守れるとは大臣はじめ官僚も思っていないと思います。軍事産業とアメリカの圧力ではないでしょうか」とか、それから「外交の力をどこまで信頼し期待して良いのか、100%信頼できるなら国民保護の必要性もなくなるが、100%の信頼ができないと思うので、外交に力を入れつつ一方で国民保護にも力を入れるべきではないか」。また「武力なき発言にどこまで影響力があるのか。国民を守るという自衛の力をつけつつ外交で発言するべきではないのか。」という感じの、私が最初にこういう質問を受けると思いますけれども、こんなふうに答えたらいいですよ、ということについての引き続きのご質問をいただいているかなと思うので、軍事力というものについてどういうふうに説明をしていくべきなのか、もう一度振り返ってお話しします。
日本にはたくさん平和運動のスタイルがあって、今残念ながらあちこちでどんどん高齢化が進んで規模も縮小はされてしまっているものの、今でもいろんな立場があると思います。「自衛隊はあることはいいけれども、でも自営の範囲に限りましょう。専守防衛で行きましょう。」という立場でやってる方もいらっしゃると思いますし、それから「自衛隊があることも軍隊と実態は同じなので9条に反してその自衛隊自体も賛成ではない。反対である。」という方もいらっしゃると思いますし、それから「日本の軍隊は最低限持つべきだけれども米軍と一緒になってやるっていうのはよくないじゃないか。日米安保条約は破棄した方がいいんじゃないか。」という考え方もあれば「アメリカと一緒に手を組んでいろいろやること自体はいいけれども、それは日本の安全を守る範囲での日米安保条約であるべきで、それ以外の国に日本の軍隊が行くべきではない。」という考え方もあったりしてどれもこれも本当にこうすごく深く考えられたいろんな考え方だというふうに思うし、全ての平和運動についてどんどん拡大していってほしい。どの立場も自分自身がこれはやらない方がいいけどこれをやった方がいいとかっていうことは全然思ってないです。私が唯一自慢して言えることはこの1年間、もうありとあらゆる平和運動に呼んでいただいて、全国各地で講演だけはさせて頂いてるので日本全国の平和運動がどうなってるかということだけは誰よりも知ってるつもりなんです。それはもうどこに行っても、北海道に行っても沖縄に行っても、会場に行けば、今日なんて最も若い講演のうちの一つですよ。講演の参加者は基本的には全員70代以上です。60代の人がいると参加者が若いなって思うぐらいで、下手すると平均年齢が75以上とかということもあるぐらいですよ。横浜・東京はまず若い方で、地方に行けばもっともっと年が上がります。平和運動1個1個についてですね、昔だったら安保廃棄の闘争の人と、自衛隊はあってもいいけれども専守防衛にという立場の人とは仲良くやらないみたいな時代があったんだと思うんですけど、もうそんなこと言ってる時代じゃないんですよ。はっきり言って。あと20年経ったらですね、平和運動は多分なくなります。何でかと言うと、そうやって今申し上げたように私の講演をあちこちでこの1年間何10箇所も呼んでいただいて行ったけれど、ほとんど70代以上だからで、70代の方の運動はとても今活発かもしれないけど、100歳になってもその方々は活発かもしれないけど、20年経てばそうじゃないかもしれない。そういうことからすると細かい違いについて争ってる時代でも絶対にない、というのは私のこの1年を終えての確信なんです。そうなった時にそれぞれの立場でそれぞれのご意見でやっていただくのがいいので、別にどれを押し付けるって事を私自身は全然する気はないです。けれども私自身が今どういうところに一生懸命になっているかということを、それが一番いいと思ってやってるかというより、作戦上どういうことでやってるかということだけをご説明すると、一つには、自衛隊を今ただちになくすというのは現実的ではないと思っています。「日米安保を今直ちに破棄をした方がいいんじゃないですか」という質問も講演では3回やれば1回ぐらい必ず出る質問なんですが、私自身は自分の主戦場をワシントンというふうに決めていて、アメリカの政治家たち、アメリカの役人たちに対して今の状況を避けるために動いてほしいというふうに思っていて、そこで「日米安保を直ちに破棄しましょう」と言ったが最後、その瞬間にその面談は直ちに終わります。