神奈川自治体問題研究所



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憲法をいかし、希望ある地域と自治体をめざそう

第47回神奈川自治体学校開催される


 11月4日、横浜市健康福祉センターで第47回神奈川自治体学校が、「憲法をいかし、希望ある地域と自治体をめざそう」をスローガンに開催されました。 午前中の全体会に112人、午後の分科会に122人の参加がありました。
 全体会は、神奈川自治労連委員長の高橋輝雄氏の司会で始まり、学校長の神奈川自治体問題研究所理事長・大須眞治氏があいさつを行いました。
 大須眞治・学校長は次のようにあいさつしました。
 「今年の学校に参加するには、いつもの年よりも特別な困難を乗り越えなければならなかった方も多いのではないかと思います。それは、今年の学校の開校がたまたま台風15号、19号そして21号の直後になってしまったからです。被災のあと片付け、被災者の支援などでお忙しい中、特段のおはからいをいただいて朝はやくから自治体学校においでくださいましたことに、心から感謝いたします。わたしたちもがんばらせてもらうつもりです。
 さて、今回の学校のテーマは「憲法をいかし、希望ある地域と自治体をめざそう」です。この課題の実現に直接かわる憲法の規定は、第25条で、 その条文は「@すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなけれ ばならい」となっています。この実現には、自治体はいうまでもなく、住民の果たす役割も欠かせないと私は思っています。自治体は、住民の実情をていねいに観察し、施策を進めていく ことが重要ではないかと思います。一方、住民は自らの生活の中で生まれた問題を率直に自治体に伝えていく、そのような相互の関係があって、はじめて生き生きとした心のある自治体 行政を実現することができるのではないかと思います。
 今回の台風に際しましても、猛烈な台風が3つもほとんどと切れ目なく住民を襲うなかで、泥と水との長く苦しい命がけの闘いを強いられました。それこそ命がけの日々を過ごしたこと 思います。そのような中で自治体はどのように住民に手を差し伸べ、命を救い上げることができたのか?苦境の中で、住民と自治体との熱い連帯を築く日々であったのではないかと思います。
 2019年11月3日の朝日新聞は「決壊河川過半数浸水想定なし」という表題で台風の問題をとりあげていました。「台風19号で堤防が決壊した71河川のうち半数の36河川で、洪水で水に つかるおそれがある地域を示す“浸水想定区域図”が作られていなかった。いずれも県が管理する中小規模の河川で、浸水想定の対象になっていなかった。住民が的確に避難できなくなる可 能性もあり、専門家は作成の対象を広げるよう求めているが、人手や経費などで課題も残っている。都道府県は中小河川まで住民を守る必要を強調し、そのための財政保障を国がすべき だ」と自治体と国の責務を強調しておりました。
 自治体学校は、本日のこれからのプログラムとしては、午前中は藤田孝典先生の講演と小久保善一さんの特別報告を用意し、午後には7つの分科会。日を改めて23日には財政講座を用意しています。皆様みっちりと勉強して、自治体問題についての一層深い見識をおみやげにお帰りいただければと幸いと思います。

 次に、神奈川自治労連書記長の水野博氏が実行委員長のあいさつを行いました。水野氏は次のようにあいさつしました。
 「10月4日から第200回臨時国会が始まりました。安倍首相は所信表明で改憲論議の推進や全世代型社会保障制度など住民の願いに背を向ける表明を行いました。  さらに、第4次安倍内閣第2次改造においても改憲推進の布陣を整え、7月の参議院選挙で改憲発議に必要な3分の2の議席を割り込んだにもかかわらず「憲法改正を力強く進めていく」 とし、憲法9条に自衛隊を明記して、アメリカと一体に戦争する国づくりを推し進めようとしています。
 また、異常気象による自然災害が多発し、台風15号や19号、10月25日の台風21号による大雨や河川の決壊など住民生活に大きな影響が出ているもとで被災者への支援や災害復旧など、国や自治体のあり方が問われています。
 さらに、横浜では突然のカジノ誘致の表明や補正予算が決定されるなど、依存症や治安の悪化など市民の不安の声を無視した対応が行われています。
 一方、「自治体戦略2040構想」により、AIなどを活用し公務員を削減する「スマート自治体」や「公共私」のプラットホーム・ビルダーとしての「自治体」、さらに都道府県・ 市町村の二層制を「柔軟化」して「圏域単位での行政をスタンダート化」するなど地方自治を大きく変えようとしています。
 こうした情勢の下で、憲法を守り生かす取り組みや地方自治を守る取り組みが重要となっています。この間、自治労連は一貫して自治体労働者の生活と権利を守る課題、 そして仕事を通して住民全体に奉仕する課題の2つを中心に掲げて統一的に運動を進め、すべての職場と地域で憲法と地方自治を語りあい、「憲法をいかし守る」とりくみを進めています。  また、県内では県職労連や横浜市従、鎌倉市職労など労働組合が中心となって自治研集会を開催しています。そして、神奈川自治体学校は神奈川自治労連の自治研集会の位置付けも 持っています。
 本日の自治体学校を機に、地域で住民と自治体労働者との共同を広げ、議会や住民団体も含めて自治体のあり方を問い直し、地域の要求を実現させるため、 一緒に議論をしあい力を合わせていきましょう。

 記念講演を行った、聖学院大学人間福祉学部客員准教授の藤田孝典氏は、次のように話しました。
 生存権・社会権の話から話を始めていきたい。いま、現役・高齢者の別なく格差と貧困が広がっている。顕在的にどれだけ困っている人がいるのか。私は埼玉県で生活に困っている人 たちの相談窓口を開設している。様々な年代の人から年間500件の相談がある。私の専門は「貧困研究」だ。最近、岩波書店から「闘わなければ社会は壊れる」という本を出した。これは後藤道夫先生や木下武夫先生らとの共著だが、要求主体が要求を前面に出して闘っていかなければ、 世の中は良くなっていかない、変わっていかないということを強調した本だ。
 今、無力感や絶望感が特に若い人たちに広がっている。声を上げても変わっていかないのではないかというような、あきらめがある。また、労働運動が弱っているのではないか。 この間、労組の団体交渉などの力が弱くなっている。今日のテーマの憲法を守るということは、不断の努力が必要だ。不断の努力とは権利要求のことだ。現場で起きた問題を現場の問題 にとどめず、社会構造の問題として取り上げ、社会に発信していただきたい。ユーチューブ、SNSツイッター、フェイスブックなどで発信してもらいたい。 運動を継続・継承するためにも若い人たちに発信を続けてもらいたい。今の若い人は、テレビやラジオは見ないし、聞かない。長時間労働でそんな暇がない。スマホでツイッター、 フェイスブックを見ている。
 運動をブラッシュアップしていきたい。若い起業家、社長たちはみな、ツイッター、フェイスブックをやっている。労働組合でもツイッター、フェイスブックを持っているところが あるが、フォロー件数が少ない。発信力が問われるのに、運動の側はここが弱い。

<貧困は資本主義社会の特有の現象>
 私は、貧困というのは資本主義社会特有の問題だと思っている。資本主義社会というのは、人間を大切にしない社会だ。資本主義は人間を労働力としか見ない。長時間働ける男性が 有利になる。それ以外の人間は切り捨てられる。貧困格差は、差別と権利侵害の問題だ。労働力として価値がないとみなされた人たちは路上生活をするようになる。そういうことを是正 する運動・実践が大切だ。私は学生のころからそういった運動をしてきた。弁護士や司法書士の皆さんと一緒に、生活保護の申請を行う運動をしている。日本の生活保護制度は、捕捉率が20%程度であり、制度として機能していないと海外からは評価されている。ネットカフェ暮らしにお若者や、年金が少ない高齢者と一緒の窓口に行って、要求主体にしていく運動をしている。

<自己責任論の克服が運動のカギ>
 しかし、手助けが必要は人の大多数の人は自己責任論が内面化されている。自己責任論は、生活困難の原因や解決策を政府や社会に求めるなという主張だ。ここを打ち破ることが必要 だ。生活保護の窓口が充実したものになるようにしてもらいたい。自治体の生活保護や福祉の窓口に非正規の職員の人が多くなっている。きちんと正規職員の人たちに対応してもらい たい。横浜市は専門職員を採用しているが、神奈川全体ではどうか。埼玉県ではものすごい勢いで非正規雇用が福祉の職場に広がっている。職員の待遇を引き上げる努力を行ってもらい たい。私が生活困難者と一緒に窓口に行くと、「これ以上は無理です。かなり件数が増えて困ります」という相談が始まる。「80世帯が国の基準だが、90ケースを超えて仕事をしてい る。これ以上持ち込まないでくれ」と言われる。税と保険料は累進性が原理として働いている。所得を分配する機能だ。貧しい人に分配する人たちが疲れていては生活保護制度が機能し ていかない。
 憲法25条が具現化できる社会を実現することを目指しているが、台風の被害にあったりや生活できなくなった人を、「政府が助けてあげる必要はない」と考えている人の割合は、日本 38%、アメリカ 28%、イギリス 8%、フランス 8%、ドイツ 7%、中国 9%インド 8% という調査がある。 日本国憲法25条という優れた制度があるにもかかわらず日本は38%だ。自己責任国家のアメリカでさえ28%だ。生活保護バッシング、公務員バッシングが相変わらず激しい。税と保険 料をなるべく払いたくないという人たちが自己責任論を振りまいている。90年代以降、GDPの伸び率が下がり、経済成長が止まってくると、自己責任論が広がって生きた。 資本主義社会が行き詰まりを見せているが、運動側の力が弱くなると獲得すべきものも得られなくなる。

