第43回神奈川自治体学校、300人超の参加で成功!
戦後70年 憲法をいかし、平和と人権を守る自治体を
11月7日、第43回神奈川自治体学校(本校)が、かながわ労働プラザで開校されました。参加者は午前中の全体会145人、午後の分科会142人、
10月31日に開催された地方財政講座の参加者を合わせて延べ303人が参加しました。
7日午前中全体会では、「憲法をいかし、平和と人権を守る自治体をつくるために」と題して、日本弁護士連合会元会長の宇都宮健児氏が記念講演。
また、神奈川県生活と健康を守る会連合会の関美恵子氏が、生存権裁判の意義について、特別報告しました。
午後は、公務・公共性、環境・まちづくり、子育て・教育、平和・基地、地域経済・産業、社会保障、暮らし、女性の8つの分科会に分かれ、熱心な
話し合いが行われました。
午前中の全体会は、神奈川自治体問題研究所常任理事・藤沢支所の角田進さんの司会で始まり、まず学校長である研究所理事長・長尾演雄(のぶお)さんが
次のとおりあいさつしました。
●学校長あいさつ
「この学校は実行委員会方式でつくりあげる学校。毎年、4月に実行委員会を立ち上げ、学校のスローガン、全体会のテーマ、講師の先生などを決めています。
今年は憲法が危ない、基本的人権がことごとく壊される、という危機意識から、スローガン「戦後70年 憲法をいかし、平和と人権を守る自治体を」も、
記念講演「憲法をいかし、平和と人権を守る自治体をつくるために」も、あまり時間をかけることなく実行委員会の合意ができました。
記念講演の宇都宮健児先生、特別報告の関美恵子さんも、快く引き受けていただきました。
こうしたテーマで開催される自治体学校に、皆さんが問題意識を持って参加されることを期待します。私の自治体学校での問題意識は次のようなものです。
今回の安保関連法案に反対する市民運動は、新しい市民運動、新しい政治運動として注目され、話題になっています。『自分の頭で考え、自分の言葉で話し、活動する』、『一人ひとりができる場所で、できることをする』等々。自分で考え、行動することを軸にしつつ、運動をつくり出してきたと、言われています。また、国民一人ひとりがもう一度学び合う運動になってきたとも言われていいます。それは、『地域の問題に気付いた住民が、その当事者たちが声をあげ、そしてその人たちが中心になって、話し合ったり、調べたり、勉強したりして、その問題解決にあたる』という、これまで自治体問題研究所が追究してきた、神奈川の中に六つある“まちの研究所”づくりがまさに、この新しい市民運動の考え方を先取りしていたのではと考えます。
もう一つは、いま形成されはじめた新しい市民運動、政治運動というのは、じつは市民社会の成熟のはじまりであり、この市民社会の風を地域に吹き込ませる活動が、
地域に未だに根強く残存している草の根保守主義を崩壊させるのではないだろうか。自治体にこの市民社会の風を吹き込ませる活動、風通しのいい自治体づくりの活動が、
地域に憲法をいかし、平和と人権を守る自治体づくりになるのではないだろうか。このことを熟考してみたいと思います。
皆さんが 『参加して本当によかった』と実感していただければ、この上ない喜びです。」
次に実行委員長である、神奈川自治労連書記長の高橋輝雄さんがあいさつ。
「本日の自治体学校は、自治体労働者と住民、議会、行政、みんなで、地域と自治体を良くしていこうという自治体問題研究所の企画です。
神奈川自治労連の自治研究集会としも位置付けています。今年は憲法問題が焦点でした。攻撃は続いており、引き続き来年に向けてたたかいを強める必要があります。
神奈川自治労連のいま最大の課題は、鎌倉における市議会による組合攻撃の問題です。
憲法を軽視する態度を安倍政権はとっていますが、地方議会でもこのような風潮が蔓延しています。
鎌倉では、憲法や市長より議員の方が上だという態度を一部議員がとっていて、組合役員の個人名を挙げて議会内外で組合攻撃を繰り返しています。
これを許さないたたかいを展開していきます」。
●記念講演「憲法をいかし、平和と人権を守る自治体をつくるために」
続いて、「憲法をいかし、平和と人権を守る自治体をつくるために」と題して、日本弁護士連合会元会長の宇都宮健児氏が記念講演を行いました。
記念講演の中で宇都宮さんは、安倍政権の暴走をストップさせ、平和と人権を守るために国の政治と自治体を変える必要があり、
そのために多様な市民の運動を発展させ、市民が手をつなぐことの大切さを強調し、大要次のように述べました。
1.憲法は今最大の危機を迎えている〜戦争法の問題点
