神奈川自治体問題研究所



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第42回神奈川自治体学校 成功裏に終了

 11月15日/「かながわ労働プラザ」

テーマ:「今こそ私たちの出番、戦争しない国、憲法がいきる地域と自治体を」

 11月15日、第42回神奈川自治体学校が、神奈川労働プラザで開催されました。参加者は午前中の全体会、午後の分科会合わせて、184人でした。 解散総選挙が間近かに行われるという情勢の元で、今年の自治体学校のメインスローガン、「今こそ私たちの出番、戦争しない国、憲法がいきる地域と自治体を」が、 まさしく現実味を帯びてきた自治体学校でした。

長尾学校長  午前中の全体会は、神奈川自治労連委員長・水野 博さんの司会で始まり、学校長の長尾演雄さん(横浜市立大学名誉教授・神奈川自治体問題研究所理事長)が、 要旨以下のとおり開校のあいさつをしました。
 「自治体学校は、20数年前から“参加者全員で教え合い学び合う”学校を目指してきた。今回の全体会は講師の先生をお呼びし、講演を聞くというあり方を変えた。 住民が尊重され、住民一人ひとりが生き生きと暮らせる地域と自治体を、自分たちの手でつくっていくという強い想いを参加者全員で共有できるような学校にしたい。  神奈川には全国的にも先進的な事例になるような、住民運動が多様に展開されている。今年の全体会では、わたくしたちの身近なところで展開されている住民の運動から学び合い、 交流し合う、リレートーク形式にした。想いを共有し、本気に決意すればできるんだ、という学び方をしたい。
 市民運動に見て取れる変化、新しい社会運動の発展という点で新しい変化がある。反原発の運動当事者がが、山本太郎さん、吉良よし子さんを支持するという動きだ。  しかし、原発の怖さを体験した地域でも、選挙となると、脱原発よりも生活問題が多くの住民の最大の関心事になっていて、とにかく原発がなくなると食えなくなるという、 原発依存構造の前に選挙では、負けてしまうという結果を、わたくしたちは経験したばかりだ。そこで、直接民主主義的な諸運動が間接民主主義、議会制民主主義の回路になるためには、どのような条件が必要なのか考えてみたいと思っている。
全体会  もう一つはまさに自治体問題研究所の出番、ということだ。『人口減少、自治体消滅』論に安倍政権は敏感に反応し、地方創生担当大臣をつくり、 『まち、ひと、しごと創生本部を』を立ち上げた。そして、地方創生関連法案を成立させるという動きをつくりだした。地方の活性化、地域の再生は、 政府主導で地方を引き回すようなやり方では、不可能であることは、立証済みだ。これは、来年の統一地方選挙への対応の必要からであることは言うまでもないが、 しかしいたずらに警戒するだけでなく、今回のこの動きを、わたくしたちのまちづくり、地域活性化のための研究・活動の前進・促進のきっかけにすべきだろうと考えている。 堂々と生産的な論争を展開し、住民の多数派を形成しながら、地域づくり、まちづくりに邁進したい。今年の学校は、例年とは少し違っていたが、しっかり考える機会になった、参加してよかった、と思える学校になることを期待します。」

高橋実行委員長 続いて実行委員長の高橋輝雄・神奈川自治労連書記長が挨拶。
「神奈川自治体学校は、神奈川自治労連の自治研集会として位置づけている。 10月30日に国家公務員の賃金引下げ違憲訴訟の判決があった。 その中で、国会の多数で決めた事だから問題はないという姿勢で貫かれている。 しかし、国会の現状を見ると議会の機能が不全状態になっていると感じざるを得ない。こうした状況を変えていくことが必要。 この自治体に住んで良かったと言えるような自治体建設を進めていきたい。」 と決意を述べました。