<資本主義は自己責任論を推奨して貧困を拡大させる宿命を帯びている>  カール・マルクスの「資本論」で強調されたことは、労働者は絶対的貧困状態にある。高く労働力を売れないと困窮する。また、労働力を窮迫販売しなければ生きていけない状態にあ る。最低賃金を引き上げないと足の引っ張り合いとなり、暮らしていけない。資本主義は自然破壊、環境を破壊する。ということだ。
 以前は、いわゆる寄せ場、釜ヶ崎、山谷が、低賃金労働者が多く住む貧困地域だった。しかし今は、大企業・上場企業が、ワーキングプアの製造元になっている。
 例えばZOZOTOWNの前澤社長。「月に行きたい」と言って有名になった人で、彼の会社は、莫大は利益を上げているが、従業員3000人のうち2000人が非正規だ。現場の労働者には利益が回っていなかった。シングルマザーのお母さんが「社長は月に行くと言っているが私の給料は何年も上がっていない。なんとかならないか」などの声をあげていた。そうした声を背景に、賃上げの運動、会社の前でビラ配りを向上の前で行うなどの運動を行った。そうしたら、会社のイメージを損なうことがあってはいけないと思ったのだろう、時給1000円の人が大半だったのがすべて1300円になった。シングルマザーのお母さんが、月5万円の賃上げ、年収60万円の賃上げになった。このように、賃金を上げなさいよという運動は大切であり、内部留保を吐き出させるということは可能だ。 昔のイメージで労働組合が強く、会社がもうかっている時代には、要求しないでも賃金が上がったが、今は要求しなければ何も勝ち取れない。労働組合の組織率を高めて、要求主体として運動を強めていくことが必要だ。


<日本の貧困の現状>
 日本の貧困率(相対的貧困率)は15.7%であり、かなり高い。OECD加盟国(34か国)中6番目に高い数字だ。所得にすると、1人世帯 122万円、2人世帯 170万円、3人世帯 211万円、4人世帯 245万円これ未満が貧困ラインだ。努力すれば貧困から抜け出せるというのは不可能で、社会保障の拡充と、賃金の上昇がなければならない。
ナショナルミニマムというのは、国が決めた最低限の基準。これ以下はありえないはずだが、23.3%、約2,973万人の人々が保護基準以下で生活している。生活保護基準は全く高い水準ではない。「年金もらいすぎだ。生活保護もらいすぎだ」というバッシングが起きているが、全くそんなことはない。月収が15万円以下の労働者は当たり前。今年金は6万5千円だ。こういう状況がバッシングを強めている。貧困状態を覆い隠すために、自己責任論はある。年金者組合や民主団体が中心となって、年金裁判、生活保護裁判が行われているが、引き続き頑張っていただきたい。 私は若者から中年に近い年齢だが、親の年金が多ければ若者が助かる。家族が助かる。こうした見方を押し出して、足の引っ張り合いを打破していく必要がある。今の家族はおじいさんおばあさんを助けられなくなっている。
男性の稼働年齢層、15〜64歳、特に20歳、30歳代の貧困率が高くなっている。10個の椅子のうち4個は貧困層用の椅子だ。女性の貧困率も高くなっている。稼働年齢層で貧困が広 がっている原因は労働基準法が守られていないことにある。このことが賃金を切り下げ、ワーキングプアを生み出している。これは政府の責任でもある。かつては稼働年齢層の貧困は  ほとんど問題にならなかった。普通に働いて生活できなければ、もはや資本主義は終わっているということだ。これからオリンピックが終わったら格差と貧困はさらにひどい状況になって いくことが予想される。労働組合はますます重要だ。皆さん前のめりで運動して次世代につないでいってほしい。引き続き活動を続けていってもらいたい。
 高齢者(65歳以上)の貧困率は、19.4%で、高齢者の5人に1人は貧困。これはOECD加盟国(34か国)中、4番目に高い数値だ。さらに単身高齢男性は38.3%、単身高齢女性は 52.3%が貧困。高齢期は誰もが貧困に陥る可能性がある。
 最近2千万円貯金してくださいという話があったが、これなどひどい話だ。政府の責任放棄だが、これを言ってしまった。若い人の中で、「ニーサ」と「イデコ」つまり、個人投資や個人年金の積み立てが流行っている。公務員の中でもこれが広がっている。
公務員や上場企業のOBなど、年金額が多いと思われている高齢者でも、実際の年金額は生活保護基準を下回っている老後は暮らしていけない人が増えている。今後ますますひどくなってくることが予想される。

<国民だれもが下流老人に>
 皆さん現在は中流でも、将来は下流になっていく。下流老人とは生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者のことだが、この下流老人が増えている。生存権が違憲状態の人が増えている。例えば、さいたま市の場合、生活保護基準は12万7000円程度(単身高齢者で、生活扶助+住宅扶助の合計額)で、 これ以下の人はどんどん生活保護を申請してもらいたい。現在、高齢者は3600万人、そのうち下流老人は約700万人から1100万人いると類推され、今後も増える傾向にある。
 私たちの運動の結果、年金生活者支援給付金という制度が実現した。2019年10月から約930万人の低年金高齢者(年間約78万円以下の年金受給者)に対して、 最大で月5千円/年6万円を支給する、というものだ。これは年金者組合などが要求し続けて実現したものだ。対象は1千万人くらいいる。自公政権の下でも、運動が強ければ政策を変 えることができる。この運動を通じて、約3600万人の高齢者のうち、年間78万円以下の人が1千万人いることが明らかになり驚いた。この水準から30年後はさらに30%カットされる。 今30歳代の若者は個人投資や個人年金の積み立てをやっている場合ではない。
 子どもの相対的貧困率は13.9%で高水準にある。17歳以下の子どもの7人に1人、250万人あまりが貧困状態にある。子どもの貧困というのは政治的な言葉である。子どもの貧困とい うのは実は親の貧困だ。労働者の貧困、これが本質だ。ここを改善されないと子どもの貧困は克服されない。
 日本で深刻なのは、母子家庭など「ひとり親世帯」の子どもで、相対的貧困率は50.8%、ひとり親世帯2人に1人の子は貧困だ。母子世帯に限ると、82.7%が「大変苦しい」 「やや苦しい」と回答している。平成23年度全国母子世帯等調査によると、母子家庭の約81%、父子家庭の約91%が就労している。非正規雇用者の割合は女性が圧倒的に多い。 男性は家計の中心という考え方がまだ支配的で、まだ正規の職があり相対的に給与は高いが、それでも若い世代を中心に非正規が広がっている。日本の企業は女性の非正規雇用を低賃金 の手段としてきたが、労働組合もこれを容認してきた。この問題を労働組合の課題として取り組んでもらいたい。
 日本では、企業の利益のうち、労働者の取り分を示す「労働分配率」が低水準にある。ワーキングプア問題の根源はここにある。70年代、80年代は労働運動が強く、労働分配率は、 最大80%を記録した。子供手当、住宅を支給している企業も多かった。90年代以降は、株主が要求を強め、株主と役員報酬に多く配分するようになる。
 2015年度の労働分配率は66.1%で、リーマン・ショック前に企業の利益が膨らんだ07年度(65.8%)以来の低さだ。賃上げや賞与の増加で人件費の総額は増加傾向にあるが、企業の利益が過去最高水準となるなか、分配率は低下している。
2015年度の内部留保は377兆円で前年度比6.6%増。賃金を払わないで、税や保険料も払っていない。寄付もしない。設備投資もあまりしていない。設備投資は地域の経済活性化に大きな影響があるが、これが少ない。これが日本企業の特徴だ。
これに対し、麻生太郎財務相は「もっと労働分配率の比率が高くなってこないとおかしい」と今後の上昇に期待している。(2016年9月2日日経新聞)
 低賃金と長時間労働で、労働者の中に精神疾患の患者が増えている。認知症アルツハイマーよりも神経疾患症、うつ病の人の伸び率が高い。これも過酷な労働環境が反映したものだ。
こうした精神疾患がまた貧困を産んでいる。若い人たちには、どの労働組合であれとりあえず労働組合に入って活動することをぜひ進めていただきたい。労働組合がホームページで発信することが必要だが、開設しても更新が長い期間やられていなかったりしている。インタネットを若者はよく見ている。若い人は社会問題に関心がないのではなく、ネット、メディアを見て関心を寄せる。だからこれを活用することが必要だ。我々は、情報戦略が弱い。新聞や会報を一生懸命出しても読まれていない。700万人の連合の神津会長のツイッターのフォロワーは2000人程度だ。 これからは、非雇用、請負契約型の労働者が増えている。ギグエコノミー。ギグワークと言われている。単発の仕事をこなし、報酬を得る。継続的な従来の雇用関係でなくなっていく中で、賃金や社会保障についてはどうしていったらよいか。一緒に考え政策的に打ち出していくことが必要だ。