憲法の危機ということが言われています。憲法は1946年11月3日に公布されて69年、施行されてから68年ですが、いま最大の危機を迎えています。
憲法をほとんど軽視し無視する安倍政権が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、これを法案化した戦争法を強行採決する。
こういう憲法違反のことが行われています。
通常今の時期は臨時国会が開催されていますが、今年は戦争法のほかにも、TPPや新しい大臣の問題、国会で審議すべき事柄がいくつもあるのに、
臨時国会が開かれていない。憲法53条は4分の1以上の議員が要求すれば開かなくてはならないと規定してあるにもかかわらず開会しない。
憲法を無視し軽視する政権だということが言えます。
(1)違憲・立憲主義の否定
9月19日に強行採決された戦争法は、明らかに憲法9条と立憲主義に違反しています。
国会審議の転換点となったのは、6月4日の衆議院の憲法調査会で、与党が推薦した憲法学者も含めて3人の参考人全員が今度の安保法制が憲法だと発言しました。これ以後、元最高裁判事・長官、内閣法制局長官のほとんどが憲法違反だと意見を上げ始めました。
戦争法の問題点は、憲法違反であると同時に、立憲主義に反しているということです。立憲主義についてはこれまであまり、議論されてきませんでした。
安倍さんのおかげで、みんなが憲法に関心を持ち、立憲主義についても議論するようになりました。
立憲主義というのは、自由や人権を侵害されないように、権力を憲法によって縛るということが憲法の役割の一つだという考え方です。
歴史的には、ワイマール憲法下でのナチス・ヒットラー独裁政権の動きを教訓にすることが重要です。
ヒットラーは1933年1月30日に選挙で政権につき、3月に内閣に立法権を与える『全権委任法』、
7月に政党の新設を禁止する法律でナチス以外の政党を非合法とするなど、憲法違反の法律を次々につくって独裁政権を確立し、
侵略戦争を始めていきました。ナチス政権の問題は立憲主義の教訓です。
(2)アメリカ主導の法律
今回の法律は、安倍政権が2014年7月1日に集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い、それを具体化したものですが、それ以前に出されていた米国の対日要求に応じたもの
です。第3次アーミテージレポートでは、原発再稼働、集団的自衛権の行使、武器輸出三原則の緩和、秘密保護法の制定、日本版NSCの設置、TTP交渉への参加、
ホルムズ海峡への掃海艇の派遣、シーレーン防衛、PKO活動での駆け付け警護などを日本に要求しています。
これをほとんど実現したのが安倍政権です。この対日要求の背景にはアメリカの財政事情があります。
アメリカは財政が悪化し、今後10年間で40兆円の国防費を削減しなければなりません。一方で、世界の警察としての地位を保ちたい。
これを日本に肩代わりしてもらいたいということです。
日本政府はこのアーミテージに対して、秋の叙勲で旭日大綬章を贈っています。ブッシュ政権時にイラク戦争遂行の責任者だったラムズフェルドにも旭日大綬章を贈って
いるのです。また、4月27日に2プラス2の会談で「日米防衛協力のためのガイドラインの再改定を行い、この内容を具体化したのが戦争法です。
(3)自衛隊幹部制服組の暴走
戦争法の問題点として、国権の最高機関である国会のシビリアンコントロールを無視する自衛隊幹部制服組の『暴走』があります。
制服組トップの河野統合幕僚長が2014年12月に訪米した際米陸軍参謀総長に対して、戦争法案は「来年夏までには終了する」との見通しを伝えています。
この人は国会議員でもなく政府の代表でもない。軍事訓練も法律を先取りして、日米が一体となって行っています。
このような、国会のシビリアンコントロール文民統制を無視する自衛隊統合幕僚長の「暴走」について、国会で解明されることなく、法案が強行採決されてしまいました。
私は、1931年9月18日、柳条湖事件をきっかけとした関東軍の暴走が日中戦争・アジア太平洋戦争へとつながっていった歴史を想起します。
満州鉄道を中国人が爆破したとして、関東軍が攻め込み、満州国をつくったのですが、この事件は実は関東軍特務機関の自作自演でした。
こうした軍の暴走は、当時の法律にも違反し、天皇の統帥権をも侵すものでしたが、マスコミ・国民世論がこの暴挙を提灯行列までして称賛しました。
これ以後軍は増長していきました。今日の状況で、制服組の暴走を国会できちんとチェックする必要があります。
(4)真の積極的平和主義とは