● リレートーク「私たちは、戦争しない国、憲法がいきる地域と自治体をめざす」

リレートク

 全体会では、「私たちは、戦争しない国、憲法がいきる地域と自治体をめざす」と題して、リレートークを行いました。 司会・コーディネーターは渡部俊雄・研究所事務局長と鈴木久夫・同事務局次長が行いました。
 はじめに「原発ゼロ、自然再生エネルギーを目指す」川崎市民の運動を、川崎合同法律事務所弁護士・川岸卓哉氏がプロモーションビデオを交えて説明しました。
ビデオ映像 ビデオでは次のように訴えています。「原発事故によって、福島ではふるさとの自然、平穏な暮らしが破壊されました。海、山、空気、水が原発事故で排出された放射性物質によって 汚染され、被ばくにより、ここ川崎でも命と健康が脅かされ続けています。
 これまでの日本の電力には、発電による利益を一部の企業が独占するという構造的な問題があり、命やくらしより経済が優先されてきました。
 これは、経済成長の名のもとに、かつて川崎でも起こった大気汚染公害とも共通する、繰り返されてきた環境破壊の歴史です。 私たちは危険な原発を必要としない未来をつくるためには、この負の連鎖を断ち切り、大企業による大規模一極集中型ではなく、 地産地消・地域分散型での自然エネルギーによる発電の普及が必要です。そこで、私たちは市民を主体としたエネルギー構造を目指して、 川崎で自然エネルギーによる電気を生み出し、市民の輪を広げていこうと決意しました。 川岸卓哉氏 市民発電を多く普及させることによって、既存のエネルギー供給体制を変革していくことを目指します。これは、市民による、市民のためのエネルギー革命です。」  川岸さんは、この運動に参加している人たちは、「職業もこれまでの市民運動の経験も実に様々で、広いネットワークでつながっている。
 また、この運動は電力を住民が取り戻すことで、住民自治につながっている。」と強調しました。

菅沼幹夫氏  続いて、「空の主権と神奈川の基地」と題して、神奈川県平和委員会事務局次長の・菅沼幹夫さんが報告しました。 菅沼さんは、空の主権が ないがしろにされている実態を次のように告発しました。
「1.日本の政府が日本の空を米軍がどのような飛行・訓練ルートを設定しているか知らない。国民から「明らかにせよ」と言われても、米軍に回答を求める考えはない。 平然と主権を放棄する姿勢に愕然とするばかり。
2.米軍は「公共の安全に妥当な考慮を払って活動」しているかが問題。オスプレイの飛行訓練がことごとく「日米合意」を無視している。 この間の沖縄、厚木、富士演習場での訓練・飛行で明らか。 しかし、これでは空の最低限の「安全」さえ確保できない。米軍自身も安全な訓練空域の提供が必要である。これを保障しているのが自衛隊である。 自衛隊は、唯一本土上空に2か所の高高度・低高度訓練空域が重なる所を持つ。そしてその空域は横田ラプコン、岩国ラプコンと呼ばれる米軍管制エリアなのである。 このように米軍と自衛隊が一体となって、米軍が思うがままに日本の空を支配しているのが実態である。
3.国の責任において、関係自治体や住民に事前に情報提供を行うことが大切。 事前にオスプレイ等米軍機の飛行訓練に関する「フライトプラン」を関係自治体へ開示することは、 ドクターヘリや、防災ヘリの飛行の安全航行を確保する意味からも「フライトプラン」の自治体への開示は極めて重要。 自治体とともに、日本の空を「軍事優先」「米軍優先」でなく、「国内法にもとづく空の安全」を取り戻すことが求められている」。
このように、国とともに、自治体の役割と責任を強調しました。

土志田栄子氏  続いて、「教育委員会制度、教科書問題」について、教育委員会を傍聴する会・土志田栄子さんが概要次のように述べました。
「全国の育鵬社教科書採択は4%・そのうち60%は横浜市立中学校で採択されている。横浜だけでなく、藤沢や平塚の中学校でも採用されている。 自民党の靖国派と言われている人たちは2011年に向けて、教育を良くする会などの団体をつくり、教育委員会や議員たちに対する働きかけを強めてきた。その手法は、次のとおり。
第1に審議会答申に縛られない、教委自身が教科書の調査研究ができる環境整備。無記名投票の実施。採択地区を教育委員会単位にするなどの、 教育委員会の権限と責任で採択できる環境を整える。
第2に教育基本法や学習指導要領改正の趣旨を踏まえた採択が出来る環境を整える。
第3に首長への支援要請、議会への請願陳情、教科書展示会への参加とアンケート提出、教育委員会への意見書、要望書の提出など 教育基本法や学習指導要領改正の趣旨に最もふさわしい教科書の採択を働きかける。
 さらに、教育委員会制度が改悪されて、教育の政治的中立性が危うくなっている。2015年度は中学校教科書採択が、新「教育長」のもとで初めて行われることになる。
戦争をしない国をめざすためにも、次の行動が求められている。
 (1)県下の全域に「育鵬社の教科書を採択させない」会を網の目のように作る。  (2)採択に関して改善要求を市長、教育委員会に出していく。       (3)教育委員会の傍聴を続けよう。  (4)育鵬社の教科書の内容の学習会を網の目のように広げる。  (5)県下どこも安心できない状況。情報をしっかりつかみ、素早い対応をしていこう。」