なのでそういうことを言っても、そのせっかくそういう機会、数少ない限られた機会の中で「台湾有事を起こさないでほしい。」とか「沖縄の辺野古の基地を作らないでくれ。」とか言う機会に恵まれてるものを、はなからそれを無駄にするようなことにはしたくないので、そういう意味では日米安保ということも自分のメインのテーマには据えていません。何を言うかというと、今残念ながらではあるものの軍隊というものが存在をして、この地域が中国も軍事力を持っている。北朝鮮も軍事力を持っている。日本も持っていてアメリカもそこにいて持っている。という中で何を今、その軍事力の中でも避けていかなくてはいけないかというと、「日本は今あるものをさらに超えてまで軍事力をつけようとしているわけだけれども、それが適切なのか。」とか、「アメリカと中国の間で対立を避けるために何をするべきかという時に、それは軍事力の拡大ではなくて外交でしょう。」という言い方をするんです。「外交が100%全ての物事を解決するから軍事力というものをゼロにしていきましょう。」という言い方もしませんし、「今ある日本にある米軍基地に直ちに全部去ってください。」とまあいつの日かなくなることを心から願ってますけれども、別にそういう言い方もせずに、基地の話をする時には「辺野古に基地を作るな」ということだけに絞ってしか話はしません。そこで嘉手納の話だとかをし始めたら、辺野古を止めることすらできていないのに嘉手納をなくすことなど絶対にできないので、辺野古を止めることに終始しますし、非常に戦略的にしか動いていないので、そういう意味では聞いていらっしゃる方には、さっき申し上げたようないろんなパターンの平和運動を今までされてきたり、いろんなことを思っていらっしゃる方が当然ここにもいらっしゃると思うので、その細かいところになると意見の不一致というのは当然あると思うんです。では自分の素直な本音を全部言いなさいと言った時に、必ずしもその意見と違うのかと言うと、多分違わない部分もたくさんあるとは思うんです。けれどもただワシントンにロビーイング活動ができる日本人の中で、多分あと1人他にいるのを聞いたこともないようなことをやらせていただいてる立場としてはですね、自分としてはやっぱりアメリカと中国の対立を避け、沖縄の人たちを苦しみというものをこれ以上増やすことはなく、できる限り具体的に減らしていくという観点からすると、今申し上げたような立場で話をするというのが一番現実的かなというか、戦略的な選択をしているつもりです。
アメリカの軍事産業の圧力で日本が買わされているという側面はあると思うので、それはもちろん話の中で織り込んでいくこともありますし、直ちに軍事力を外交100%で信頼できないから国民保護が必要なんじゃないですか、という話についてはもちろん100%外交力で全ての解決ができるとは思ってはいないけれど、じゃあ逆に100%軍事力でなんとかなるのかというと、そんなことは絶対にありえないわけで、そこは軍事力で何ともならない部分というのを、いま日本政府はほとんど外交をまともにやっていないわけですけれども、ちゃんとやりなさいということを言っていくんですよ、と話して、それが税金の使い方として正しいか正しくないかという時に、そんな60人しか限定でやらない、しかも誰にも告知しないですっと秘密裏に始めるような練馬区の避難訓練みたいなものが、何かの役に立つとは全く思えないので、そういう意味ではそこの批判をしていくという形になっています。
沖縄県の外交の話をご説明しようとして時間がなかったんですが、神奈川県についても「故長洲知事が民際外交を提唱し教育文化と幅広い分野の県民レベルの交流・協力を推進し平和に取り組む土壌を育んできました。国内外でそうした優れた自治体外交を展開している事例をご存知でしょうか。」という質問をいただいています。ありがとうございます。