<若者の貧困>
 30代前半では4分の1が家賃に消えていく。200万円台の労働者では3分の1から半分が家賃に消えていく。家賃がゼロになったら生活は一気に改善される。日本では住宅は自己責任になっている。基本的に住居は社会的に保証されるべきだ。不動産業界を助けるための政策から、働く若者を支える住宅政策にする。空き家はたくさんある。これをどう活用するかが課題だ。 親と一緒の暮らす若者が増えている。暮らしていけないからだ。学費と住宅が高い国では若者は自立できない。
 川崎刺傷事件では、「50代ひきこもり」と大きく報道されたが、親子関係が悪くても、自活できないで親元を離れられないという今日の実態が背景にある。40歳代で親と同居している国は珍しい。公営住宅、社会住宅がなく市場依存の住宅政策を変えなければならない。元農水事務次官の息子刺殺事件が6月にあった。息子が長期引きこもりで、将来事件を起こすかもしれないと心配した。家族が責任を負うという風土。これも自己責任論の一種だ。 所得と進学率の関係だが、お金がある家庭は進学率が高い。これは韓国、アメリカ、日本ともに共通している。学校の成績も親の年収に比例している。いま、4年制大学を出ないとはじめから格差がある。だから無理してでも大学に行こうとする。しかし低所得の家庭は兄弟全員が4大というわけにはいかない。今の学生は奨学金の返済のためにバイトで忙しい。就職氷河期時代の子息が大学生になっている。いきおい、おじいさんおばあさんに学費を頼っている。 子どもの養育費だけでなく、おじいさん、おばあさんに生活費を頼っている。だいたい毎月1万円から3万円を補填するようになっている。スーパーマーケット、ランドセル、机などを負担している。この原因は国が教育予算を削っているからだ。また企業が賃金を値切っているからだ。 教育、医療、介護、保育、住宅などを順次市場の商品化と切り離していく政策が大切。これらのものを、お金=貯蓄ではなく、社会保障で賄える社会にする。そのためには公営住宅の充実が必要だ。良く落ちる飛行機やトウモロコシを買うのではなく、社会保障の充実させていくことが必要だ。そのため、諦めずに引き続いて頑張っていただきたい。 と、結びました。

 この後、「川崎市宮前区の鷺沼駅前開発と区役所・市民館・図書館移転問題」と題して、神奈川自治体問題研究所川崎支所・小久保善一氏が特別報告を行いました。 小久保氏は概要次のように述べました。
 今、全国的に再開発が盛んに行われている背景には立地適正化計画という国の方針がある。その狙いは人口減少に伴い都市施設を中心部に集約化し、コンパクトな都市をつくっていこうとするもので、中心部は開発を行い周辺部はさびれていく。こうしたことが全国的に展開されている。これから報告する宮前区の計画も立地適正化計画に基づいている。 川崎市は、人口152万の政令指定都市、7区制である。宮前区は1982年に高津区の分区により、誕生した。田園都市線や東名高速道路川崎インター開通とともに市街地整備がされ郊外住宅地として開発された街である。地形は、細長で山坂が多いにも関わらずバス等交通機関の整備が遅れている。人口は分区時の1.5倍に増え、現在は23万人となり、納税額は3.5倍化で市内でも2位と多いにも関わらず、市民館・図書館等文化施設の整備が最も遅れている区だ。 現在の区役所・市民館・図書館・消防署のある場所は区の中央に位置しているが、鷺沼駅は横浜市との市境にある。


<市民をないがしろに進められてきた鷺沼駅前再開発の経緯>
2015年6月:市は、東急電鉄(梶jと包括連携協定を締結し、沿線のまちづくりの協力約束。 2016年3月:鷺沼駅周辺開発が市の総合計画に位置付けられる。 2018年2月:市民に対して「鷺沼駅周辺再編整備に伴う公共機能の検討に関する考え方」を公表し、関係団体等に説明・ヒヤリングを開始した。 2019年2月:区役所・市民館・図書館の移転を決定。 こうした経緯を見ると市の総合計画や都市計画よりも先に、市と東急との包括協定が締結されており、協定に基づき市の都市計画が作成されているようだ。しかも、都市計画では、宮前区の2号再開発地区は、鷺沼と現区役所がある宮前平の2ヶ所とされていたのに、その宮前平から公共公益施設を鷺沼に移転させるということは都市計画にも反するものだ。

<市民の声としては、次のようなものがあった>
 「移転ありきではないか」「何故移転するのか」「築36年の区役 所移転は無駄使いだ」「鷺沼駅周辺は土砂災害警戒区域で災害対策本部の区役所移 転は危険だ」「都市計画の認可権は市長にある、事業者優先でなく区民の立場でやるべきだ」「区民周知10%の状態で決めるな」など、反対する意見が多くだされた。 これに対して、市は「移転するか否かの議論をするものではない」「鷺沼にどのような公共機能が欲しいかの議論をしている」「みなさんのご意見は準備組合にお届けします」等の説明がされ、区民の怒りをかった。 また、公募者による、意見交換会では、「鷺沼駅前にこういう機能が欲しい」という意見が多く、「公共施設を移転させて欲しい」という意見はなかった。「移転すると今の宮前平が衰退するのではないか」「鷺沼に一極化すると区全体の力が落ちるのではないか」「鷺沼と宮前平2つのヘソがあることで魅力が維持できる」「区全体を見すえた検討が必要」「町会未加入者も含めて周知徹底すべき」「区民の対立をさけたい、生活がかかっている」等の意見があった。区民2000人対象の意識アンケートは回収率53%。回答を見ると、区民周知が10%であることが判明。また、宮前平駅から区役所へ行く道は坂道で、バス便が少なく交通不便であるという回答者が6割いた。(少し不満3割含)このことのみが強調され、移転の最大の理由にされている。 市は外部専門家に、宮前平と鷺沼の立地特性とコストに関する基礎調査を依頼した。立地特性では、「鷺沼駅周辺は、土砂災害警戒区域に指定されている」「第2次緊急避難道路がない」「災害時に駅前の交通混雑が予想される」等を挙げ「鷺沼に災 害対策本部となる区役所移転させる場合は、鷺沼と宮前平の2拠点体制として、被災リスクを分散させる」ように提言している。

<区役所・市民館・図書館の移転に反対し鷺沼再開発を考える会の運動>
 会を 2018 年 12 月に設立、「区民の合意なく、現区役所・市民館・図書館を移転はしないでください」の署名を 2,600筆集め(後日 4,000筆)市に陳情したが、共産党議員の賛成のみで不採択になった。 市の方針案に対するパブリックコメントの取り組みでは、会に寄せられた多数の意見に基づき、パブコメ意見書を作成、ホームページも活用しながらパブコメ意見書の提出を市民に呼びかけた。結果 20 日間の短期間に 13,858 通が集まり(全体で17,829 通、23,714 件)記者会見をしながら市に提出。新聞、テレビ等マスコミでも報道され、市民に広く宣伝できた。市の方針案に対するパブリックコメントの取り組みでは、会に寄せられた多数の意見に基づき、パブコメ意見書を作成、ホームページも活用しながらパブコメ意見書の提出を市民に呼びかけた。結果20日間の短期間に13,858通が集まり(全体で17,829通、23,714件)記者会見をしながら市に提出。新聞、テレビ等マスコミでも報道され、市民に広く宣伝できた。