安倍政権は、日米同盟の抑止力の強化による平和の創出を唱え、これを『積極的平和主義』と言っていますが、軍事力の増強による抑止力の強化は、結局軍拡競争を招き、
緊張を高め、一触即発の危険を招きかねません。ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングさんは、平和学における『消極的平和』と『積極的平和』を提唱しています。
『消極的平和』は単に戦争のない状態であるのに対して、『積極的平和』は、戦争の原因となる『構造的暴力』がない状態です。『構造的暴力』とは貧困や格差、差別など社会的構造
に根ざしているもので、これを無くしていくのが、『積極的平和』だというのです。安倍内閣は、格差と貧困を拡大する政策をとり、こうした方向と相反することを行っています。
(5)改憲の動き
戦争法は、法律による改憲ですが、明文改憲の動きにも注意が必要です。自民党の2015年運動方針には、自民党の改憲草案の賛同者を増やすことを掲げています。
自民党の別動隊の『日本会議』、『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の動きを加速化しています。『美しい日本の憲法をつくる国民の会』は、全都道府県に「会」を
つくる方針。『神奈川県民の会』が全国第1号で結成されました。『美しい日本の憲法をつくる国民の会』は、憲法改正の国民投票が実施された場合の過半数は3千万票と
読んで1千万署名を呼びかけています。戦争法反対の『総がかり行動実行委員会』が呼びかけている、来年5月3日までに2千万署名をやりとげることの意味は大きなものが
あります。
2 国民・住民の暮らしはどうなっているか〜安倍政権の暴走
(1)貧困と格差が広がっている
国民の貧困と格差が拡大しています。昨年厚労省が発表した国民の貧困率は16.1%、6人に一人以上が貧困状態です。とりわけ子どもの貧困は深刻で、16.3%。
これは過去最悪です。ひとり親世帯の貧困は54.6%、半数が貧困。OECD諸国中で最悪です。子どもは、自分の家庭や地域を選択できません。
貧困の拡大は戦争の温床になります。安倍政権は意図的に貧困と格差を拡大しているという学者がいます。
軍隊に希望する人が減少しているアメリカでは、貧困層が軍に入る状況があります。最前線で闘っている兵隊はほとんど貧困家庭の若者です。
『経済的徴兵制』の状況があります。
(2)社会保障は削減、軍事費は増額
政府は財政難を強調し、1千兆円の借金を理由として生活保護・医療・保険・年金・介護など社会保障費の削減を進めています。
特に6.5%から10%、670億円もの生活保護の引き下げは重要です。生活保護基準は、最低賃金、地方税の非課税基準、就学援助などの各種給付の算定基準になっていて、
その引き下げは、国民生活全体の引き下げにつながります。いま、25都道府県で800人が原告となって、生活保護の引き下げに反対する裁判をたたかっています。
年金の引き下げに対しても裁判がたたかわれています。一方で防衛費は3年連続で増額です。
安倍さんは4月にアメリカに行って、オスプレイ17機などを30億ドル=3,600億円で購入することを約束してきました。2015年度予算での社会保障費の削減幅は
3,900億円。オスプレイなど買わなければよいのです。
戦争法の成立は、防衛費をさらに増額させ、社会保障費のさらなる削減が心配されます。2015年6月に閣議決定された骨太方針では、2018年度まで3年間で1兆5千億円、1年間で5千億円の社会保障費の伸びを削減することを決めています。
今後さらに、3,000億円から5,000億円の削減を行うことを方針として決めています。これは、小泉政権時代の2,200億円をはるかに上回る規模です。
(3)非正規の広がり
労働者派遣法の改悪の次は残業代ゼロ法案、解雇の金銭解決、がきます。厚労省の発表では、非正規労働者は今や4割。そのうち非正規労働者の方が正規労働者より多く
なり、自衛隊しか正社員の就職先がないという危険があります。200万円以下労働者は、7年連増で1千万人を超えています。第3次安倍内閣のスローガンは「1億総活躍社会」。弱者を切り捨てることをしておきながら、こんなことをよく言えるものです。
(4)消費税と不公平税制
消費税については、2017年に10%にすることを前提にして、軽減税率が論議されていますが、消費税は貧困にも課税されます。
消費税の導入、引き上げのたびに、法人税や富裕層の所得税を下げています。所得税の累進税率の最高はかつて75%でしたが、今は45%。財政難と言いながら、