沖縄県は非常に、最初に被害に遭う場所であるという自覚がものすごく強いので危機感がすごくあります。それで例えばですねこの辺野古の基地の問題に関して言えば、辺野古に基地を作らないでくれということを一生懸命日本政府に言ってきたわけです。けれども日本政府は全くそれを意に介さず、むしろ基地を推進する方向での政治しかしてこなかった。ということで、今ワシントンに沖縄県の事務所というのを県庁の出先機関を作ってですね、そこで一生懸命、辺野古の基地をつくらないでくれとか、PFASという化学物質をばらまくのをやめてくれ、という交渉をしています。実はこの事務所も亡くなられた翁長元知事が、元々那覇市長だったの方が県知事に立候補されたんですけれども、市長の時代に私の方で、「知事に立候補されるって聞いたけれども今ワシントンには沖縄の声というのは全く届いていないから、もし知事に当選されたらワシントン事務所を作った方がいいですよ。」ということを提言させていただいてですね、それで作っていただいたものなんですけれども、独自の外交というものにすごく力を入れてワシントンで頑張っています。それだけでなく、最近その台湾有事が可能性として呟かれるようになってきていて、それについての対策をするために沖縄県は県庁の中に地域外交室っていう部署を作ってですね、近隣諸国との外交を沖縄県自らとしてやりましょう、ということを進めています。中国にデニーさんが行きましたよ、という話は聞いておられるかもしれませんけれども、中国にとどまらず東南アジアの国々ですとか、太平洋の島々に知事なり県の役人の方々が行かれて、関係を構築して平和を作っていこう、という活動を率先してやっています。沖縄県議会では、日本政府に対して「再び沖縄を戦場にしないための外交を推進せよ」という決議を通してですね、それを日本政府に突きつけたりということもしています。もちろん残念ながら47都道府県のうちの1自治体に過ぎないので、できることとしては限られてはいるものの、一つの自治体が県知事筆頭に、そういった外交を進めてるということ自体は、他の自治体に対するも素晴らしいモデルにもなります。神奈川の一般の方はとても頑張ってると思うんですけど、もっと神奈川県とか横浜市とかにも頑張っていただいて「モデルがいいのがあるじゃないか。こういうことでやれよ」と。いくら軍事力が大事だという人でも戦争が起きないで外交が大事ということに反対できる人はほとんどいないんですよ。軍事力さえ強くすれば平和はついてくると言っているギャラガーのような人を除いてほとんどの日本国民は、自民党の政治家も含めて外交やらなくていいっていう政治家は多分いないんですね。やはり外交も大事だよねと誰もが言う。じゃあ 実際やりなさいよ。いいモデルを玉城デニー知事や沖縄県の取り組みを紹介しながら進めていくことが、重要なんじゃないかなと思います。
何人かの方から「若者の政治への関心がなさすぎます。どうしたらいいのでしょうか。」とかですねこう「市民の運動を広げるためにどういうことをやったらいいんでしょうか。」というような質問をいただいているのでそれを最後にまとめとしてお話をして私の今日の講演をおしまいにさせていただこうと思います。先ほど申し上げたように、若い方々は私の講演をやっても一般の市民の活動の場合は、ほとんど来てくれないですね。ただ私の場合は、大学に講演で呼んでいただいたりする機会があるので最近若い方に話す機会ということがないわけではなくて、それはそれで一定あるのですけれども、今日は自治体学校なので、特に平和のことだけの会ではないと思うんですが、9条の会青梅、福生、羽村、中野、どこでやっても9条の会の東京どこに行っても基本70代以上なんですね。これは台湾有事の話をしたら、私が関係する東京の某有名大学の学生たちが「有事って人の名前ですか」と聞くぐらいのご時世なので、その時に「君たちダメだね」とバカにして「関心がないんだね」とつっぱねたって、彼らは小学校からその年齢になるまでそういう教育を受けさせられて、そういう情報しか与えられてこなかったので責めてもしょうがないですよね。なんでそこはもう覚悟を決めてこういう世の中なんだと思った中で、自分たちが、何ができるのかということに考えを変えていくしかないんです。去年の11月の、安保3文書の前ぐらいから講演を続けて、講演の嵐みたいなものがずっと続いているんですけど、最初はただただこれはいけないんだよ、とか外交が大事とか話したんです。でもこの話してもここに来てる人は全員、今日もそうだと思うんですけど、この話みんな知っているんです。別にいらないんですこの話。