<駅前再開発の概要と問題>
 駅前街区に146m、37階建てビルと北街区に92m、20階建ての2棟の超高層ビルを建設する計画だ。狭い駅前に2棟の超高層ビルが建ち、眺望はなくなり、圧迫感、日照被害、風害、電波障害など環境破壊が心配される。さらにビルの床は、商業は10%程度、マンションは530戸でビルの約80%を占める。駅前の一等地になぜ、多額の税金を投入し、マンションを建てなければならないのか? 東急フレルの裏の市道1本に、バスとタクシー以外の全車の出入口が集中する。だが道路幅の拡張がなく、大渋滞が予想される。
 人口増に見合う、コミニテイ施設の整備予定がない。武蔵小杉の駅周辺再開発では、保育園や小中学校の不足、鉄道の大混雑等大問題が起きていることを反省し、人口増に見合う保育園、学校、福祉施設の整備やラッシュ時の鉄道混雑対策が必要だ。また、現区役所・市民館・図書館の移転で遠方になる宮前平方面(黒川線道路以北)の人達の施設利用にどうマイナス影響を与えるかを調査し、現区役所支所・市民館・図書館の存続が必要だ。 駅前市街地再開発には、多額な税金が投入される。駅前広場や道路整備等の負担金、建設費に対する補助金、ビル床購入代、入居後の修繕や建替え積立金・管理費を入れると莫大な税金投入だ。できた超高層ビルの8割の床(各地の実態)は住宅販売などでデベロッパーの利益になる。 市民が暮らしやすい駅前再開発と宮前区全体の街づくりにこそ税金を使用すべきだ。いったい誰のためのまちづくりか。川崎自治基本条例では市民の権利として、「市政に係わる情報共有、意見提出、提案権」が定められている。条例に基づいた区民参加による区民主体の街づくりが求められている。  
としました。 
   以上で全体会は終了し、午後は7会場で分科会が行われました。

【環境・まちづくり分科会】  報告者:研究所常任理事・中崎孝
 環境・まちづくり分科会は、参加者18名、矢後保次氏があいさつ兼司会進行、基調講演は、県社保協事務局長の根本隆氏が、「超高齢化社会での交通権の保障を求めて」と題して 行いました。
 各地の報告として、一番目の報告者は、年金者組合の萩原剛氏より愛川町で敬老バス(カナチャン手形)の実現や循環バス(コミュニティバス)の路線増発等の運動経験を 報告されました。次に、自治体問題研究所副理事長で、横浜市旭区若葉台団地に居住されている長尾演雄氏より、若葉台団地の再生の取り組みの中で、コミュニティバスの果たしてきた 役割、最後に同じく自治体問題研究所事務局次長で、敬老パス反対の市民運動の先頭に立っている鈴木久夫氏より、横浜市での敬老バス値上げ阻止が何故大切か等の報告をしました。
その後、各地の経験や質問等に移り、活発な議論を展開しました。
基調報告「超高齢化社会交通圏の保障を求めて」根本隆氏(神奈川社保協事務局長)
 基調報告として、これまで分科会で社会保障分野を担当してきた県社保協事務局長の根本さんから、まさに交通権が基本的人権であることを強調する報告がなされた。
根本氏が訴える、交通権の観点は以下の通り。 @交通権とは、「国民の交通する権利」をいい、憲法が保障する移住移転及び職業選択の自由、生存権、幸福追求権、これらを集合した新しい人権であることを提起された。
 そして、交通権が生かされる結果の効用として、新しい概念として、イギリスで発表された概念として「クロスセクターベネフット」という効用を明確化させた。
 この考え方こそ、各自治体当局が常に財政圧迫になるから駄目だという論理に対抗する大変大切な概念であることを強調された。
 公共交通に多額の出費をした。そのことにより、交通利便が向上し、多くの高齢者の皆さんが社会参加するようになり、元気になった。社会全体をとらえると大きな利益を及ぼしている。
 「ある部門でとられた行動(出費)が、他部門に利益(節約)をもたらす」という考え方に基づいて、公共交通が赤字だからだめだということではなく、地域全体、まち全体で交通を とらえることが大切と訴えられた。大変貴重な概念であり、敬老パスの値上げや路線バス、ローカル線の廃止等々すべての運動に役立つ概念であり、記憶に強く刻まれた。
Aそして、このクロスセクターベネフィットの観点を強く実践してきた、長野県木曽町の田中勝己さんが実現したコミュニティバス導入の考え方 「公共交通はまちづくりの土台である。公共交通がしっかりしていないと医療、教育、福祉ががたがたになる」という理念を生かした交通政策をつくる大切さを報告された。
報告―1高齢化社会に向けた地域づくりー若葉台団地の取り組み/長尾演雄氏  自治体問題研究所副理事長・横浜市大名誉教授
 横浜市旭区若葉台団地のまちづくりの現状とその中での、コミュニティバス「わかば号」の取り組みを紹介していただきました。
 まず、この団地の概要だが、昭和54年から入居が開始された神奈川県住宅供給公社が建設した、14階建て、5階建て合計73棟もの分譲住宅と賃貸住宅で構成された団地で、 近年の人口減少と高齢化率の高さが問題となっている。平成18年度16,081人だったものが、平成28年度には14,529人に激減(△2452人)高齢化率に至っては平成29年度46%と 国の27.5%「を大きく超えたものとなっている。そこで、賃貸住宅もあることから、神奈川県住宅供給公社が一部出資して作られている、若葉台まちづくりセンターが中心となって、 区役所とも連携して、郊外部の団地再生のモデルになって、2017年にみらいづくりプランを策定し、人口の呼び戻しの検討、新たな魅力の向上を目指して活動をしている。
 これらの活動の一環として、この団地では、商店街が中心となって出資して、無料のコミュニティバス「わかば号」を平成23年3月14日から団地内循環バスとして走らせている。 12人乗りのマイクロバスで、毎日1日6便走らせており、高齢者の買い物や通院等の足として喜ばれており、また、商店街の活性化にも貢献している。住民たちの住民まちづくりセンター の動きしては、住民の強い要望をもとにして、連合自治会や住宅管理組合協議体などの働きかけで、高齢者向けにエレベーターの止まらない高層階の建物から,各階に止まる賃貸住宅への住み替えの動きなど注目しておきたいとの報告があった。
報告―2 愛川町におけるコミュニティバスの現状と課題/萩原 剛氏(愛川年金者の会事務長)
正直、筆者も保土ヶ谷区の年金者組合に加盟しているが、このような単一の組合が地域の政策実現にかかわり、政策要求をして、交渉し、成果をあげることができているご努力に感銘も し、教訓をどの地域でも学ぶ大切さを実感できたことがなによりの収穫でした。
 氏は、パワーポイントを駆使して、愛川町が、厚木市と相模原市に囲まれた、中山間部に位置し、人口が4万強で、高齢化率は27%位で、今後深刻化してくること、交通アクセスは、 バスだけで、主に小田急の本厚木駅・海老名駅への路線が多く、一部南武線の淵野辺,JR相模線の上溝駅に路線が走っていると詳しく説明した。
 路線バスは、バスが利用しにくい地域の解消と路線バスへの乗り継ぎなど利便性向上を目的に町内循環バスとして、19955年に運行が開始され、2011年から本格運行開始され、運賃100円、6歳未満は無料、マイクロバス10人乗りから35人乗りで、3ルート方面で運行され、1日5便程度で、土日の運行はありません。利用者数は年々増え続け、2018年には3万人を超える人が利用されるようになりました。
 この最大の問題は、季節によっては、町の中心(役場・スーパー等)に行くのに1日ががりとなること、土日もサークル活動や会議等で集まることもあり、土日の運行実現を要望する ことにしました。愛川年金者組合としては、2004年から町との年1回の懇談を実施しており、その中で、路線バスの「カナチャン手形」導入に向けた要望書を提出し、2007年度から 町からの補助7000円を実現させました。路線バスでは役場から半原地域の増便とバスの土日の運行要望をしているところです。
報告―3 横浜市の敬老パスの見直しをめぐる現状と問題/鈴木久夫氏(横浜市の敬老パス負担増を考える連絡会)
鈴木氏から敬老パス料金値上げの不当性や敬老パスの果たす役割等について、報告があった。
筆者も70歳を超えて、敬老パスのお世話になっている身であり、いつも利用しているため、少しの値上げはやむを得ないのではと思っていたが、話を聞いて、そのいい加減さを反省して いるところです。なぜ、敬老パスの値上げに反対するのか。氏は明確に次の点を強調された。
@敬老パスは高齢者が健康で豊かに人間として生きていくために必要な権利であること。
A横浜市も平成23年6月値上げ時に次のような効果を認めている。
a買い物などの経済効果  b街の活性化  c介護予防と健康促進  d引きこもりの抑制と仲間づくり、ボランテチィア活動、社会参加支援  e公共交通機関の利用促進・利用者 促進 f環境保全・道路渋滞回避  g外出に伴う出費の軽減・家計の安定 h高齢者の交通安全免許返納)
B名古屋市では、導入に際し、その経済効果を316億円とし、車利用の抑制効果としてC02削減6500万トンとまで算出している。
これこそが、基調報告にもあった「クロスセクターベネフット」理論そのものであることを確信した。鈴木氏は、さらに全国的な制度事例紹介もし、新潟市、名古屋市、堺市等では 65歳からの支給、所得別に負担額が違うのはどこも一緒だが、低所得者(世帯全体が市民税非課税者)では、名古屋市や京都市、神戸市等が無料に比べ横浜市は3200円と突出し て高い。こんなところにも弱者に厳しい横浜市の姿勢がでている。いずれにせよ、横浜市は12月の「あり方検討会」で値上げを画策しており、現状維持を求める署名5万筆を集めて、 値上げ阻止をすることが急がれると訴えた。
多くの参加者から活発な意見討論で盛り上がる
休憩を挟んで、質疑討論に入ったが、結構予期しない意見が続出し、出席者がそれぞれの意見を交わしながら、これからの活動の参考となったので、以下主だった質疑討論を紹介する。
Q1)年金者組合の平塚支部から出席された方からは、平塚市では、コミュニティバスが1台も走っていない。路線バスだけ。どうしてかわからない。また、歩行者優先の社会にもかかわらず,いまだに、誰も歩かない歩道橋をそのままにして、横断歩道を設置してくれない。どうしたらいいのか。
A1)確かに平塚市に限らず、藤沢市、小田原市、茅ケ崎市等実施していない市も多くあり、コミュニテイバスは山間部の市町村に集中している感はあります。本日、本当は秦野市の コミュニティバス実現のすばらしい経験をしていただきかったのですが、残念ながら、実現できず、次回にお願いしたいと考えています。やはり、坂道等多い市町村にその切実さがある のでないか。使わなくなった歩道橋をそのままにして、あるから横断歩道を設置しない事例は、これまでどの市町村でもあったことですが、近年それを突破する事例も数多く出ています。 バリアフリー法の施行以来、歩道橋設置にはエレベータ設置の義務が出されているし、その費用出費をいやがる自治体が続出し、古い歩道橋で、超寿命化計画の中で更新しない歩道橋も 多く出てきています。それらをチェックして陳情などを行えば、撤去する場合も多いことと思います。
Q2)二俣川でコミュニティバスの実現を目指す活動をしているものですが、今回このようなテーマだったので、参加しました。実現に際し、最大のネックとなっているのが、 バスを走らせるすべての沿線の町内会の同意を住民自らが行わなくてはならず、諦めざるをえなかった。どうしたらいいですか。
A2)横浜市のコミュニティバス実現の相談窓口は、道路局施設課で、横浜市まちづくり条例に基づく支援となっており、その支援の根幹は、住民自身でまちづくりはやってください。 横浜市は5年間は支援しますが,あとは住民自身で管理、運営をしてください。という中身です。これには抜け道があって、同じ条例適用でも、横浜市の何らかの位置づけがされた地域で あれば、何年でも支援をつづけるという手前勝手の手法です。もちろん、一般の主体のまちづくりであれば。横浜市の束縛なしにできるメリットもありますが、ことコミュニティバスに それを当てはめるのは、土台無理で、管理運営を全て住民自身に任せる、沿線住民の合意を得る等いうのは酷といえる。日の出町が東京都が全部支出しているように公的責任をあくまで も要求するスタンスが大切。横浜市南区中里では3カ月間で断念に追い込まれ、住民主体で実現した泉区のEバスも今では神奈中バスになっているなど、維持・継続が住民だけでは困難 なことが浮き彫りとなった。しかし、そんな困難な事業でも何とか維持、継続している地域もあるので、それらを参考にして頑張っていただきたい。
Q3)旭区ひかりが丘小学校が児童減少で、8年前に廃校となった。廃校後も文化・スポーツの拠点や地域交流センター、災害時避難所等で残せと運動している。何かいい方策がないか。
A3)小学校等の廃校後の利用に関しては、県下でも三浦市の高校跡が地域の市民交流施設、横浜市の左近山第1小学校跡が障碍者教育施設、鶴見の工業高校跡地がデイケアセンターになるなど成功事例は多くあります。これらすべての成果は地域住民の運動の成果だと思います。これらの運動に学んで教訓を得てください。災害時の施設要求では、鶴見区の花月園競輪場跡地を災害拠点公園に生まれ変わらせた教訓を学んでください。 討論を終わって、今後ともこの課題が、地域にとって切実な課題であることが再認識された。
参加者からの感想(アンケートから)
@交通問題でも、各地で様々な取り組みをしていること、各地の報告に励まされた。
A交通権に関して再認識できた。
B愛川町の取り組みを支部の参考にしている。
Cコミュニティバスをどう実現するのか学びに来た。今回の報告を参考に粘り強く活動していきたい。
D活発な意見が出てよかった。
E歩道橋の件や敬老パス問題で議論できて良かった。
F今日は目からウロコでした。交通権がこんなにも大事なものだろは気づきませんでした。今まで健康でしたので、当たり前のこととしてとらえていました。高齢化した今本当にわかりました。
G非常に広いテーマでした。様々な取り組みがあり、町での論点の整理のため力になりました。
H中山間部地・交通不便地での経費負担に関しては、地方自治体だけでなく、県の補助金や国の地方交付税の拠出などの見直し等で出せる根拠はあると思った。