富裕層や大企業の税金を下げています。おかしなことに復興特別税も法人の分だけ廃止してしまいました。富裕層の減税が低所得層にかぶさっています。
財政赤字を解消するには、課税を元に戻せばすればよいのです。また、税金の使い道も問題にしなければなりません。
(5)原発再稼働、辺野古新基地建設、TPP交渉
川内原発や伊方原発など、再稼働を次々に行おうとしています。原発事故の被害者は置き去りのままです。東日本大震災の被災者、福島の人は10万人が避難しています。
しかし、2017年3月をもって、避難者の住宅が取り上げられ、被害者の貧困化が進行します。
辺野古での米軍新基地建設は、沖縄県民の民意を全く無視するものです。最近では、沖縄では反対運動の住民を弾圧するために、沖縄県警ばかりでなく、
警視庁の機動隊が配置されている。沖縄県民の気持ちはどうでしょうか。ヤマトンチューに支配され、植民地のように扱われていると感じて、反発がますます強まるでしょう。
TPPは大筋合意と言われています。農業、畜産業も大きな打撃を受けるが、食品の安全規制・環境保護規制・国民皆保険制度・医療制度などを危うくさせます。
今まで秘密交渉だったので、明らかにされていない大筋合意の中身を、臨時国会を開いて徹底的に審議しなければならないのに逃げまわっています。
(6)教育が危ない
教育に対する国家統制が強化されています。育鵬社の教科書が神奈川と大阪で採択されてしまいました。私は江東区の住民。区長が日本会議派であり、安倍政権は自治体の長を集めて
育鵬社の教科書採択を進めるように要請しているので、これは大変だと住民が運動を行い、江東区では育鵬社の教科書採択を阻止できまし。
いま、教育格差が広がり貧困の連鎖が懸念されます。日本は、OECD諸国の中でGDP比の教育費が5年連続最下位です。奨学金は日本では返さなければなりません。
ヨーロッパでは返さなければならないものを『奨学金』とは呼びません。『ローン』です。社会人になっても賃金が低くて返済できずに滞納が増え、奨学金取り立てのための裁判が
8年間で100倍に増えています。『昔サラ金、今奨学金』という状況です。かつて国立大学の授業料は月千円、年間1万2千円でしたが今は50万。私学並みに増額しようとしています。
日本と同じ敗戦国でGDPが日本より低いドイツでは、大学授業料は無料。医療費も無料です。
3.自治体の役割とはなにか
(1)自治体は安倍政権の暴走から、住民を守る防波堤
今のべたような安倍政権の暴走から、住民の命と暮らしを守る「防波堤」の役割はたすのが自治体だと思っています。地方自治法第1条の2では住民福祉の増進が自治体の役割として
掲げられています。生活保護は国が決めますが、子どもが給食や修学旅行で差別され、つらい思いをしなくて済むようにすることが大切です。
働いている人の最低賃金を保障するために公契約条例の運動や取組が重要です。
(2)ソウルの改革に学ぼう
自治体については、韓国のソウル市ですばらしい改革が行われています。2011年にパク・ウオンスンという弁護士出身の市長が誕生しました。長く『参与連帯』というグループで
活動していた人で、選挙戦では『市民が市長』、『堂々と享受できる福祉』、というスローガンを掲げ、公約には『ソウル市で働く非正規職員の正規化、ソウル市立大学の授業料
半額化、ソウル市内の小学校で無償給食の実施』を主張。2014年10月には全部実現しました。無償給食については低所得者だけでなく全員を対象に実施しました。『選別的福祉』
でなく、『普遍的福祉』、差別・分断を持ち込まず、みんなが恩恵を受けるという考え方です。非正規職員の正規職員化は、青年ユニオンという労働組合から活動家を配置して労働補佐
官として任命。市で働く労働者の実態調査を行い、当面7,600人を目標に、4,483人を正規化。そのうち3,100人は清掃労働者で派遣から直接雇用にしました。
清掃労働者の中には『選挙の時の公約などすぐ忘れてしまう』といった声もあったそうです。しかし、パク・ウオンスンさんは、当選して初登庁時に、清掃労働者と一緒に清掃活動し
て『私は忘れていない』と言うメッセージを送ったのです。もちろん賃上げもしましたが、派遣会社に払う分が無くなり財政に余裕が生まれました。
清掃労働者の中も意識の変化がうまれ、施設管理などこれまでしなかった仕事を進んでやるようになりました。『誰かに命令されて奴隷のように働くのではなく住民に奉仕するのが私
たちの役割だ。』こういう革命的な意識の変化が生まれました。日本の自治体労働者は学ぶ必要があります。公共住宅8万個建設も実行。石原都政は、公営住宅建設はなかった。
