憲法70年力を合わせて人権をまもる自治体を
第44回神奈川自治体学校、午前・午後合わせて300人超の参加者
11月13日、かながわ労働プラザで第44回神奈川自治体学校が開催されました。今年の自治体学校のテーマは「憲法70年力を合わせて人権をまもる自治体を〜ストップ“一億総貧困化”〜」。
安倍政権がすすめる「一億総活躍社会」の掛け声とは裏腹に、高齢者、若者、子どもなど「一億総貧困化」が進行している状況があります。これをストップし、憲法の目的である、人権が保障される社会を実現するために、自治体が果たすべき役割とは何か、私たちの目指すべき運動の方向をさぐるということが、趣旨です。
参加者は全体会148人、分科会161人、実参加者186人、延べ300人超で成功しました。
全体会は、内山副理事長の司会で始まり、学校長である大須眞治・研究所理事長が開校のあいさつを行いました。
「今年の自治体学校のテーマは『憲法70年 力を合わせて 人権を守る自治体を』。日本国憲法の眼目はなんといっても主権者である国民の健康で文化的な最低限渡の生活を営む権利を守ることにある。
この70年間国民の健康で文化的な生活する権利は守られてきたのだろうか?副題をストップ『一億総貧困化』としたのはまさに現在がその危機にあるからだ。
この状態は、日本だけでなく世界各地でみられる状況だ。先日の大統領選挙では、大方はヒラリー・クリントンが勝つと思っていたが、トランプ氏が当選したし、
民主党の候補者争いではサンダース氏が善戦した。この背景に、アメリカの厳しい社会状況、とりわけ労働者の貧困があること指摘されている。
日本でも同様に政治の変化が起きる可能性がある。今日の自治体学校のテーマ「憲法70年 力を合わせて 人権を守る自治体を」のとおり、
身近な自治体から生活を守る仕組みをつくる必要がある。今日のお二人のお話しを基にして、国民一人ひとりの生活を豊かで、暖かなものしていくにはどのような施策、
どのような設備・サービスが必要でそれを満たす行政はどのようなものでなければならないかみなさんといっしょに考えていきたい。
その成果を、明日からの職場や家庭の中で生かしていただきたい」と呼びかけました。
次に実行委員長の高橋輝雄・神奈川自治労連書記長があいさつ。
「自治体の問題については資料集に、とりわけ大阪について書いた。民主主義や地方自治など、当たり前のことだと思っていたことが脅かされているのが現状だ。
私たちの努力なしに民主主義や地方自治はない。このことを今日確認していきたい」と訴えました。
【記念講演】
河合克義・明治学院大学教授が「住民の人権を守る自治体政策の方向性を考える−高齢者の貧困と孤立問題から−」と題して記念講演を行いました。
「今、亡くなってから何か月も発見されないでいるということが起きている。日本特有の現象ではないかと思う。大須先生のあいさつの中でアメリカの話があったが、
フランスの大学で学んだことは、社会保障とは、生活を安定させ、学んで余裕を持つことにより、正しい判断ができるようにする、民主主義の基盤をつくるものだ、ということだ。
地域住民の人権を守るとはどういうことか、そのために自治体の役割は何かということが今日のテーマとなっている。私は地域の実態調査が大切だと思って長年各地の高齢者の実態調査をしてきた。それにより地域特有の課題を発見することができ、自治体の課題に結びつく。沖縄県宮古島読谷村、高知県元山町、神奈川県大井町、鶴見区、東京都港区、山形県の全市町村のひとり暮らし高齢者などの調査をしてきた。
皆さんに考えてほしいのは、高齢者の生活問題は、介護問題だけなのか。もっと大きくとらえる必要があるのではないかということだ。
認知症の人と家族の会代表の高見さんは「当初介護保険制度ができた当時は歓迎したが、制度がどんどん後退して国家的詐欺だ」とまで言っている。
東京大学名誉教授の神野直彦氏は「介護は社会保険ではなく租税で運営しないと成り立たない」と言い始めている。
介護保険の制度設計は、公費と被保険者・国民の負担割合は半分ずつとなっていた。
しかし、高齢者が増えるに伴って、2000年は1号17%、2号13%だったのが2015年になると1号22%、2号18%と、被保険者負担が増えている。
高齢者が増えると負担が増える仕組みになっている。それ以前に高齢者の生活そのものがきびしくなっている。
NHK「無縁社会」と「老後破産」
NHKの「無縁社会シリーズ」で全国放送された「日本のこれから」という番組の中で湯浅誠氏、結城康博氏と一緒に私が出演した。
【番組を放映】
河合氏は公的ヘルパーを自治体に大量配置することを提案。「支援の手、支え合いの手を拒否する人たちがいる。こうした人を支えるのは、行政の責任ではないのか。