など、概ね分科会の報告・議論は好評だったことがあげられる。筆者も同様だったが、交通権に関するありようなり、愛川町等での年金者組合の活動の水準の高さ、若葉台団地の再生のまちづくりの一環としての無料バス、敬老バスの値上げの不当さ等を改めて再確認できたのではないでしょうか。

【子育て・教育分科会】報告者:横浜市従家庭保育福祉員支部 矢後寿恵
 1998年国連子どもの権利委員会は日本の政府に対して、子どもの権利に関する最終所見を出しました。その中で、過度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、余暇、遊びや休息が欠如し、子どもの発達に歪みをきたしていることを指摘されました。2004年、2010年にも同様の趣旨の勧告を受けています。
 今回の子育て・教育分科会では、日本のこのような子どもたちの実態を各分野から出し合い、子育てするとはどういうことなのかを話し合いました。
1.保育の現場より:保問協/辻村久恵さん
1)「新保育所保育指針」について
 2018年4月に改訂された「新保育所保育指針」ですが、その中の「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は驚くような内容になっています。 *自ら健康で安全な生活をつくり・・・
*自分の力で諦めずにやり遂げることで、達成感を味わい・・・
*家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに・・・
  などなど、本来なら家族に守られ、大切にされながら成長し、失敗を繰り返していろいろなものを獲得していくはずの幼児期なのに、 私たちが考えている子どもの姿とはかけ離れたものになっています。
 これは幼稚園と保育園を横並びにさせるために、保育園にも教育を取り入れ、国の望む子どもたちの姿に教育し、管理していこうとする狙いです。
2)保育現場は非常に厳しい状況です。保育士が不足しているので、保育士が学ぶ時間がありません。保育所自体が貧困です。
 企業立など園庭のない保育園が多く、近くに公園があればいいとされています。30人の子どもを2人の保育士が公園に連れていき、 トイレに行かせることもできない現実があります。また、ごみやガラスの破片で危険だし、実際に交通事故も起きています。 ビルの中の保育園では、一日中エアコンの中で過ごし、走ることも禁止です。まさに保育の貧困ではないでしょうか。 こんな中で育っていく子どもたちの将来がどうなるのか心配です。
2.学校教育の現場から:教職員の会/大山さん
 1)横浜はいじめ、不登校の数が全国でダントツのトップです。それはなぜでしょうか?横浜は教員が異常に忙しく、辞めていく教員が多くいます。新人教師が一週間で辞めていってしまいました。それは学校が、自分が考えていた所と全然違ったからです。学校とは子どもと触れ合い、成長させる所だと思っていたのに、事務的な仕事ばかりで子どもたちと触れ合う時間がほとんどありません。
そして、一度辞めて行った人はほとんど戻ってきません。
2)横浜では、4月の時点で担任のいないクラスが55クラスありました。新人を採用してもすぐに辞めていくし、産休や病気で休む人の代わりもいなくて、仕方なく副校長や校長が担任を持つことになります。今の学校はとても忙しくて、心の病にかかって休む人も多くいます。プレッシャーが多いし、どんな人でも病気になるほど忙しいです。
3)不登校が16万人と多くいますが、見えない不登校(かくれ不登校)が増えています。面白くない授業でも勉強するふりをして、実際にはやっていない。勉強はペーパーに書き込むだけのもので、自分で調べたり、研究したりすることがないので、学校嫌い、勉強嫌いの子どもがどんどん増えています。成績のいい子、行儀のいい子ばかり育っていて、創造的な子が育ちません。それが今の学校ではないかと思います。
3.学童保育の現場から:鶴見区学童保育/木村美登里さん
1)キッズクラブが全校展開するようになり、学童保育の子どもの数が減ってきています。午後5時までは全児童、5時以降は学童保育と別れてきています。何が変わってきたかというと、以前はシングルマザーや生活保護家庭、多国籍の子どもたちなどが多かったのが、今はそういう子どもたちは保育料の安いキッズクラブに移って行っています。保育料は高くても1人1人丁寧に見てほしいと望んでいる家庭の子どもが学童保育に来るようになっています。
2)キッズクラブに移って行った子どもの話では、キッズクラブには掟があって、
*靴下を脱がない
*座っている(走ってはいけない)
*けんかをしてはいけない
*砂遊び禁止
*ジャングルジム禁止  などなど
禁止事項が多く、自由がないと言います。
同じ支援員の資格でやっているのに、キッズクラブと学童保育では全く内容が違います。子どもたちの発達が心配です。
3)学童保育では全国で標準の運営指針が作られました。その趣旨は放課後の子どもたちの生活を主体的にすることです。今の子どもたちは学校からとても疲れて帰ってきます。宿題が多くて、学童で宿題をしないと家ではする時間がなく、遊ぶ時間がたっぷりとれないのが現状です。学童保育に帰った子どもたちが疲れて寝転んだり、ごろごろしたりしているのがかわいそうです。授業時間が長くなっているのが原因だと思われます。学校の授業だけでも精一杯で、放課後どうやって自由に遊べるようにするかが課題です。
4.横浜の子どもたちの意見表明から:無料塾/池島正勝さん
 横浜の子どもたちのいろいろな意見表明を聞きました。低学年の子どもたちの「学校へ行きたくない」気持ち。中学年、高学年の荒れたクラスの子どもたちの話やお母さんの状況などを話して頂きました。
5.水田嘉美先生(横浜子どもを守る会)のまとめ
1)子どもの実態
*2018年度 20歳未満の自殺者(全国)2.8%統計史上最悪
*2018年度 いじめ件数 前年度から約13万件増 過去最多 54万件
*年間30日以上欠席した不登校の小中学生16万件増 過去最多 54万件
起立性調節障害とは
  朝起きられない、眠たい、低体温などで11時頃まで学校へ行ける状態にならない子ども。
2)新自由主義のもとでの子どもと学校教育
1)で示した子どもの悲惨な実態はなぜ噴出するのか?
@現代の新自由主義は、グローバル資本(世界的な大資本)の利潤獲得のために、社会生活のあらゆる過程と人間に対して、強力な規範、行動様式、評価基準を押し当て、人格の管理と方向づけの統治技術を緻密化しつつある。
A新自由主義は市場の求める規範と価値に沿って生きることを強制する。価値は自己の内からではなく、市場からの要請として、そして、経済を支配する資本の目的と戦略の側から提示される。また、新自由主義的統治技術によって埋め込まれた資本の利潤増大のための行動規範に添わなければ、社会排除の攻撃にさらされる。異議申し立てすることも、自分の思いを表現することも抑圧される。子どもたちは強力な自己責任の縛りの下で、道徳規範やスタンダードや校則や競争の論理に沿って、必死に生きさせられる。
B新自由主義の登場(新自由主義とは?)
 戦後資本主義経済を支えてきたケインズ主義が後退し、代わって登場したのが新自由主義。
 新自由主義はこれまでの社会構造が国家の肥大化や赤字財政をもたらしたとして「福祉国家」の見直し、構造改革を主張し、規制緩和と民営化によって「小さな政府」を実現し、市場経済の徹底化を主張した。(サッチャー政権、レーガン政権、中曽根政権、安倍政権)この意味で新自由主義は経済的には弱肉強食の市場経済万能主義を、経済的には民主主義の抑圧・形骸化という反動的な性格を持っている。
C子どもの意識を閉じ込める目標管理とPDCAシステム
<PDCA>のマネジメントサイクル/P: p l a n D: d o C: c h e c k A: a c t i o n