注目すべきなのは市民参加の予算制度をつくったこと。ソウルの財政規模は20兆ウオン。日本円に直すと2兆円。そのうち500億ウオン=50億円を、
市民参加の予算制度で使えるようにしました。市庁舎の掲示板に要望・提案を市民から募り、市民代表の『100人委員会』で決定するというもの。評判が良いので枠を広げる要望が出て
います。ぜひ日本でこうした自治体をつくってもらいたいたい。
しかし日本の現状はこれに逆行して、何でも民営化。図書館もツタヤが運営するようになってきて、学校はそのうち塾が経営するようになりかねません。
アメリカはすでにそうなっています。
4.安倍政権の暴走ストップ、戦争法廃止、憲法改悪阻止のために
(1)選挙で多数を勝ち取る〜選挙制度の改革
戦争法を廃止するには二つの方法があります。一つは国会で戦争法に反対する勢力が多数派になれば、戦争法を廃止することができます。脱原発も実現できます。来年の参議院選挙、その次の衆議院選挙が重要です。すばらしい市民の運動のエネルギーを選挙闘争で発揮しなければなりません。野党の共闘が実現できるかどうか心配しています。選挙闘争を勝ち抜くためには、今の選挙制度の改革が必要です。今の選挙制度は1925年の普通選挙法を下敷きにしたものです。この普通選挙法は、治安維持法と一緒にできたもので、無産政党の進出を抑えるため、当時の公務員の2年分の年収の供託金、ビラの制限、戸別訪問の禁止など非民主的なものでした。今の与党に有利な選挙制度を変え、民意を反映する制度に変える必要があります。
(2)裁判で違憲判決を勝ち取る〜司法の改革
また、司法が戦争法を違憲と判断すれば戦争法は無効となります。原発も最高裁で再稼動を禁止すれば止められます。今後、裁判闘争で戦争法の違憲判決を勝ち取ることが重要な闘いとなります。裁判闘争を勝ち抜くためには、国民の基本的人権を守るという視点から立法・行政をチェックするという司法の本来の役割を果たせるように司法を変えていくことが重要です。ドイツは、メルケル政権が2020年までに原発ゼロにする方針ですが、すでに1998年に連邦行政最高裁判所が出来たばかりの原発について地震対策が不十分だとして、差し止めました。日本と違い、ドイツではほとんど地震が無いのです。日本の最高裁はどうか。日本では福島の事故の前にたくさんの住民訴訟が起きましたが、住民側を勝たせたのは『もんじゅ』の控訴審と志賀原発の一審判決だけです。最高裁は国や全部電力会社の言い分を認めてきました。ドイツでは裁判官の組合があり、原発反対の運動に参加して座り込みなどしています。裁判官の市民的・政治的自由を重視しています。これはナチス時代に裁判官がナチスに協力した反省から、裁判官こそ市民感覚・人権感覚を持つべきだという考えのもとに、戦後の若い裁判官が改革していったのです。韓国の『参与連帯』は14,500人の会員、20億ウオンの会費収入、55人の専従活動家がいて、ソウル市内に自社ビルを持ち、国会議員と司法の監視運動を旺盛に展開しています。法案への賛否、賄賂の有無を公表しています。『落選運動』を起こし、86人の落選を呼びかけ、59人を落選させています。首都圏では9割近くが落選。韓国のあらゆる市民運動が連帯して『総選挙連帯』という市民運動を組織しています。司法の監視については、1,000人の裁判官について、判決の評価と共に、裁判所内で不当な差別を受けていないか監視しています。日本では、福井地裁で大飯原発を止めた判決を下した樋口裁判官は今、名古屋家庭裁判所に飛ばされています。これに対する抗議活動をしていない。日本では、裁判闘争を勝ったか負けたかということだけを問題にしていて、司法機構全体を民主化する運動が弱いのです。
安倍政権に対する怒りと戦争法反対で広がった運動を継続させ、選挙闘争と裁判闘争を勝ち抜けば、戦争法の廃止も原発再稼動の阻止も、辺野古新基地建設阻止もできます。市民運動のエネルギーをこうした、選挙闘争、裁判闘争につなげていくことが必要です。
(3)オール沖縄に学び、市民が幅広く連帯しよう
選挙闘争では、『オール沖縄運動』に学び、政治的立場・イデオロギー的立場を超えてつながることが重要です。運動の格言として、『同質の集団の集まりは「和」・足し算にしかならないが、異質の集団の集まりは「積」・掛け算になる。』があります。
(4)基本的人権を生活の中に定着させよう