権限を持ち積極的に住民の中に入って生活実態を把握し、関係機関と連携が取れる公的なヘルパーが無縁社会を食い止めるために必要だ」ということを主張した。
これに対して厚生労働大臣の小宮山洋子氏は「財政が厳しい、とにかくお金がない、民間の力をどう借りるかを議論しているところだ」ということを強調。
河合氏は「介護予防地域支え合い運動の400億円を政府は用意していた。私の提案はそんなにお金は必要でない」と反論する。
次に2014年にNHKスペシャルでは、老後破産問題を取り上げた。
【番組を放映】
80代の男性が登場する。10万円の年金で6万円の家賃、食べるのがやっとの暮らし。今や600万人が一人暮らし高齢者。その多くが年金だけの収入。120万未満の高齢者は半数近い。生活保護受給者は、70万人。残り200万人が生活保護なしで生活。その中に「老後破産」状態の人が多くいる。年金が13万に達しなければ生活保護を受けることができるはずだが実際にはそうなっていない実態を説明。
港区のある高齢者。1日500円以下の生活費で、この数日食事は冷麦。電気が止まり、ガスの明かりの中で調理し食べ、体調が悪くなっても医者にかかれない。
こんな暮らしぶりを紹介。この高齢者は、相談員のおかげで生活保護を受けることができた。港区のように相談員が高齢者を訪問して実態を把握している自治体は少ない。
このような日本の高齢者の実態を、韓国KBSテレビで紹介した。韓国も、食糧自給率が下がり、出生率が低く、若者の貧困が進んでいるという実態があるため、
日本の高齢者問題に対する関心が高いのであろうと思われる。
孤立死の問題
孤立死(亡くなって長期間発見されない状態)が全国で増えている。
東京23区での65歳以上の孤立死数(ひとり自宅で死亡)
2002年1364人 2008年2211人 2012年2733人 2014年2885人 3000人を超すのは時間の問題と言われている。
都道府県別にひとり暮らし高齢者の出現率(単身高齢者世帯の割合)を見ると、高い順に鹿児島、東京、大阪、高知と続き、神奈川は中位。逆に低いのが山形、新潟、福井、富山で、福井県や富山県は、県民意識調査で非常に満足度が高く、安定県と言われている。
しかしこうした福井県でも最近孤立死が増えて、遺品の引き取り手がいないというケースが発生し、遺品整理会社が成長しているという実態がある。
高齢者の社会的孤立の背景
高齢者がいる世帯の世帯構成を見てみると、次のように変化してきている。
@全世帯に占める65歳以上の者がある世帯の割合
1980年 24.0% → 2012年 43.4%
A三世代世帯
1980年 50.1% → 2012年 15.3%
B夫婦のみの世帯
1980年 16.2% → 2012年 30.3%
C単独世帯
1980年 10.7% → 2012年 23.3%
こうした変化は、単に高齢者が増えているからというだけでない理由が日本ではあるのではないか。日本では家族、子どもが支えにならないという実態がある。
内閣府の、2005年度「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、<別居している子どもと「ほとんど毎日」接触している>者はアメリカが41.2%、フランスが28.0%であるのに対し、日本が16.7%でしかない。
子どもとの接触度が少なく、日常的な支えが弱い。
私の調査では、「お正月の過ごし方」として、三が日ひとりで過ごすという人が増えている。都市部では、3割強(港区の2011調査33.4%)、地方は2割半〜3割弱(長野県高遠町26% 山形県27%)。
フランスから来た研究者が、今年は日本に1月5日までいる。「クリスマス休暇を親と過ごさないのは初めて」と言っていた。
同様に一か月に家族と食事をしている回数がどのくらいあるか調べると、フランスではかなり高い割合で、週に一回は家族で食事しているという結果が出てくるが、日本ではどうか。
皆さんのご家庭で、親と子どもが食事をしている回数は、ほとんど測定不能ではないか。
地域社会の現状
食糧自給率フランスは120パーセント、日本は40パーセント以下。つまり地方の衰退が顕著だ。フランスでは農業や漁業が元気だ。若い人が多い。
商店街も同様で、パリ市長が観光大臣からパリでデパートを、日曜日に営業したらどうかと打診されたとき、市長は拒否した。「パリの魅力は個人商店が織りなすところにあるのでデパートやスーパーを日曜日には開店させない」と主張したからだ。日本では商店街が衰退し、シャッター通りが増えている。
2年前にパリを訪問した時に、カトリック系のNPO団体の人から、「フランスの一人暮らし高齢者の貧困ラインを19万円に設定している」と聞いて、