小松哲也氏  リレートークの最後は、「今、自治体が危ない」と題して、鎌倉市職労現業評議会書記長・小松哲也さんが報告しました。
小松さんは、「鎌倉市の職員の賃金改定交渉で、労使が合意した内容を、市議会の多数の議員の賛成で変更されてしまったという、前代未聞の出来事が起きてしまった。 いま、労働委員会や、裁判所への提訴などの法的な措置を考えている。
 また、鎌倉市当局が進めている、学校給食の民間委託は、実は偽装請負であり、当局が市民を安心させるために持ち出している次の委託理由、
@学校給食の運営は、これまで通り教育委員会が責任を持って行う。 A栄養士の管理・指導のもと安全の確保は徹底。定期的な健康診断や検便を実施し安全衛生管理に万全を期す。 B調理方法や手順等は、栄養士が直接指示。 C出来上がった給食は、栄養士が確認、場合によっては、手直しを行う。 D食物アレルギー対応については、保護者と担任・栄養士・養護教諭・学校長が最善の方法を検討し対応。
これらはすべて、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)違反であり、学校給食は直営でしか行えないことを自ら認めている。
 地方財政の問題では、住民生活を守るべき自治体の機能は年々低下し、住民生活を守ることが困難になってきている。 自治体の人件費自体が事業費と同じように住民サービスそのものであるという認識を広く住民と共有することを含め、 不要不急の予算を住民本位の予算に組み替えるとともに、地方財政を拡充することが必要。」と強調しました。

安部栄子氏  会場からは、ユーコープ労組の安部栄子さんが、最低賃金裁判を闘っている経験を通して、今の労働者が置かれている実態と、最低賃金1,000円を実現する意義、運動への支援と参加を呼びかけました。
 この後、会場からの質問への回答と報告者の再発言があり、最後に司会の渡部研究所事務局長から「今日は素晴らしい報告があった。 憲法を地域や自治体の行政に生かすという思いを共有するネットワークを広げ、同じ思いの議員さんや首長さんを生み出す力を付けて行こう。 そして今日参加した私たちがまず第一歩を踏み出そう。」と呼びかけて全体会を終えました。


午後からは分科会が行われました。その中のいくつかを紹介します。
公務労働・公共性、民営化分科会
民営化、公共性分科会 「自治体は市民を守れるのか〜民営化や賃金、非正規雇用問題などを考える」をテーマに開催しました。今年は、民営化や非正規の問題に切り込む予定でしたが、 報告者の都合が合わなくなったため、@国公労連「賃下げ違憲訴訟」から何を学ぶか、A自治体労働者に労働基本権は認められないのか!?〜鎌倉の現状から の二つの報告を受け、 議論しました。
 議論は、議会にはどこまで権限があるのか、議員の質が落ちているのでは無いかなど、様々な発言があり、誰も聞いたことが無い事態であるだけに、 様々に質問や意見が交わされました。報告の他に、図書館の民営化反対の運動に取り組んでいる市民から、県内の民営化の実態や情報を寄せてほしいとの発言があり、 参加者がそれぞれの自治体の実態を報告し合いました。


地域経済・産業分科会
地域経済・産業分科会  地域経済・産業分科会は、自治体の職員、業者団体,建設組合の事務局、議員団事務局などが参加して開催されました。
 はじめに、全国商工団体連合会運動政策局事務局の藤田信好さんから、「グローバルに対抗する循環型地域づくりで地域振興を」と題して、 1アベノミクス下での小企業の現状、2小企業重視にシフトした中小企業政策、3グローバル競争に左右されない循環型地域づくりへの挑戦、の3点について細かく報告が行われ、 その後神奈川県異業種連携協議会専務理事の芝さんから、中小企業振興条例の局面について報告が行われ、論議を行いました。
 藤田氏の報告の中では、アベノミクスの三つの矢が打ち出されたが、中小業者・企業の実態は大変厳しい状況下におかれていることを、三つの矢に沿って統計資料を使って 説明が行われるとともに、消費税8%の影響を転嫁できない実態、税・社会保障の滞納の増加と横行する強権的な徴収の実態が報告され、中小業者の実情が浮き彫りになりました。 また、アメリカの小企業法、フランスの個人事業主制度、EUの小企業憲章とSBA小企業議定書の例にもとづき小企業重視が世界の潮流であることも報告されました。  芝さんからは中小企業振興条例の局面と題して、条例の状況や今後制定される予定の川崎市の作り運動の状況や課題などについて報告されました。
 2名の報告のあと、最初に報告についての質問を受けたあと、自治体の職員、中小企業、建設業者の立場から報告の内容を深める立場から状況など実体や今後何が必要なのか、 何が問題なのか参加者の皆さんから意見を出してもらい、議論を行いました。
 参加者からの意見では、改めて地域経済の振興にとって中小企業・業者の役割が非常に重要であること、全国各地で制定されてきている「地域経済振興条例」や「中小企業振興条例」の制定が必要であることの認識が深まった。また取分け条例の制定運動の取り組みや条例がある自治体での活用を進めていくことの必要性が語られ、今後、更に継続して地域経済の振興についての調査研究の継続の必要性が確認され自治体学校の地域経済・産業分科会を終わった。