憲法が保障する基本的人権を生活に定着させる、実質化させる運動が求められています。憲法121条と97条で基本的人権について書かれています。憲法97条は、第10章・最高法規という章の最初に登場する条文です。自民党改正案はこの97条がそっくり削除されています。憲法は、一つの理念と三つの原理で構成されています。一つの理念は『立憲主義』、三つの原理は、『基本的人権の尊重』『国民主権』『恒久平和主義』です。三つの原理のうち基本的人権の尊重原理が中心的価値を持っています。人権の尊重原理から国民主権が導き出されます。専制国家・軍国主義国家では人権が尊重される社会は実現しません。国民主権の民主主義国家のもとで初めて人権が尊重されます。また、人権は平和であってこそ守られます。戦争は最大の人権侵害です。日本では25条の生存権、26条の教育権、27条の勤労者の権利、28条の団結権など、基本的人権がまだ定着していません。学校教育でも、25条を教える時には生活保護の申請の仕方を、27条は労働基準法、28条は労働組合の作り方、団体交渉を教えるべきです。21条の集会・結社、表現の自由の場合はビラのまき方、デモ、集会のやり方を教えるべきです。受験勉強の知識だけではだめです。『たった一人でもマイクを持って街頭に立てる人間』、こうした人間を育てることが大切です。
(5)危機をチャンスに変えて
戦争法や憲法改悪の動きは逆にチャンスです。『シールズ』という若者たちに刺激されて、『オールズ』『ミドルズ』『ママの会』など様々な市民団体が次々と出てきています。日本国憲法の立憲主義の理念や、基本的人権の尊重・国民主権・恒久平和主義の原理を日本社会に定着させるチャンスがきています。われわれは微力だが無力ではありません。『無力』はいくら集まってもゼロですが『微力』は多くが集まれば大きな力となります。戦争法の廃止、原発再稼動を阻止、辺野古基地建設阻止など力をあわせていきましょう。」
●会場からの質問に答えて
質問:歴代内閣はアメリカいいなりですが、いいなりになる原動力は何か。
回答:「端的にいえば、いいなりになったほうが安定的に政権を運営出来るということでしょう。これは、政府だけでなく、官僚機構や司法の中に、戦後長い間アメリカとの関係が出来上がってしまっています。まさか司法がと思うが、砂川事件の第一審で、日米安保条約が違憲であり、被告は無罪だという判決が出され、あわてて政府は最高裁に跳躍上告。その時の首相は岸信介で、安保条約の改定をしようとしていました。当時の最高裁判所長官田中耕太郎が裁判の審議中にアメリカに行って、判決内容の見通しなどを話しています。合議の秘密は外部に漏らしてはならないのに、最高裁長官がこのようなことをしていたのです。これは、2年ほど前、山梨学院大学の教授がアメリカ公文書館への情報公開請求で明らかになりまし。司法の独立をめぐる大変な事件であり、事実を国会でも明らかにし、安保法制反対の運動と同じように、裁判所に抗議をすべきなのに、日本では司法権を国民の人権を守るための砦とするための活動が弱い。東京地検特捜部の部長は検察のエリートで、こういう人たちはワシントンに行き、日本の大使館勤めをし、そこで関係ができます。地検特捜部というのは、日本軍の隠匿物資を摘発するために、GHQがつくったもので今でも関係が深いのです。これらは孫崎享さんの指摘です。鳩山さんも、防衛省や外務省の官僚に足を引っ張られました。米国が要求し、日本がこれに応えるという以上にもっと深いところで結びついています。巧妙にも日本の政府が主体的にこれを選択しているという形をとっています。私たちは、もっと反米闘争を展開すべき。米軍の犯罪は、公務中であれば地位協定があって日本で裁けません。米軍機は海上や地上すれすれで飛ぶ。ドイツや韓国では地位協定の改定を迫っています。奴隷的状態のほうが政権を安定的に運営できるというのは売国奴と一緒です。本来安倍首相は辺野古基地の断念を米国に迫るべきです。」
質問:韓国のような改革は、日本では国から圧力がかかると思うが、韓国ではどうか。
回答:「国からの圧力という話は聞いていません。パク大統領も市民運動を無視できません。東京都は財政が健全で、無償給食、首都大学東京の授業料半額などすぐ可能です。韓国で金がかかるのは開発。福祉のほうが開発より財政負担は少ないけど富裕層からはソウルの改革は評判がよくありません。スーパーマンではなく分厚い市民の運動が支えています。」
●特別報告「生存権裁判の意義」
記念講演の後、特別報告として、神奈川県生活と健康を守る会連合会・事務局長の関美恵子氏が、神奈川で取り組まれている最賃裁判、年金裁判、生存権裁判の意義
とりわけ生活保護基準の改定などに異を唱える生存権裁判の意義について報告。また、裁判の原告も登場して発言しました。