港区からの参加者は唖然としていた。
自治体ごとの単身高齢者世帯の出現率
島、過疎地、大都市に分け、95年から2010年までの、自治体ごとの単身高齢者世帯の出現率の変化を見ると、大都市自治体は2から16に急増している。逆に島と過疎地が減っている。これは町村合併によるものだ。
また、全国の上位50自治体を見ると大阪は全区入っている。東京は伊豆七島、新宿、杉並、渋谷、豊島が続く。神奈川では中区・西区と箱根町が多い。静岡では熱海市。温泉地は全国的に単身者が多い。
経済的状態
港区と山形県と鶴見区での実態調査を行い、比較した。港区は、一人暮らし高齢者が急増している地域で、150万が生活保護基準だが、受けている人は2割程度。
「100万円未満」の者が18.2%、「150万円未満」の者の合計が36.8%、「200万円未満」の者の合計が56.1%、400万円以上14.2%。
山形県は、50万円未満が9.7%、100万円未満の合計28.8%、120万円未満の合計44.1%、150万円未満の合計56.6%、400万円以上1.7%
全国的にも、一人暮らし高齢者の半分は、生活保護以下だろう。
孤立の状態
○緊急時の支援者「なし」 港区16.7% 山形県5.8% 鶴見区は3割
○正月三が日ひとり 港区33.4% 山形県26.7% 鶴見区は4割
○近所づきあい「あまりなし」 港区37.8% 山形県15.9%
港区の調査から、生活類型とその人を取り巻く様々な因子をクロス集計した。それによると、「健康でない」人は、多重困難者の場合は53.4%と多く、生活が安定している人は、3.9%と少ない。健康格差が明確に出る。「社会参加あり」は、多重困難層は3割位だが、安定している層は71.5%と多い、という結果が出た。
私が、2010年にNHKの番組の中で提案したのは「公的ヘルパー」であったが、港区の実態調査をまとめて提言をしたのが、「ふれあい相談員」の創設だ。区の高齢者サービスを
受けていないひとり暮らし高齢者3400人の全数訪問をこのふれあい相談員が行った。地域に埋もれている問題含めて考えるということが大切だ。
高齢者支援の制度の後退
さて、介護保険制度の基本的仕組みが2000年にできた。これによって、<利用選択制と契約制>すなわち行政が判断するのではなく、自分で判断する仕組みになった。
しかし、声をあげない高齢者の現実が明らかになってきた。
番組でも言ったが、2015年度介護保険のサービス利用率は14.8%であり、残りの8割半の高齢者はサービスを利用していない。
介護保険制度の問題としては地域包括ケアシステムが強調され何でもありだが、社会保険と福祉サービスは別だと思っている。
2005年度に養護老人ホームは、国と県の負担金を廃止して、すべて市町村負担となってしまった。これにより、措置控えが起き、1割ほどの定員割れが起きた。
2006年度に「介護予防地域支えあい事業」は廃止(400億円)されて、介護保険の「地域支援事業」へ移行した。しかし、介護保険と福祉は別物だ。総合事業も介護保険の枠内でやることになっている。
2007年度 国家予算から「老人福祉費」を廃止して「高齢者日常生活支援事業等推進費」へ移行した。
最後に、住民の人権を守る自治体政策の基本的視点だが、一つは、制度対象外の人たちの実態へ注目すること。既存の制度の枠を超えて、実態を把握して行く必要がある。
二つ目は、社会問題としての生活問題への視点が大切なのではないか。
と述べて、講演を終えました。
【質問に答えて】
*現状はわかったが、これをどう打開するか。財源をどうするか、対処療法でなく本質的な改善についてお考えを聞きたい。
「大事な問題だが、日本は財政の使い方が問題。社会保障制度を持続可能なものにすると言って、サービスを減らす方向を唱える。
日本の社会保障は制度間調整がない。例えば、生活保護基準13万円を下回る場合はほかのサービス利用料や保険料を取らないようにしなければならない。
豊かな生活を保障するためには、財政的な大きな決断が必要だ。私も審議会に参加して主張するが、最後は政治的に決まる。大きな決断を迫るような国民の運動が大切だと思う」
*温泉地や西成区は別の要素がある。生活保護を受けたくないという人が多い。
「温泉地は、単身で住み込みで働く人が多いが、箱根がそれに当たるかどうか。日本の生活保護適用率は20%程度、イギリス、フランスでは8・9割近くになる。
生活保護基準が引き下げられ、生存権裁判が起きている。生活保護の問題は重要だが、国民全般の生活保障・セーフティネットは生活保護だけでなく様々あるはずで、