それよりもどうやってここに来ない人たちに対して、こういう問題意識を持ってもらい、次の集会に一人でも多く、こういうところに来てもらうのかとか、来なくてもじゃあ1票を適切な場所に投じるような行動になるのかとかということを、ここではない、この部屋の外の主戦場でどうやって伝えるかということに話を変えましょう。ということで11月話して、12月話して、1月ぐらいになってですね、これ無駄だと。私は全国にめっちゃ呼ばれてるけど、私が話しても意味ない。みんな私が何を話すか知ってる人だけしか来ないわ、というふうに思ってですね、ちょっと変えたんですね。どんな取り組みをしてますか、今まで若い方に響いた取り組みがあったら紹介してください、ということを聞いて、いい取り組みがあれば、幸いなことに私はまた来週もここに行くからここでその話を伝えてそこでもやってもらえますから、みたいな作戦会議に結構スタイルを、講演のスタイルを変え始めたんです。例えば沼津で聞いた面白い話では、沼津のある平和団体がカンパを一生懸命集めて、30万ぐらい頑張って集めて、市内か静岡県内だかの作文コンクールでですね、核兵器についての作文を自分が廃絶に向けての思いをどう思ってるか、どうしたら減っていくだろうと思うか、というような作文コンクールをやってるんですって。それを全校かどうかわからないけど、いくつかの高校で全部配って、一番いいと思った作文を書いた人に対して、その30万を使って例えばニューヨークでやっているNPTという核非拡散の会議の市民団体運動に一緒に行ってもらうとか、ジュネーブの会議に行ってもらうとか、広島、長崎に行ってもらうとか、そういう活動をするようにする、ずっと続いているプロジェクトが沼津ではあるんですって。それをやるとまず一つに、高校生何校の高校があるかわかんないですけど、例えば何千人かにですね、そういうことをやっているって事が当たるのでパッとみんな見ては、核兵器っての廃絶ということを頑張ってる人がいるんだなということを3000人なり7000人か知りませんけどチラシを見ますよね。応募しようと思う人は多分その中で応募を一瞬考えるのが1000人ぐらいいる。「何だっけな、核兵器って」と高校生が考える。でも実際に「調査とか、本とかを読んだり、被爆者の話を聞いたりして、作文書いてみよう、だってジュネーブ行ってみたいし。」と思う人はそのうちの300人ぐらいかもしれないけど、300人ぐらいが着手するじゃないですか。最後名まで書き上げる人は70人とかいる。でもその前に7000人とかは読んでいる。そのチラシを。最後に当選した人っていうのは、そのあとニューヨークとか行く機会が、広島長崎行く機会があって、そういう活動してる他の大人とかにも会ってですね、一応人生を、多分よっぽど間違いがない限り、それなりに核兵器の問題に費やすことになるのです。その人は。一人だけじゃなくて後ろに7000人くらいはチラシを見て核兵器廃絶の話を知る。その家族とか友達だとかも「この子なんかジュネーブに行くらしい」みたいなそんな話を聞いて、知れるわけですよね。こういうことをやっていますみたいな沼津の話があって、それを札幌で話したらそれいいね、沼津。その話を札幌で翌週かなんかの機会に話したら札幌の人はこうやってます。映画祭を学生がやっていて、その映画祭のお金がないと言うんで、そのお金集めを高校生たちが一生懸命頑張って、お医者さんたちの集まりでお金を出しやすいので、その集まりで寄付してですね、ずっと運営を手伝ってきてますみたいな話があったりとかですね、まあそんないろんな取り組みがあって、それを全国に広げて、またあの神奈川の皆さん頑張っておられると思うんですけれど、こういったアイデアがもし何かの役に立つんであればまたやっていただきたいと思います。私がこの頃ずっと繰り返しお伝えをしているのはですね、何をしたらいいかわかりませんという人に対しては次のように言っている。本屋さんかアマゾンで「はだしのゲン」を1巻から全巻買う。まず1回買う。全部。それをお孫さんの机の上に置く。それだけでいいと。7000円ぐらいかかるかもしれないけど7000はもう出費と思って頑張って出してそれをお孫さんの机に置く。一カ月待ってごらんなさい。必ず読み終えます。子どもたち漫画は大好きですから。もう私の子供が読んでですね。