  平和・基地分科会
平和・基地分科会  平和・基地分科会は、「集団的自衛権と基地の町〜戦争をさせない国にするために自治体は何ができるか」をテーマに、神奈川県平和委員会の菅沼幹夫さんの講義をもとに 熱心な討論が行われました。
 菅沼さんの講義は、スライド、パワーポイントを駆使して、日米戦争体制構築の歴史が詳細に語られ、報告者と参加者が一体となり和やかな中にも真剣で熱心な議論をしました。  特に、暴走安倍政権をも利用する形で、小泉政権以来の米国の対日要求が着々と進められていること、3・11以降顕著なのが防災訓練に名を借りた米軍の、住民の民生、 財産のあらゆる戦争総動員体制構築が自治体・医療機関を巻き込む形で進められていることだということが明らかにされました。
しかもその中で、欠陥機オスプレイを自衛隊にまで持たせようとし、日本の自衛隊はそれを当たり前のように導入しようとしています。また、世論調査では、昨年と比べ改憲反対が増え、読売調査ですら、集団的自衛権閣議決定への批判が多いのです。  安倍政権が12月10日施行を強行しようとしている秘密保護法廃止に向けた取組についても論議しました。
 市民連絡会の運動実態の発言もありました。国会議員アンケートの結果、国会職員に対しすでに実施されている人権無視の秘密取扱いの適性検査 (過去10年間の精神科受信の有無、カルテチェックの強要等)、国会内に秘密取扱い者のための秘密設置工事のことなどです。菅沼さんの報告のファイルを、神奈川自治体問題研究所として広く提供すること、研究所としても、平和委員会としても、平和や基地に関する出前講座も実施していくことが確認されました。


  暮らし分科会
くらし分科会  くらし分科会は、「消費者の視点から見た 食に関わる現在の問題を考える」をテーマに開催しました。コーディネーターは、大須眞治氏(中央大学名誉教授)。 報告者は、天笠啓祐氏(市民バイオテクノロジーじょう情報室代表)、中田悦子氏(新日本婦人の会港南支部)が来ていただきました。
 天笠さんは、「偽装はなぜ繰り返し起きるのか。輸入冷凍商品で問題が繰り返し起きている。合成肉など技術の広がりもある。安かろう悪かろうの世界になっている。 市民の力は『表示をよく見る、知ること、監視すること、忘れないこと』だ。 「米国産トウモロコシ(88%が遺伝子組み換え)は家畜飼料だけでなくコーンスターチ・異性化糖(清涼飲料水の甘味料など)・加工でん粉などで(日本に)入っている。 外国産は製造過程が不明。表示が簡素化され一括表示からは読み取れない。」など問題点と市民の運動の視点を中国餃子やマクドナルドの肉問題などの具体的事例を挙げて くわしく報告されました。
 中田さんは、「家計簿を60年つけています」と話し。「消費税が上がって食べるものが変わった。価格が安定している卵を食べている。 消費税は3か月で68000円増えた。年金生活の私は、これ以上税金があがると生活できない」と報告。
 学校給食調理員さんは、「3.11原発事故から食材の検査が細かくなっている。魚は冷凍もの、外国産になっている。物価の値上がりで子どもの好きなゼリーも30グラムから20にしている。」と実態を報告。中学校給食実現に取組む方は、「(家庭の所得)格差が進む中で中学校給食は大切。センター方式でなく、1校に1栄養士がいる方がアレルギー対策にもいい」と発言。 県の保健福祉事務所の衛生監視に携わる方は、「毎日、組をつくって見まわっている。『安い物にはわけがある』はある意味で真実。O157は繰り返されているが調査は『川上』まで届いていない。学校給食も全て加熱になる。『高くても安全な国産を』など消費者側の覚悟がないと(食の安全・安心は)いかない と行政の実態を報告。
 意見交換では、神奈川県が進めている「健康産業」育成のための「従業員の健康データの集約と活用が具体化される」などの報告もありました。
 意見交換のまとめに、天笠さんは、「運動に特効薬はない。一人一人、着実に(理解者を)増やして行くしかない。身近な所から」と指摘されました。
 中田さんは、「家計簿は自分の歴史です。気楽につけメモを加えると日記を見る様な楽しみになる」と話されました。
コーディネーターの大須先生が「国内産は(安全が)守られていると思っていたがその常識では行かない事態だと知った。自分たちが基礎的データを持つことが必要。会計簿はそれです」とまとめ、分科会を終了しました。 今回の分科会は、研究者、消費者団体、女性団体、運動団体、議員、自治体職員(現役複数)など幅広い参加でした。
 