「2013年安倍政権は、生活保護制度始まって以来の生活保護法の改悪と同時に、3回にわたって、総額670億円の生活保護費の削減を行いました。
一人当たり平均6.5%、最大で10%の削減。これは、生活保護受給者の削減を狙ったものです。これに対して、全生連は不服審査請求で闘う方針を決め、
三回で3万人が参加しました。
神奈川でも1回目146人、2回目238人、三回目は275人が不服審査請求をしました。しかし、黒岩知事の回答は「計算は間違っていない」という内容。
厚生労働大臣の回答はまだ来ていない。やはり裁判で闘うしかないということになりました。
神奈川では昨年8月に、10人の原告予定者が名乗りを上げてくれ、励まされました。昨年の11月30日には108人で『支援する会』が立ち上がりました。
弁護団も県内の多くの弁護士事務所から11人の弁護士が弁護団を引き受けてくれました。48人が原告となって提訴することとなりました。
いま、全国25の都道府県で823人の原告が生存権裁判を闘っています。神奈川が25番目に仲間入りが出来たことは感無量です。
この生存権裁判は、生活保護引き下げの取り消しと国家賠償を求める裁判です。神奈川が恵まれているのは、一つは支援団体・25条共闘の存在。もう一つは、
神奈川労連が最低賃金裁判を3年前から闘っており経験があったこと、年金裁判も闘われていて、三つの裁判が連携して闘われています。全国に無いことです。
この会場に原告代表の一人のTさんが来ているので紹介します。」
Tさんの発言
「私は、障害者です。生活保護は好きで受けているわけではありません。10%の引き下げがありました、わずかの金額の引き下げでも私たちには大きな打撃です。
社会福祉の向上をこの裁判で訴えていきたい。長い間の裁判となるが、今後ともご支援をお願いします。」
「この生存権裁判で何を問うのか。ここで朝日訴訟に触れたい。朝日茂さんは結核を患い、1956年に生活保護の申請をしましたが、支給額は余りにも少なく、月600円、1日20円。当時豆腐が一丁8円〜10円でした。これでは生きていけないと、生活保護基準が憲法25条に違反していると裁判を起こしたのです。1960年に一審では勝訴。『生活保護基準は予算の都合で決めるのではなく、健康で文化的な最低限の生活をするに値する金額が予算を支配する』という判決は後の運動にも大きな影響を与えました。裁判闘争では、裁判官、書記官に生活実態を知ってもらうことを重視しました。控訴審は敗訴でしたが、制度・運用の改善が図られ、最高裁でも敗訴となったが、この裁判は大きな意味を持つものです。運動を通じて社会保障が権利であるということが広く国民の中に浸透しました。今、朝日訴訟を大きく上回る規模で生存権裁判がたたかわれています。原告は一人でなく823人。100人の弁護士が生存権裁判を闘っています。大きな変化です。生活保護基準は、個人住民税の非課税基準、最低賃金、就学援助の基準などに連動しています。まさに国民的な問題として裁判を闘っていきます。皆さんも是非裁判への傍聴、支援する会に入会し、ご支援をお願いします。」と結びました。
以上で全体隊は終了し午後は、公務・公共性、環境・まちづくり、子育て・教育、平和・基地、地域経済・産業、社会保障、暮らし、女性の8つの分科会に分かれ、熱心な
話し合いが行われました。
午後の分科会にの詳細は続報とします。
1.民営化、公務労働・公共性分科会
テーマ「安保法制の今後と国民保護神奈川県計画〜地域・自治体がどう組み込まれるか〜」
安保法制の一連の法案は、国民保護法に基づく「国民保護計画」の発動により、地域・自治体を戦争協力体制に組み込むことで「機能」します。
まさに民主主義・憲法破壊であり、自治体や自治体職員のあり方が根本から問われています。地域、自治体職員、指定公共団体等が、戦争協力体制にどのように組み入れられるのか、
我々はどうしていくべきか、現状把握と学習、弁護士、自治体の危機管理担当者、指定公共機関(マスコミ・医師会等)を講師にシンポジウムを行いました。
【報告】
1 戦争立法と国民保護計画/小花知史氏(横浜南法律事務所弁護士)
2 「国民保護 神奈川計画」について(仮題)/倉形洋一氏(神奈川県職労連)
3 指定公共団体の立場から/仲築間卓蔵氏(民放労連OB)
2.環境・まちづくり分科会
シンポジウム:テーマ「自然災害とまちづくり」〜箱根の現状・自然災害への防災対策〜」
東日本大震災をはじめ各地で発生している豪雨による被害等地震や異常気象による自然災害は市民生活に深刻な問題を起こしています。
又、箱根の火山活動は、観光にも影響を与えています。こうした問題について、行政、研究者の報告を聞き、参加者みんなで討論しました。