社会的な多様な制度が必要だ。フランスでは教育費は無料。住宅費負担も低い。教育と住宅の負担が軽くなるとかなり違うのではないか」
【特別報告】
続いて特別報告「県立やまゆり園の事件をどう考えるか」を、元県立福祉施設職員で県職労連元副委員長の松尾悦行さんが行いました。
「中井やまゆり園は私の初めての職場だった。今回の事件についてどう考えるかについて、様々な視点があるが、今日は優生思想、社会の問題、指定管理の問題について話したいと思う。@人物像については、精神鑑定結果が近く出されるが、私は精神障害ではなく人格問題だと思う。A事件は防げたか。警察は予兆がありながら、どのように対策したのかが触れられていない。B措置入院については、予防対策ではないと思う。C予防対策については「共謀罪」の問題につながるし予防拘束ができるかどうか疑問だ。D防犯対策については、鍵と身体拘束は人権侵害の象徴であり、防犯とはいうものの施設の閉鎖性につながる恐れがある。
さて、津久井やまゆり園は、1964年県内初の「重度精神薄弱者更生施設」で、コロニー全盛の時代だった。まだ養護学校義務制や、グループホーム・作業所などの地域福祉もなく、
成人すれば、家族か精神病院しか行先がない、選択肢はごくわずかだった中での施設であった。
当時は人権という言葉もまだ日常的に語られる時代ではなく、当初は大規模収容200人、1棟50人、6人部屋、入浴週2回、日中活動も散歩ぐらいで少なく、
今で言う「不適切な支援」もあった。また、指導員―指導補助員という職階で職員間にも差別があり、後に保母さんとあわせて、現在の福祉職に統合された。
利用者も職員も差別されていた中で地域の方々の協力もあり職員と家族会が利用者のための施設づくりを進めてきて今に至っている。
容疑者はその長い歴史がある施設で重複障がい者を選んで事件を起こした。許せない事件だ。
優生思想について
社会が障害を持つ人に合わせるという方向に変わってきたのに事件を起こし、容疑者は、安楽死という言葉を使った。それと優生思想との関連が問題になっている。
ダーウィンの従兄弟ゴルドンが、家畜の品種改良が人にも可能と考えたのがルーツといわれる。ベバレッジ報告を作ったベバレッジも優生思想にもとづく発言をしている。
平塚らいてふも、同じような主張をしているらしい。生命倫理学者フレッチャーは、生物学的生命よりも人格的完全性が上位だとして、
積極的安楽死を擁護し、IQ20以下は人間でなく、殺しても殺人ではないと主張した。
日本では1948年に優生保護法が制定され、1996年の母体保護法への改組までに実施された不妊手術は16,500件といいます。勤務した当時の中井やまゆり園にも手術を受けた利用者がいた。ドイツでは40万人が断種された。ヒトラーはT4作戦で障がい者20万人以上を殺した。T4作戦は一般の医師と看護婦等が積極的にかかわった。ドイツの精神医学会が謝罪したのは、ようやく2010年になってからだ。
今回の事件は、障害があるという理由だけで人間の存在そのものを抹殺する言語道断の事件だ。安楽死は戦争と同様に国家政策にならなければ、ただの殺人となる。
容疑者は、安倍首相や衆議院議長に頼めばこれを政策化されると思った。妄想ではなく、認めてくれると本当に思っていたのではないか。それは社会の差別構造の中に優生思想がいまだに存在することを感じ取っていたからだろう。
容疑者は『話せるかどうか』『重複かどうか』で選別した。その区別するという価値観は今の社会にもある。障がいの種類や程度によって、その人が存在する価値自体を差別する体質だ。
社会に役にたつかどうかで人間の価値を区別するということがあるのではないか。しかし、人は何らかの障害を抱えて人生を送るのであり、助け合って生きていくことが必要なのではないか。
私は赤緑色弱であり、学校の健康診断では嫌な思いを毎年した。緑の葉の中の赤い椿の花はわからない。施設勤務の時は、利用者の顔色の変化を見落とすのではないかと気がかりだった。今は自分の色彩感覚が嫌いではないが、これが全色盲だと旧優生保護法の対象になってしまう。
容疑者は『事件を起こした自分に社会が賛同くれるはずだ』という容疑者の供述は妄想とは思えない。自分の行動が社会のためになり、支持してくれると考えていた。そうさせた何かが社会にあるのではないだろうか。
例えば瀬谷区で「知的障害者ホーム建設絶対反対」の立て看板が今年1月まで4年にわたり、複数掲げられ続け、建設断念によってようやく撤去された。その看板を出した人は「身体障害者や高齢者」のホームなら協力する。
知的障害だからだめだと言ったそうだ。
出生前について
生れる前の問題はむずかしい問題をはらんでいる。
「障がいがあっても差別はしない」としても、「障がいはない方が良い」というのはどうか?