 学力テストの成績で生徒と教師の学力目標の達成度を計測し、その結果が教師の人事考課に反映され、給与差別にまで及ばされるという仕組みが具体化された。
 このような評価システムに基づいた激しい学力競争が子どもと教師のストレスを高め、競争的学力の獲得に走らせて、学力を歪んだ一面的なものにし、学ぶことを苦役化している。多くの競争からの脱落者は学習嫌いと自身への絶望感に打ちひしがれる子どもを生み出している。そして、その競争の結果、生存権が保障されない社会的処遇を多くの若者に割り当て、それは学力を高められない個人の「自己責任」であると考えさせてしまう。
3)国連子どもの権利委員会最終所見と課題
権利条約採択30周年、条約批准25周年の今年「最終所見」が報告された。
第1:子どもの「保護」に包括的な政策と戦略をもって取り組むこと。
第2:社会の競争的な環境から「子ども時代と子どもの発達」を守ること。
第3:子どもの意見を聴いてもらえる権利(意見表明権)を子どもの育つ
   すべての場に確保すること。
4)私たちに何が求められているか
@新自由主義のもとで拡大する社会の競争主義的な再編がこども期に与える影響を監視し、何が問題化を丁寧に見定めること。
A日常的に意見表明を可能にするよう大人と子どもの関係を密にして、全ての子どもの意見を汲み取り、表明することを支援する。
B子どもの側に立って、本音を聞きとり、意見を尊重して、当事者や周りの人が社会に対して声を上げること。(アドボカシー)
Cすべての学校教育の機関において、子どもの教育内容として「権利条約」を教えること。同時に、指導者は権利条約の中身を尊重し、日常の教育実践に生かしていくことが望まれる。
D子どもたちに「自分の要求を実現する自由と力」(empowerment エンパワーメント)は問題解決の方法として、自分の中に力を蓄え積極的に自分を作り出す力をつけること。 いくら外からの助力があっても、助けを受けた人がその力を伸ばすことができなければ発展しない。子どもが大人の力を借りながら、自分の要求を実現するために実行的に働きかけられるようになることが大事。
これを実現する条件
@子どもの要求を心の底から理解すること
Aそのことに応答できる大人に力が必要

【平和基地分科会】 報告者:相模原自治体問題研究会・佐藤信夫
「日米地位協定と神奈川の基地」をテーマに開催しました。講師として、新倉康雄氏(原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会事務局長)を招きました。
〈講師の話〉
 神奈川は沖縄に次ぐ基地県で、米兵の犯罪が多発し、くり返される背景には日本にいる米兵の特権を認めた「日米地位協定」がある。
東京湾入口の横須賀には日米軍事基地が置かれ、米海軍艦隊で最も強大な「第七艦隊」の司令部が旗艦ブルーリッジ内に置かている。その主力艦である原子力空母ロナルド・レーガンとその打撃軍が配置され 海上自衛隊と米軍との一体化がすすめられている。さらに神奈川には在日米陸軍司令部の「キャンプ座間」など12か所もの米軍基地が置かれている。
 1977年、厚木基地を離陸したファントムが横浜市緑区に墜落し、2人の幼児が亡くなり、全身やけどを負った母親も4年4ケ月後に亡くなった。ファントムの乗員は脱出し、海上自衛隊のヘリコプターで収容さ れ米軍基地に帰還した。この事件で刑事告訴については墜落の原因となったエンジンが米国に持ち去られたために「起訴に足る証拠がない」ことと、日米地位協定により「第一次裁判権」も捜査権も日本側にないこ とを理由に2人のパイロットは不起訴処分となった。しかし民事訴訟では、地位協定では「米軍人の民事司法権からの完全免除までは規定していない」として米兵といえども民事裁判の被告となり得る、との画期 的な判決を獲得した。
 2006年、横須賀市の繁華街で出勤途中の佐藤好重さんが空母キテイホークの乗組員の米兵に殴り殺される事件が発生した。事件後に佐藤さんの内縁の夫、山崎正則さんは「この事件は米軍基地があるから」 と横浜地裁に国と米軍を相手に損害賠償を求めた訴訟を提起した。横浜地裁は国への請求は棄却したが加害米兵には6500万円の賠償を命じました。米兵は未払いのまま収監されましたが判決は事件が基地外や 公務外であっても米軍上司らの監督責任は認めました。山埼さんは東京高裁に上告するが棄却、最高裁に上告しましたが不受理となりました。
 公務外で事件を起こした米兵本人に支払い能力がない場合、米政府が慰謝料を支払う制度が地位協定にあり、山崎さんは米側に示談を申し入れました。 米側からの慰謝料と確定判決の認定額との差額は、日米特別行動委員会(SACO)の合意に基づいて、日本政府が見舞金の形で肩代わりしました。
 日本に置かれている広大な米軍基地の根拠は日米安保条約第6条で、これに基づいて日米地位協定が結ばれています。安保条約第6条は、日本全国、米軍が望むところはどこでも基地にできるという、世界に例の ない「全土基地方式」をとっています。基地の提供問題などは日米合同委員会で協議することになっていますが、その内容は明らかにされません。さらに、協定第3条では、米軍が「(基地の)設定、運営、警護 及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる」とし、基地の外でも、民間の空港や港湾、道路を自由に使用できる規定などが設けられています。
 これらの日米地位協定の抜本的改定を求める動きが起きています。日本弁護士連合会、全国知事会、沖縄県、全国7道県、161市町村議会での意見書、葉山町、座間市、二宮町、逗子市、鎌倉市などで意見書 や決議、提言等が出されています。
〈参加者の発言・交流〉
・地上イージスの配備を秋田市新屋と山口県萩市に配備すると伝えられ、住宅密集地が人の住めない場所になるのではないか、攻撃目標になるのではないか、との不安が強まっている。
・米軍相模補給廠のミサイル司令部について2018年9月に米軍から政府に申し入れ、相模原市へも通告があり10月16日から駐留を始めた。日本を守るは口実で、@インド、太平洋地域でのミサイル攻撃から米本 土を防衛する。A軍事作戦を指揮する作戦司令部の防御やアジア・太平洋地域に前進配備されている米軍戦力と装備をミサイル攻撃から守る。Bミサイル部隊の訓練や装備の準備、必要な部隊の派遣などが主要な 任務。
・日米安保条約については82%が必要と考えている現実もあり、この壁をどう破るかが課題。
・憲法公布の前に天皇がマッカーサーを訪問したのが間違い。沖縄の問題も天皇制とサンフランシスコ条約から起因しているのではないか。
・米軍の車両更新の費用の無料や、基地被害についてなどあまりに知らされていない。核、気候、貧困などについても日本では目も口もふさがれている。
・琉球、韓国などに対する日本の加害の構図は未だに引き継がれている。
・鎌倉では日米地位協定の見直しを求める意見書が採択された。本質的には安保条約があるが、安保条約廃止では理解が得られない。@「平和都市宣言」を前面に押し出した。A厚木基地の低空飛行で市民からの 苦情が寄せられている。B安保に賛成でも市民が困っているこの状態は放置できない。ということで請願なら議員が説明できて有利だった。
・沖縄の問題を含め、国民が真剣にきちんと向き合っていない。過去、日本人が何をしてきたのか、アジアに対する蔑視の裏返しとして盲目的なのはどうしてなのか?
・全国知事会が全会一致で日米地位協定の見直しを決めたことは大きなこと。それぞれの自治体でも被害が出ているのは現実である。憲法学者の意見も聞いて、憲法をどう生かしていくかの闘いが重要である。
・基地のことを知らない人にわかってもらう努力が必要。米軍がもっとも恐れた男カメジローの言葉、非暴力こそ最も強い力、を教訓に、実態に迫って語ることが必要である。