うちは2人の子供がいて、当時は年少と2年生ぐらいだったんですけど、もう2人で広島弁喋ってましたね。夢中になりすぎて。子供って不思議なもんでね、漫画読むだけで広島弁を喋れるようになるって言うのを、初めて知りましたけど、もう本当に子供たちはもう何度も何度も、もう引き離すまで読んでますよね、漫画だから。その漫画、最初の番号のものを読み終わったら、次のを机の上に置けばいい。自分の血縁の30代以下全ての人の机の上に3年ぐらいかけて置いてください。それは若い方がいいですよ。よくお母さんではだしのゲンは怖くて私も読めないんです、とか言ってますけど、うちも年少から読んでますから絶対大丈夫。もうそれが怖いと思ったらあんた読まなくていいから机に置くだけでいいから置く。1回読めば絶対に核兵器ってのは無くさなきゃいけないっていう風に思うし、過去に朝鮮の人たちに何をしてきたかとか、天皇制とはどういう意味であるか、そういうものはめちゃくちゃに間違った方向に進むことにはならないと私は思います。なので一番簡単なのは「はだしのゲン」を全部買って机の上に置く。それだけでいいと思うと楽でしょ。何しなきゃいけないのにどうしよう、若者が今日も全然いないよって思う。明日会をやったって、高校生が100人来るようなことはない。それよりも一人、誰かを確実にそういう思いを持つ人にしていくということに力を入れていくべきなのかなという風に思ってやっています。
私のこの「新外交イニシアチブ」という団体はとっても若者に人気でして、いつもボランティアとかインターンの希望が高校生大学生から溢れるように来て、対応が難しいぐらいになっています。多分皆様は慣れ親しんだ平和団体のチラシとちょっと違ってですね、これ一見して味方か敵だかわからないですよね。敵かも、なんか軍事力推進しているあっち側の団体かもって思うような感じになっているじゃないですか。これも全て作戦で、見てくれを良くしなきゃいけないっていうことはアメリカで学んだんですけども、アメリカのワシントンの強大なシンクタンクでやっているようなクオリティで物事やらないと、人というのは関心を持ってくれないというモットーに基づいてやっているんですが、その結果ですね大量の大学生や高校生が日々日々ボランティアに申し込んでくれているという形で私としてはですね、今の新しいスタイルの平和運動だと思ってやっています。新しく入った新入社員もですね、沖縄社員というか新入スタッフもフルタイムで働いている方はですね、23歳の縄出身の沖縄の基地を何とかしたいと思っている若者がわざわざ引っ越して東京で就職もしてくれたりもしています。もしよかったら、その若者たちの平和運動を支えると思って、めちゃくちゃな薄給で頑張ってくれているので、入会していただいたり、ご寄府、ご支援をいただければとても助かるかなと思います。
これで私の話をおしまいにしたいと思います。長い時間お付き合いいただきましてありがとうございました。
」
特別報告
記念講演の後、横浜市従業員労働組合執行委員の高井一聴(もとあき)氏と在日本朝鮮留学生同盟神奈川県本部副委員長の兪在浩(ゆじぇほ)氏による特別報告が「足元から始める国際連帯」をテーマにして行われました。
高井:
「皆さんこんにちは。横浜市従業員労組の高井と申します。隣にいるのは兪在浩(ゆじぇほ)さん。後で自己紹介してもらいます。武力で平和を作れないということについては、ここにいる皆さんはおおよそ同意をするというかそういうことなんだろうと考える皆さんだと承知をしております。外交の重要性について、先ほど猿田先生がおっしゃっておりました。しかし事務局から与えられたお題は、実は外交が大事だとか武力は良くないね、とかそういう話をしてほしいということではなくて、私たちのようなエリートでもテクノクラートでもない、それは民間外交も含めてですけれども外交の表舞台に登場することがないような労働者が、市民が果たして平和のために何ができるのかということを考えて、突き詰めて、そして報告をしてくれないかと、こういうお題なんですね。私は足元から始める国際連帯というのが、これが答えだと思っていますが、実はこの答えも、私が考えたものではありませんでして、これはあの事務局から「タイトルもこういうことでお願いします。」と言われました。