「五体満足なら」というのは昔からの感情だが、できれば避けたいというのはどうか?
親の健康に気を付けるというのはあたりまえだが、胎児又は卵子・精子に障がいのリスクが予想される場合に排除しようとする行為はどうか?
妊娠中の胎児の医学的リスクをチェックするために、新型出生前診断という二次検査が日本でも導入された。3つの染色体異常を血液検査でチェックできる。3年で約3万人が全国74の医療機関で検査を受け、異常の診断確定が417人。そのうち94%が人工妊娠中絶したそうだ。無届けで安易にNIPT検査を請け負う民間業者も出てきた。
ミトコンドリア病を防ぐため、遺伝子を持つ母の卵子から核を取り出し、健康な第三者の女性の卵子の核と置き換えて、父の精子と体外受精させた、
赤ちゃんは3人の親を持つことになった。これをアメリカではなく、メキシコで実験をしたそうだ。
この判断は極めて難しいと思う。仮に決めるのは産む当事者だとしても、社会がそれを何らかの方向へ強いるような風潮があってはならない、障がいの可能性があっても安心して生める社会になるのかということが問われている。
優生思想は、差別思想に過ぎない。生産に寄与できる能力がない人間は軽視される。弱者の排除は連鎖していく。今回もネット上に「社会の役に立たない障害者に税金を使うより、仕事がない若者に使え」という書き込みがだいぶあったそうだ。自分の不安や怒りを社会のマイノリティに置き換えて攻撃するという思想は、ヘイトスピーチにつながる思想だ。容疑者も自分の存在証明というか、はけ口を障がい者に求めたのではないか。
私は、タテに分断するのではなくからヨコにつながることが大事だと思う。
指定管理の問題
かながわ共同会は県立施設を受託するためにつくられた法人だ。指定管理の目的の一つに、県費支出削減がある。はじめは、派遣されていた県職員の人件費も含まれていた。職員がいなくなった当初が約6億、2015年度には3億7000万円。県費が半分近くに削減されている。知事は今回の県議会で「法人の創意工夫や柔軟な人員配置でうまくやっていく」と答弁している。知事の表現は、指定管理導入時点からの、常套ロジックだ。
現在の職員配置基準128人は、移行当時と同じだが、115人+非常勤13人=128人だったのが、2016年7月現在の配置数では、常勤が106人で、9人下回っている。地域サービスや日中活動担当が増え、生活ホーム担当は減っている。朝夕20対3だ。中井やまゆり園等の県営施設よりもきつい。常勤の欠員を非常勤で埋めている可能性等はこの数字だけでは不明であり、細かいところは、毎月の勤務シフトの精査が必要だ。
1996年に今の施設が再整備された。当時は一棟50人、6人部屋を解消するために、個室化、20人1ユニットに替えた。現時点で今の土地に、
今の規模施設で建て替えるだけでよいのか疑問だ。もう一回施設の見直しが必要であると思う。
最後に、事件の後に「この子らを世の光に」という糸賀一雄先生の言葉がネット上に広がったそうだ。
私も、琵琶湖学園の記録映画「夜明け前の子供たち」を思い出した。職員との長い関わりの中で、或る時、入所者のシモちゃんが笑った、と職員には思えたという場面だ。
本当に笑ったかどうかわからないが、職員にはそう見えた。私もこのような共感関係を持ちたくてこの職業を選んだ。
残念ながら容疑者は、このような共感関係が持てなかった。多くの職員がこのような共感の中で成長できるように、条件整備も必要だが、そういう施設がたくさんできていくことが、
本当の共生社会なのではないだろうか。」と結びました。
午後からは、「民営化・公務労働・公共性」「環境・まちづくり」「子育て・教育」 「平和・基地」「地域経済・産業」「社会保障」「暮らし」「女性」
の8つの分科会で熱心な討論が行われました。
2015年に開催した、第43回神奈川自治体学校のもようはこちら
2014年に開催した、第42回神奈川自治体学校のもようはこちら
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