【暮らし分科会】報告者:神奈川県消費者行政研究会 佐伯 義郎 
 1 企画の視点
今回の神奈川自治体学校くらし分科会は、「健康は自己責任」の風潮が強まっており、医療費の本人負担を増やす「社会保障の見直し」が政府の方針とし検討されている状況を踏まえて、初めて「健康問題」に焦点をあてた分科会を企画しました。
 医療・健康問題の実態を知るための報告・問題提起として、神奈川民医連事務局長の松崎幹雄さんと横浜市職員(港北区役所の健康づくり担当)の大塚明子さんにお願いしました。
 市民の取組み報告としては、@くらしの視点から、消費者の立場から見た健康づくり問題として神奈川県消費者行政研究会の惣田智子さんに、A自主的な健康づくりと行政の関わりについて神奈川県年金者組合横浜旭支部の平山実さんに報告をお願いしました。
2 参加者の特徴
分科会の参加者は14名でした。例年の分科会と変わった特徴は、複数の現職議員、医療関係者が参加されたことです。
3 問題提起と取組報告の概要
 @ 民医連神奈川事務局長の松崎幹雄さんは、「全日本民医連が行った健康調査」結果を活用した報告でした。民医連の調査では、「若年2型糖尿病」の指標数値は世帯年収の低い方が高い(200万円以下は57.4%、600万円以上は10.6%)。虫歯(口腔内崩壊)の調査では「女子高生、一人親、家族の世話、生活の苦しさで通院できず、28本中17本が虫歯」事例が紹介されました。こうした健康悪化の原因は、当事者個人の責任だけとは言えない。正規か非正規化かの違い、一人親など家庭環境など影響が見えるのではないか。また「自分の周りに気に掛けてくれる人がいない30.1%」(石川県民医連調査)という地域社会の実情もある。「健康は自己責任」と決めつけるのではなく、今の社会状況の反映、国の政策の表れと言えるのではないか。とパワーポイントを使用した報告で、画像が示され「健康格差」の実態と社会的要因が生々しく知らされました。
 まとめとして、「健康保険料の引き下げ」、「窓口負担金の引き下げ」、「生活保障の抜本的改善、最低賃金の引上げ」、「自治体職員の体制確保と相談窓口の充実」を提起された。
 A 横浜市職員の大塚明子さんの報告からは、地方自治体の「保健・衛生業務」役割、内容が国の政策により変わってきたことを知らされました。
 従来は、成人病対策(市民の成人病検診事業など)が重点だったが、「個人個人の生活習慣の積み重ねが病気(糖尿病など)に繋がる」という政府の考え方により「生活習慣病」対策が重点になった。市民の健康診断は市による直接事業から医療機関への委託に変わっている。さらに国が「健康増進法」を制定した。こうした中で市民による「健康づくり推進制度」つくり市の政策「健康づくり日本一」を目指すキャンペーン始め市民の自発的活動としての健康づくりを推進することが健康づくり担当の仕事となっている。住民の健康に直接かかわるじょう業務が減ることで、それぞれの専門職員の配置も兼務などが起きている。と報告されました。
 B 年金者組合の平山実さんは、県が「介護予防体操に取組む団体の立ち上げに器具・指導員の派遣をする」との呼びかけたことに「本来は県が主体的に行うべき」との意見を持ちましたが、県福祉事業団に登録し、指導員の派遣を受けた。県からの指導員は事業期間で終了したが、年金者組合として毎月1回の介介護予防体操を続けている、との活動報告でした。
 C 県消費者行政研究会の惣田さんは、「健康食品をめぐる消費者問題の実態」を「神奈川消費生活相談から見た実態」や「健康食品に関する注意情報(国民生活センター)」などの資料で報告をされました。
 消費者からの苦情相談(平成30年神奈川県消費相生活相談データ集)では、「健康食品関係」は上位5位1、012件であり年代別では80歳以上から?歳未満まで全世代にわたっていることが紹介されました。
4 参加者からの声は
●虫歯になってもお金が無くて歯医者に行けず、歯が抜け落ちたなんて驚いた。
●年収や正規・非正規で健康上の問題数値が異なっている。これを見ると『健康は個人の問題』とは言えないと思う。
●市民健康診断が外部委託になって、健診結果情報が役所に直ぐには入らないって知らなかった。
●各区にいた専門職が欠員で複数区の掛け持ちだなんて知らなかった。
●行政任せや注文だけでなく自主的に健康づくりしてますね。
●健康食品で結構消費者から苦情でていますね。