もうしゃべる答えも用意されてしゃべるという、そういうことであります。困りました。米国という国が派遣主義国のようにして世界で戦争をばらまいていくという意思を固く持っていてそして金儲けをしていくんだと思っていて、人々の命をいくつうばっても金さえあればそれでいいんだと思ってかたくなな態度で戦争をばらまいている。そこでじゃあ私たち何ができるのかっていうことなんですけれども、できることはせいぜいそういう労働者の戦争ではない、市民の戦争ではない、戦争に動員をされない、ということぐらいだろうということなんですね。その動員をされないということのためにまあ何をしていったらいいんだろうということを話してください。ということなんですよ。
横浜市従業員の労働組合は少し前振りが長くなるんですが、いくつか綱領の中に運動の基本的な考え方というか、方向性を示していま。す1つは地方自治の擁護であります。もう1つが平和と国際連帯の問題です。日本の完全独立とか世界の恒久平和ということを国際連帯の問題としてやるということを掲げています。皆さんも労働組合の経験がおありだと思いまして、御大を前になんで私がこういう話をしなきゃいけないんだろうという思いもあるんですが、1886年にシカゴで8時間労働制を要求する労働者のゼネラルストライキがありました。
労働組合のリーダーたちがそこで弾圧をされてそして平和と実験ヘイマーケット事件ということでですね、労働組合鎮圧されるわけですけれども、しかし1889年米国の労働者は諦めませんでしたよね。もう1回8時間労働制に挑戦をしようと、資本と戦おうと決めて、そしてゼネストに挑戦を挑みます。1889年というのは第2インターが結成をされた年でありまして、この米国の労働運動を、応援しようという連帯の火が世界中に広がってメーデーとなりました。このことはよく知られていますが、第2インターの崩壊の過程については、よく知られていない。1914年に第2インターは分裂し、崩壊していく。第一次世界大戦が始まる前に、その戦争の前夜、自国の平和を考える各国の労働者の舞台は、自らの国の戦時国債の起債に反対をすることができなかった。隣の国や隣の国の労働者と手を携えることで資本の戦争に巻き込まれない、銃を私たちは取らない私たちは手と手を手を携えることで、これは俺たちの戦争じゃないお前たちの戦争なんだろうと、戦争を巡る境界線は国境にあるのではなくて、資本と労働者の間にあるんだと認識をすることができなかったがために崩壊をしていきました。私たちはこの歴史を繰り返してはいけないし、この歴史から学んで戦争を止めなければならない、ということで足元から始める国際連帯が大事なんだろうということなんですね。地方自治擁護という話を先ほどしたんですが、レジュメに「地方自治問題としての在日朝鮮人差別」と書いてあります。横浜市従労働組合は地方自治の擁護ということを掲げているので、組合員から地方自治をめぐる問題だとか広く社会運動に関する問題、職場課題だけじゃなくて、機関紙ですねニュースの中で取り上げてほしいという要望がよく届いたりします。そういう中であの実は私も本当に無知で、全然長く知らなかったんですが、地方自治体が在日朝鮮人を差別をするな、ヘイトはいけないよね、多文化共生だよねと表向きは言うんだけれども、でも実は実際やってること全然違うよねっていうことがあるっていうことを知りました。そういう中で実は兪さんと出会うことにもなったということです。その在日朝鮮人運動のこれまでの経過だとか、その神奈川県において起きていることだとかそういうことを少し紹介していただけますか。」
兪在浩(ゆじぇほ):
「朝鮮留学生同盟神奈川県本部で副委員長している兪在浩(ゆじぇほ)と申します。本日はよろしくお願いいたします。まず簡単な私自身の自己紹介をしたいと思うんです。私自身はずっと日本の学校に通っていまして、大学時代にこの大日本朝鮮留学生同盟通称名で留学同と言うんですけども、留学同の活動に参加して自分自身の民族だったりとか歴史、仲間と出会って、自分の民族性に気づいて今のこの専従活動家として今のポジションにいます。この留学生同盟というのは、植民地からこの日本に朝鮮半島から日本に渡ってきた留学生たちが連帯してその中で築き上げたグループで、その中から1945年まあ朝鮮の側で言うと解放後の9月14日早々に結成された組織になります。