【報告】
1 箱根における火山活動の現状について/萬年一剛氏(神奈川県温泉地学研究所 主任研究員)
2 土砂災害の危険性と防災対策/間ヶ部健夫氏 (神奈川県砂防海岸課急傾斜地グループリーダー)
3 首都圏における自然災害の危険性と防災対策/矢後保次氏 (神奈川自治体問題研究所副理事長)
4 地域での防災減災対策をどう進めるか/中崎 孝氏(まちづくり協議会会長)
3.子育て・教育分科会
テーマ「子どもの成長・発達、学ぶ権利を保障するために」
子どもの権利条約の批准から20年が過ぎました。この条約に謳われている、成長・発達・学ぶ権利がすべての子どもに保障できるようにするために、
私たち大人はどうしたらよいのでしょうか。困難を抱えた子どもに関わる方々の実践から学び、子どもとどう向き合うことが大切か、
行政に求めることなども話し合いました。
【コーディネーター】
長尾演雄氏(神奈川自治体問題研究所理事長)
4.平和・基地分科会
テーマ「戦争はイヤ!戦争の危険のない神奈川へ〜神奈川を戦争の出撃基地にしないために何ができるか〜
安倍政権は、「集団的自衛権」の名で米軍への支援を「いつでも」「どこでも」「切れ目なく」行い、世界規模でアメリカの戦争に参加することを狙っています。
特定秘密保護法をつくり、政府批判の報道に圧力をかけ、国内での戦争体制つくりのための「国民保護法」も制定、神奈川での体制つくりもすすめられています。
米軍と自衛隊との共同作戦計画もすすめられ、基地の集中する神奈川では戦争がおきれば大きな影響を受けることになります。
今、再び戦争による惨禍を起こさせないために、私達はなにをすべきなのか、自治体はなにをすべきなのかを議論しました。
【講師】
県内の基地の実態と米軍・自衛隊。戦争の危険・平和の可能性/菅沼幹夫氏(神奈川県平和委員会)
5.地域経済・産業分科会
テーマ「小規模基本法、小規模支援法と地域経済活性化の取組」
県内19の自治体で実施されている「住宅リフォーム助成制度」では、厚木市の32倍をはじめ、各自治体で経済波及効果があったと報告されています。
また、昨年新たに「小規模企業振興基本法」「小規模企業支援法」が成立しました。地域経済活性化のために、これらの法律を自治体の施策にどう反映させるか討論。
【報告】
県内中小企業の実態/三浦謙一氏(神商連)
全国での取組報告/芝忠氏(県異業種連携協議会)
小規模基本法・支援法とは/藤田信好氏(全商連)
6.社会保障分科会
テーマ「急激にすすむ高齢者の貧困・自治体の役割」
安陪政権のすすめる「税と社会保障一体改革」では、小泉政権時代の年間2200億円を上回る、社会保障予算の自然増への半額圧縮、5000億円(「骨太方針2016」)が報じられています。すでに年金給付、生活保護給付の連続削減は高齢者に不安を投げかけています。
記憶に新しい「新幹線焼身自殺」、だけでなく熱中症3姉妹死亡事例など急速にすすむ“老人下流化社会”がもたらす悲劇が報道されています。
いま何がおきているかの事例報告とあわせて自治体の役割とはなにかを議論しました。
【報告】
*高齢者貧困と医療での現実/松崎幹雄氏(神奈川県民主医療機関連合会)
*生活保護受給高齢者の貧困の実態/岩崎幸雄氏(神奈川県生活と健康を守る会連合会)
*高齢者福祉の行政窓口から/(横浜市職員)
*生活相談から見た高齢者の実情/中村 攻氏(よこはま健康友の会)
7.暮らし分科会
テーマ「私たちのくらしと個人情報〜マイナンバー制度を考える」
マイナンバー制度は、今年の10月に、個人の番号が配布され、来年の1月から運用が始まるが内容は十分知られていません。
一方、年金受給者の基本情報が流出し、個人情報を活用した消費者被害も起きています。
同時に、健康・医療情報をビッグデータとして集約し産業化する政策が国・県主導で進められています。
制度の概要と個人情報活用の狙いと問題点を学び、主権者の権利擁護の運動に活かしていこう。
【報告】
塚本俊裕氏(横浜市従業員労働組合)
知念 哲氏(神奈川保険医協会)
8.女性分科会
テーマ「同性パートナー制度と地域・自治体」
今話題の同性パートナー制度。
同性パートナー制度が必ずしも終着点ではありませんし、課題も多く残していますが、多様性のある社会を目指す中で、まずは性的マイノリティが自分らしく生きられる
社会になるためのステップアップと言えるでしょう。
今回の分科会で、同性パートナー制度またその先にある同性婚など幅広く学び、議論しました。
【講師】
永野靖氏(弁護士)
2014年に開催した、第42回神奈川自治体学校のもようはこちら
|