  社会保障分科会
社会保障分科会  社会保障分科会では自公政権が進める医療・介護改悪に焦点を当て、「医療・介護総合推進法と、どうなる今後の医療・介護」と題する学習とシンポジウムを開きました。
 学習講師は横浜市社保協の阿部事務局長(県社保協事務局次長)が務め、社会保障プログラム法や社会保障制度改革推進法に触れ、徹底した公費の削減で国民に負担増を押し付け、社会保障分野に新たな営利産業・市場を作り出すことに狙いがあると解明。団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に焦点を当て医療費や介護給付費を5兆円規模で抑制するため、医療では在宅での看取りを4割に増やし、外来患者を5%削減し、202万床必要と見込まれる病床を159万床に抑制すること、介護では施設入所者を30万人抑制し、要介護認定数を3%削減すると共に8割を在宅に追い込むことなどを説明しました。 要支援の介護保険外しに対応する新総合事業を来年から始める横浜市の事例も示し、まさに川上から川下に流れるように、医療から介護へ、介護から市場・ボランティアへと流し、 川下にも留まれない人は海に流れて遭難(行方不明認知症高齢者、介護殺人・介護心中、孤独死等)させられると警鐘を鳴らしました。
 続いてシンポジウムに移り、県職労連・杉田書記長、県社保協・佐々木事務局長、福祉保育労・佐々木書記次長の3名がシンポジストを務め、最初に杉田さんが神奈川の医療実態について報告。 人口10万人当たりの病院・診療所数、病床数、医師数など神奈川県の医療指標は全国水準以下(一般病院数47位、一般病床数46位、医師数39位、看護師数47位など)であり、 県内11ある二次医療圏の中で6つが基準病床数を満たしていないにも関わらず、国の改悪(病床機能報告制度とそれに基づく地域医療ビジョンの策定)でさらに病床が削減される恐れが あること、小児科は平成2年をピークに減少しており、周産期医療では出生数は減少傾向で全国を上回る人口減少が予測されるが低体重児が増加していることなどが指摘されました。
 県社保協の佐々木さんは2017年度実施予定の国保都道府県単位化について報告し、国保の財政運営責任を市町村から県に移管するに留まらず、国保法で社会保障と規定される国保制度の中に 医療費抑制と徴収強化の仕組みを組み込んで変質させるものだと説明。狙いは医療費抑制にあり、顔が見えない保険者では機会的対応(資格証交付、強権的差押え)が横行する恐れがあり、市町村が国保会計に入れている法定外繰入が廃止されれば保険料は県内一人平均16800円以上の負担増となることも強調。国保は国民皆保険制度の土台であり、「払える保険料」であること、保険証1枚で「何時でも何処でも誰でも必要な医療が受けられる」ことが重要だと結びました。
 福祉保育労の佐々木さんは、福祉労働者の人材確保と処遇改善の必要性について報告。介護士を例に、政府は2025年までに100万人にすると言っているがなぜ人がいないのかと問い、全産業より賃金は約10万円も低く離職率も高い(16.6%)からで、労働基準法違反が横行していると告発。この間の処遇改善交付金は2年で終わり、介護処遇改善加算が創設されたが効果は薄いと指摘。厚労省の福祉人材確保対策検討会は資格制度やキャリアアップ制度を推進しようとしているが、「福祉労働者はキャリアアップで部長や社長になりたくて仕事をしていない」と批判。 准保育士、子育て支援員制度、介護分野への外国人技能実習生導入など、専門性を軽視する人材確保の動きを批判しました。
 結びに、公的責任での処遇改善、職員配置基準の改善や正規雇用の拡大、専門性にふさわしい資格制度の確立などの必要性を強調しました。 参加者は19名と少数でしたが、行政からの参加も2名あり、質疑で問題点を深めました。

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2015年1月8日更新