日本にあくまでもこの留学しに来ていると僕たちは認識していて、世代が変わって2世、3世、今は4世、5世と出てきている中でこの留学っていう部分はなんぞやっていう部分はあると思うんですけど、あくまでも自分たちの故郷は朝鮮半島にあって、私自身は朝鮮民主主義人民共和国の海外公民としての立場として今こうやって日本社会に暮らしてます。与えられたテーマに入っていきたいと思うんですけども、地方自治問題としての在日朝鮮人差別。いろいろある中で今回は「補助金の不支給問題」というところに焦点を絞って話していきたいと思うんです。そもそもこの神奈川県下に朝鮮学校っていう存在を知ってる人っていう方がどれくらいいらっしゃるのかっていうのは定かではないんですけども、実は横浜に神奈川朝鮮中高級学校っていう学校があり、その横に横浜初級学校、川崎にも溝の口に南部朝鮮初級学校っていうところに点在しております。
この支給問題はまあ何かと言うと簡単に言いますと1970年代に朝鮮学校へのこの各種学校へ 認可される取り組みがその当時なされていて、1978年から朝鮮学校に補助金支給が開始されます。在日朝鮮人だけでなく、市民の方々と手を取り合ってそこの問題解決に向けて動いてきました。その後2010年高校無償化除外ということが適用されてしまって、ただ補助金っていうものが打ち切られたわけではないです。しかし、2013年からこの補助金の削減というものが始まって、2016年からもう完全に補助金が停止してしまって、この学費、朝鮮学校におけるこの運営の補助金っていうのがままならない状態になってます。じゃあなんでこの補助金が大切かということもそうですし、この朝鮮学校が今このように私が言ってるのかと言うと、朝鮮学校の問題というのは、日本の植民地支配、日本帝国主義による植民地支配下のまさに負の遺産として成り立ってしまっているからだと私は思っています。本来はこの加害国である日本政府がそこの在日朝鮮人への植民地支配への戦後補償に対して、向き合うことというのを下げてきた結果、今このような補助金不支給問題に繋がってると私は考えています。ただこの問題を皆さん方に私は問いたいなって思っているのは、この日本の植民地支配の過去清算のことについて、各々がこのどう感じるかということと、これからのこの日本社会、明るい社会に向けた第一歩の取り組みなのではないかと思っています。まさにこの「足元から始める国際連帯」というのは、実はこのように近い存在としてあるというところを認識すべきなのかなと私は思ってます。お願いをしているつもりではなくて、あくまでも同じ立場として、同じこの神奈川県に住んでいる身として一緒に連帯すべきではないかと思ってます。」
高井:
「ありがとうございます。少し話をしていただきました。
連帯をすべき課題だと思うわけなんですけれども、どのぐらい連帯ができてきたかなって、いうことも一方で思っています。なかなか自治体問題でありながら自治体学校の中でもそんなに語られてこなかったテーマなんじゃないかなと、在日朝鮮人の教育権だとか民族の教育権、民族の自決権と思っています。朝鮮学校の生徒が県庁の前で抗議行動行っているときに、参加している日本人はいるんですけれども、ほとんどがやっぱり教育労働者と教育労働者のOBなんですね。教育の問題だと切り詰めてしまっているんですね。自治体政策の問題なのに。そういうことを思ったりしています。
それでまあということでちょっと期待することに一気に行きますか。」
兪在浩(ゆじぇほ):
えっと当初しゃべろうとしたことがあと2つほどあるんですが、今後の課題として来年この自治体学校の全国学校が神奈川であるとお聞きしました。今回このように取り上げていただいたご縁もあることなので是非ともこの来年、在日朝鮮人との国際連帯をはじめ、その課題にどう向き合っていくかという内容を、ぜひぜひこの来年の全国学校のところで入れていただければ、すごいいい学びになるんじゃないかって思います。ぜひよろしくお願いいたします。
高井:
