神奈川自治体問題研究所



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危機の時代の地域と自治体ー第48回神奈川自治体学校


第48回神奈川自治体学校は「危機の時代の地域と自治体」をテーマに、横浜市健康福祉センターを会場にして、11月1日は全体会と分科会が、10月24日と11月15日には地方財政講座が開催されました。参加者は、11月1日の全体会に163人、分科会に131人、地方財政講座に2日間で26人が参加しました。コロナ禍の中で実行委員会が2か月遅れで始まり、会場の利用についても人数制限等がある中で、延べ320人の参加者がありました。
 全体会の冒頭、学校長の大須眞治理事長が、次のとおり開校のあいさつをしました。

「この1年間で一番大きな問題は、新型コロナウイルスとの戦いではないか。医療関係の方を中心にいろいろ犠牲を払いながらなんとかやってくれたと思います。ただこの戦い方を見ると、私としてちょっと気になることがあります。コロナとの戦いというのは人類ということで考えると、決して初めての戦いではなかったのです。
 第一次大戦の時にスペイン風邪というのが流行ったそうで、このような世界的な流行の経験があったにもかかわらず、我々は最初の戦いのように戦わなければならなかった。前の経験が十分記録されてこなかったと思います。我々はコロナとの戦いの正確な記録を後世に残して、微力ながらもこれを克服していくことが人類の力だと思います。
菅政権が最初にやったことは学術会議の会員候補6人の任命拒否問題でありまして、本日はこれとも関わりがある、前川さんの講演があります。地域に持ち帰って皆さんの力にしていただければと思います。今日の自治体学校全体は非常に内容豊かな学校になると思います。充分学校でお話し合いをしていただきたいと思います」。

次に実行委員長のあいさつを水野博・神奈川自治労連書記長が行いました。

「安倍政治を継承する、として誕生した菅首相は、これからの国のあり方としてまず自助ありき、これを強調してこれまで以上に自己責任論を強調する。そうしたもとで、公助である政治の責任を回避させようとしています。しかし新型コロナ危機で明らかになったように、利益第一主義の新自由主義に基づく政治から国民生活のあらゆる分野での公務公共サービスを拡充させる、こうした社会と政治への転換これが求められているのではないでしょうか。
また地方においても住民の命と暮らしを最優先にする地方政治が必要です。異常気象による自然災害あるいは台風による大雨や河川の決壊など住民生活に大きな影響が出ているもとで被災者への支援、あるいは災害復旧などコロナ対策と合わせて、国や自治体のあり方が問われていると思います。
一方、自治体戦略2040構想により、AIを活用し公務員を削減するスマート自治体や公共私のプラットフォームビルダーとしての自治体、さらに都道府県や市町村の二層化を柔軟化して圏域単位としての行政をスタンダード化するというコロナ禍を利用して地方自治の変質を加速させています。こうした状況の下で憲法を守り生かす取り組みや地方自治を守る取り組みが大変重要だと考えています。
本日の自治体学校を機に地域で住民と自治体労働者の共同を広げ、議会や住民団体も含めてこのコロナ禍における自治体のあり方などを問い直し、地域の要求を実現させるために一緒に議論しながら力を合わせていきたいと考えています」。