【女性行政分科会】 報告者:分科会運営委員・小島八重子
 今回から「女性分科会」との名称から「女性行政分科会」とすることになりました。住民と自治体職員が連携して女性行政を充実させていくことが、これから求められているとの観点からです。
今年のテーマを「自治体と統計…ジェンダーの視点で統計をみる…」にしたのは、昨年改訂されたかながわ男女共同参画プラン第4次の「重点的に取り組むべき事項」の中に「男女差を明らかにし、的確な施策に つなげられるよう、ジェンダー統計の充実を図るとともに、データの見える化により、施策の進捗状況を適切に進行管理する必要があります」とプランの中に初めて、「ジェンダー統計」という言葉が入ったこと からです。
 統計の不正な改ざん問題が深刻化し、国家に都合のよいようにゆがめられている今だからこそ、住民や自治体職員との連携で統計をジェンダーの視点で正しく分析し、各自治体の男女共同参画プラン等を地域の 女性の実態に即した実効性あるものにしていくすることが重要です。
 ジェンダー統計作成のノウハウを知り、行政施策にジェンダーの視点を盛り込むにはどのようにしていけばよいのかを考える場にと、住民と一緒にジェンダー統計にとりくんでいる伊藤陽一さん (法政大学名誉教授)を講師に学習を行いました。参加者は、自治体職員、労組女性部、女性団体から24人が参加しました。
 伊藤陽一さんは、政府統計が頻繁に偽造されている危機的状況を、厚労省の毎月勤労統計統計調査での統計法を無視し、低い賃金上昇率を発表し、雇用保険金の過少給付に利用するなどの事例をあげ、公的機関 での不正を指摘。公正な統計の責任ある作成と公表を国際基準(適合性、公正および平等なアクセス、…説明責任と透明性…)にすべく、品質を高めていく必要を強調しました。
ジェンダー統計とジェンダー問題については、国連の定義は、「国連マニュアル」の説明では「ジェンダー統計は、生活のすべての分野での女性と男性の状況における相違と不平等を十分に反映する統計と定義される。ジェンダー統計は以下の特徴に合計として定義される。すなわち、(a) データは、第一のそして全体的な分類として、性別に収集され、示される;(b) データは、ジェンダー問題を反映する;(c) データは、生活のすべての分野での女性と男性の状況における相違と不平等を十分に反映する概念と定義に基づく;そして(d) データの収集方法は、ジェンダーバイアス(偏り)を持ち込むステレオタイプ(既成概念)や社会的・文化的要因を考慮する」とあるが、伊藤さんは、ジェンダー統計は個人の性別問題だけではなく、国連の定義を超え、ジェンダー問題にかかわる企業、期間や政策・制度等の数(例えば、保育や介護、転勤などサポート)も重要な対象になること。さらに、ジェンダー問題を認識(認定)し、解決策・計画を立案し、その実践計画を評価し、活用される統計であることが必要と話しました。  また、今後は、LGBTの問題などが社会問題化する中で、「社会性別統計である」との理解は考えていく必要があるのではとの指摘がされました。
 現在、ジェンダー格差指数(GGI)については、世界経済フォーラムの世界ジェンダー格差指数(GGGI:Global Gender Gap Index)と国連開発計画(UNDP)のジェンダー不平等指数 (Gender Inequality Index:GII)があります。伊藤さんは、UNDPのGIIは男女格差のみをとりあげて指数化したものではなく、国民1人当たり所得によってその国の豊かさをとりこんでいる。 このため、低所得国は仮にあらゆる分野で男女平等であっても上位ランクにつくことはない。このGIIの批判の上に、GGGIが提唱された。伊藤もまたGII登場と同時に批判した。
 これを発表している世界経済フォーラム自体は超国家企業の影響が強く、その政治的機能については注意すべきである。GGGIもまた万全とはいえないが、GIIよりは良いと考えて使用している、とのことです。 地方での統計作成は、都道府県、政令指定都市、特別区、大市、中小市、町村と下になるほど、統計データの入手が乏しくなること、統計作成を行う体制が限られていることになること、行政区を超えた住民の生活圏の問題や諸政策の制定の権限などが異なるため、地方の権限の及ぶ範囲内に限定されてしまうなどの困難な問題があるとのことです。 そのような中、地方でのジェンダー統計活動を進めていくには、その地方の男女共同参画部署、男女共同参画(あるいは女性)センターと統計担当部署とその職員・担当者、さらには教育関係部署、都道府県-市区町村のカウンターパート、そして関心ある住民・住民団体、等の相互関係がどうなっているか、そして具体的なジェンダー統計活動を担当する主体、および活動予算の問題と、住民が参加して進められることが望ましく、「ジェンダー統計能力」を高め、自立性、持続性を持つ人材グループの育成していくことの必要性が話されました。 神奈川県では、県の男女共同参画審議会の9期第3回の議事録で、第4次男女共同参画推進プランの進捗状況の評価の論議の記録がHPに公開されている。 そこでは、ジェンダー統計の重要性の指摘があり、また進捗状況の評価に関しても、事務局の統計の提示の仕方への注文や、定められた目標との枠内でであるが、それなりの妥当な論議をしている、といえる。 こういった議事が行われている男女共同参画会議等の存在、一定の詳細度をもった議事録の公開、を評価し、プラン作成時のパブコメ、各審議会の議論への県民からの意見も、妥当な意見であればおそらく注目 されるだろうから、県民サイドが、男女共同参画計画、進捗評価、さらに審議会等の論議に深い関心を持ち、要請・要求を持ち込むことは必要と思われる。 また、審議会委員の構成も問われる。審議会委員が、地方自治体の警察や町内会代表などで占められて、学識・経験者や広い住民各層 (労働、環境関係等の代表的市民運動他)を代表する委員が少ないまま、 論議の形骸化が進み、さらには市民等の代表を減らす傾向すら進みはじめていまいかとの危惧を持つので、この点での後退がないように見守らなければならない、と話しました。
伊藤さんのお話の後、参加者で意見交換を行いました。
〇ジェンダー・ギャップ指数にはGGGIやGllがあるが、信頼度はどの程度あるのか。
〇市民レベルでのジェンダー統計作成の取り組みなど、岡山市以外にもあるのか。
〇国連のジェンダー統計の定義の中に生活のすべての分野での女性と男性の相違とあるが、どのような分野を考えればよいか。
〇統計は民主主義の基本。ハローワークでの派遣労働者調査報告など非正規労働(派遣)が行っている。
〇県民ニーズ調査項目の中に男女共同参画の設問は、10項目しか入らない。項目へどのように意見を反映させることができるのか。
〇雇用形態が変化してきている中、男女のパートを比較しても意味があるのか。
〇審議会の女性参画の目標は30%ではなく、50%(男女構成比)にすべきである。 〇プラン改定などのパブコメ募集期間が非常に短い。大学で学生にパブコメを出させた(授業として)。審議会の中で、若い人の意見が多いと話題になった。
〇鎌倉市民の意識調査では、男性に性別役割分業意識が強い。長時間労働で市の女性管理職は2人、しかも独身である。働き方改革が必要。
〇ジェンダーは難しいととらえている人が多い。新婦人で行った女性議員のアンケートで、セクハラの実態が明らかに。
〇統計資料など可視化されていることは理解できる。が、通勤時間の長さ、M字カーブなど出され、是正をというが、なかなか改善されない。
〇国の窓口の非正規職員だが、住民からの統計不正問題のクレームにさらされた。
〇県の統計業務が、本庁組織から出先の統計センターになった。職員も削減されている。などの意見や感想が出されました。
 今回はじめてジェンダー統計問題をとりあげましたが、「そもそもジェンダー統計とはなにか」「統計データをどのように集めればよいのか」「住民目線でジェンダー統計を読み解き、プランにどのように反映させればよいのか」などへの理解をもっと深める必要があります。今後もこの問題を深めていきたいと思いました。 なお、後日伊藤陽一さんから参加者の質問や意見をとりいれた、レジメの補完と質問に対するご丁寧な解説が届きました。関心のある方は、ご一報いただければ、お送りします。
連絡先:小島八重子080−1148−7334 yaechan1@jcom.home.ne.jp

【楽しく学ぶ地方財政講座】
●まちの財政を身近なものに〜「まちの財政」はだれのもの?しくみや用語に親しみ、住民力、議員力、職員力をアップしよう〜 
日時:11月23日(土)10:00〜
会場:横浜市健康福祉総合センター8階会議室
講師:神奈川自治体問題研究所副理事長・内山正徳氏で開催しました。
地方財政講座は、まちの財政を講義と討論を通じて身近なものにする講座として定着しています。
 午前中は、基本的な地方財政の仕組みや財政用語などについてについて学び、午後は決算カードを見ながら、自分のまちの財政状況について、 手を動かして確かめる作業を行いました。
また、原発がある自治体、基地がある自治体、ふるさと納税で、多額の寄付金収入がある自治体の財政がどのように、決算資料で現れるのかということについても確認することができました。
 参加者からは、次のような感想が寄せられました。
○あらためて、注目するポイントを示していただき財政をとらえる事が出来ました。さらに深めていきたいと思います。
○何回か参加させていますが。なかなか身につかない状況です。また参加させていただきます。
○財政の基本がわからなかったので、少し不安が解消されました。実際問題として、例えば「国保への一般財政からの繰り入れを要求する場合、 財源はここを使用(削ればよいでしょう)」とういう分析はどのようにどのようにされているのか実践的なKNOWHOWも教えてほしい。
○わかりやすい説明でよかったです。この次のステップアップした講義も受けてみたいです
○コストパーフォマンスに優れて充実した講義でした。
○わかりやすく意味があり、大変勉強になった。
歳入・歳出の金額を見る機会は何度かあり、無駄にお金を称していると思った時もありましたが、支払い区分が変わったりするなど理由が財政以外にもあると知り、背景をいろいろ知りたいと思いました。
○何回か参加させていただいていますが、毎年やらないと忘れてしまっていることもあるので、今回も参加させていただいて何となく昨年教えていただいたことを思いだしながら、また理解が深まったと思います。ありがとうございます。
○今日一日ですべてを理解するのは、とても無理です。が、財政分析の敷居を低くし、何を調べればよいのか、それがわかってくれば、どこがわからないのかもわかってくるかもしれません。なんの資料を見たら良いのかすらわからなかったのと、数字を見る事すら拒否反応すらありましたが、導入部がわかってきただけでも違ってきました。数字だけで街をすべて判断できませんが、財政は大きな目安の一つであり、これが理解できると大きいと思います。
 次回は年1回の講座だけでなく、地域に出向いて各地域の自治地の財政分析に挑戦する講座を行おうと計画しています。

2018年に開催した、第46回神奈川自治体学校のもようはこちら
2017年に開催した、第45回神奈川自治体学校のもようはこちら
2016年に開催した、第44回神奈川自治体学校のもようはこちら
2015年に開催した、第43回神奈川自治体学校のもようはこちら
2014年に開催した、第42回神奈川自治体学校のもようはこちら

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2020年1月6日更新