「近くにいる存在としての在日朝鮮人。特にですね、朝鮮民主主義人民共和国を祖国だと考えて、その在外公民だと自身のことをアイデンティファイしている隣人と私たちがどう向き合って地域で暮らすのかっていうことは、平和を考える上で一番大きい問題なんだろうと思っています。先ほど猿田先生もおっしゃっていたけど朝鮮民主主義人民共和国というのは僕たちからすると近くにですよ、在外公民だとアイデンティファイしている在浩(じぇほ)さんがいるけれども一番遠いですよね。国交も正常化してないし、まあはっきり言って何考えてるかもよくわからないし、と私たちは思っていますよね。そして朝鮮民主主義人民共和国っていう国があることもまあ認めてない。だから北朝鮮だって、朝鮮半島の北部だと呼んで、そしてそこからなんかミサイル飛んでくるみたいなことではないか。平和との結びつきではこの問題が、僕は大事な問題だろうなと思っています。在日朝鮮人の問題、植民地支配の問題、在日朝鮮人に対する戦後保証の問題、戦後賠償の問題もありますし、それから今進行中のパレスチナのことを考えるうえでもすごく重要ですよね。暴力の連鎖だとか両者の衝突ということだけではですねやっぱり見えてこない。問題は占領と被占領の問題というのもあると思うんですね。
この問題は深く考えてこなかったことがやっぱりこうああいう形で暴力は爆発するまでいくんじゃないかなと思っています。米国にくっついていればなんかそれでこうどうにかなるっていうような世界の秩序というのはもうとうに終わっているわけじゃないですか。猿田先生はその決定的な分かれ目として、それがまさに今のこのイスラエル・パレスチナの問題ということをおっしゃいましたけれども、古いところで言えば朝鮮戦争だってそうですよ。米国帝国主義は朝鮮半島にあれだけの数の火薬を落として、でも朝鮮民主主義人民共和国を滅ぼしはできなかったですよね。戦争に負けたわけですよ、ある意味では。あの帝国主義がですよ。あの帝国主義が民族自決権のために戦うと言った人たちに追い出されたわけですよね。よくベトナム戦争の話から起点を取る人もいると思います。あるいは最近だとイラクのことだとかアフガンとかを起点に取る人もいると思います。でも戦後世界は一貫して米国の帝国主義に対して帝国主義は自由に振る舞えるんだっていうことを否定してきた歴史の積み重ねだと私は思っています。そして米国の同盟国として日米同盟のもとにいれば安全でそれで私たちは平和で幸せだというようなことではないと思います。今日幸せだったとしても繰り返しになりますが、まああるところでは爆弾が落ちている。でそのことに反対もしない。このことが果たして幸せなのか。場内の平和だけ、自国の平和だけ、自国が戦争に巻き込まれないことだけ、このことだけを考えているのが平和なのか思います。これがあの足元から始める国際連帯ということで、私が考えた話ではなくて事務局から与えられた答えですので、一応再度念を押しておきたいと思います。国際社会というと私たちは西側のことを思ったりとかですね、グローバル化のことを思ったりするんですけれども、一応労働組合とですねあの在浩(じぇほ)さんと僕たちにお鉢が回ってきたのはグローバル化の話ではなくてインターナショナルな話ということで締めくくってくださいということだと思います。
じゃあ最後に在浩(じぇほ)さんよろしくお願いします。」
兪:
「もうだいたい高井さんが言っていただいたと思うんですけど、僕自身の考えを少し述べていきたいなと思うんです。連帯ということでどういう未来を創造するかというところを考えた時に、圧倒的にこの土台となるのが歴史の部分で、もっと言えば植民地支配の歴史、帝国主義の歴史っていう部分のスポットで考えていかなくちゃいけないのかなって思います。日本もこのアメリカに従属したような形で国が進んでいる中でいかにアメリカから独立して歩んでいけるか、地域社会の中で在日朝鮮人はじめ外国人とも、共に手を取り合っていい社会を作っていくっていう面で見たときに、歴史の理解という部分の土台がないと、やっぱりスタートラインにも立てないと思うので、今回このような場面でお話できたのはすごい僕自身もきっかけですし、僕も何か少しでも気づきを与えられるような時間になったら、すごい幸いだと思うのでこのような機会を設けてもらって非常にありがたいと思います。」
以上で全体会が終了し、午後は6会場で分科会が行われました。
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