●記念講演 「安倍・菅政権における政と官」
講師:前川喜平氏(元文部科学事務次官、現代教育行政研究会代表)
 記念講演は、「安倍・菅政権における政と官」と題して、元文部科学事務次官・前川喜平さんが行いました。前川さんは安倍・菅政権下での政治と官僚をめぐる問題を中心に、日本の現在直面している様々な問題について以下のように話しました。
 「菅政権になって国民の自由に対する侵害ということが露骨に行われるようになっていると思います。日本学術会議会員任命拒否というのは、あからさまな学問の自由に対する侵害であると私は思います。その前に、これはもう明白な法律違反ですね。日本学術会議法という法律に明らかに違反しております。学術会議法というのは極めて明確に政権からの独立性、自律性というのを規定しております。まず「学術会議は内閣総理大臣の所轄とする」と書いてありますけども、「所轄」という言葉は、面倒は見るけど口は出さないってことです。会員を誰にするかという、「選考」というのは日本学術会議自身がやるんだって書いてあるわけです。ですから総理大臣には選考の権限がないわけです。その選考したものを日本学術会議が推薦するわけですけども「推薦」というのは事実上の任命権である。というのは、「基づいて」という言葉が表しているわけです。内閣総理大臣は日本学術会議の「推薦」に「基づいて」任命しなきゃいけないわけです。この「基づいて」という法律法令用語はその推薦された通りに、という風に読む。「基づいて」という法令用語はいろんな法令に出てきますけれども、一番有名なのは、憲法6条にですね、天皇は国会の指名に「基づいて」内閣総理大臣を任命すると書いてあります。内閣総理大臣の任命権者は天皇です。じゃあその任命権は実質的な任命権なのかと、つまり拒否できるのかと。天皇は国政に関与する権能を持たないわけですから。だから「基づいて」任命するとなっていて、国会の指名通りにしなきゃいけないわけです。
 要するにこういった日本学術会議法の条文をちゃんと読めば、これは誰が考えたって内閣法制局のどの人が考えても、これは内閣総理大臣には実質的な任命権はない。したがって拒否権はないと言わなければならない。
 この日本学術会議法の解釈を明らかに変更しているんですけども、今の内閣法制局は歯止めにならない。2014年に集団的自衛権が憲法上認められるという見解を出した頃からもう内閣法制局は政権の言いなりになっているわけで、元々は内閣から一定の独立性を持っていて、内閣の組織ではあるけれども自立性、独立性をもって法令解釈やら憲法解釈をしてきた組織だったわけですけども、まあその独自性も完全に失われていると思います。
 これは日本学術会議という、学問の自由を守る砦のような組織ですね。それを壊したわけです。この日本学術会議という組織は独立性、自立性を法律上保障されているにも関わらずそれを毀損した。砦を壊したわけですから砦で守られているその大事なものが犯されているわけですね。その大事なものは何かと言うと学問の自由です。つまり防波堤で守られている、住民の生命、安全が防波堤が壊れたことによって侵害されるのと同じですね。この学問の自由という防波堤あるいは砦となっている組織が壊されたことによって、それが守っている学問の自由が侵害される。そしてこの6人の方の任命拒否というのがですね、どういう理由なのかというのが明らかにされていないわけですけども、どう考えてもこの6人の方が政府の方針を批判したと、政府のこれまでやってきた安保法であるとか共謀罪法であるとか特定秘密保護法であるとかという違憲性の高い立法政策に対して批判した。これが理由であることはもう言われなくても明白ですね。私の経験から言って先ほど申し上げた文化功労者選考審議会という審議会の委員の任命を拒否した時の理由はやはり政権批判だった。
これは科学者だけの問題ではなくて日本国全体に関わってくる問題で、この学問の自由を侵害するというのはいずれ様々な分野での様々な自由が侵害される、その出発になるだろうと思います。もう出発点どころか既にほかでは始まっているわけですね。去年の愛知トリエンナーレはそうでした。愛知トリエンナーレの問題は、表現の自由に対する国家権力による侵害であると言わざるを得ないですし、それから去年の参議院選挙の時に安倍首相が街頭演説していたらヤジを飛ばした人が不当に排除されましたね。ですからもう市民の自由はどんどん奪われ始めているわけで、その過程においてこの学問の自由への侵害が起こっていると言うべきだろうと思います。
 民主主義から独裁制が生まれるって事は実は古今東西たくさんあったんです。日本人はまだ経験していませんけれども、一番それを痛恨の極みとして経験しているのはドイツ国民ですね。ワイマール憲法という極めて民主的な憲法を持っていたにも関わらずその中から正当な選挙を経て政権を獲得したのはナチスで、そのナチスがどんどん強くなっていって、全権委任法というワイマール憲法を骨抜きにするような法律を作ってしまってですね、ついに独裁政治を作ってしまった。民主主義は独裁を生む危険があるんだということを知っておく必要がある。今、だんだんそれに近づいてきている。自由というのは放っておくと奪われるということです。これは憲法97条の中に書いてあります。「この憲法が保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果である」と、人類がずっと努力してきたからこの今の自由があるんだということで、その努力が必要だったんだということで、その裏返しでこれから先のことについては憲法12条が書いている。「憲法が保障する自由及び権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなきゃならない」と。つまり自由を守る努力をしないと奪われるよという話ですね。今その瀬戸際になっていると私は思います。
 安倍政権、菅政権は国政を私物化してきたわけで、加計学園問題、森友学園問題、桜を見る会などみんなそうです。明らかな私物化です。官邸主導というのは政治主導の、その醜い形、政治主導の一種であることは間違いないですけども、間違った政治主導だと思います。もともと国政においても地方政治においても政治家も役人も含めて、公務員は全体の奉仕者である、これは憲法15条が言っていること、憲法15条第2項ですね、「すべて公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と書いてございます。ここでいう公務員というのは選挙で選ばれる公務員、つまり市議会議員だとか、市長だとかという人も含めて、国会議員だとか、内閣総理大臣だとかも含めて、公務員と言っているわけで、公務員試験で選ばれる公務員のことだけではありません。特別職の公務員も含めた公務員はすべて全体の奉仕者なんだと、お友達のための政治をしてはいけないのは当然のことです。それを、一部の奉仕者というわけですけども、今の政治はもういたるところ一部の奉仕者だらけになっているわけですね。同じように公務員に対して憲法が求めているのは、憲法を守れということですね。憲法99条で、これは天皇から書き始めていますね、「天皇及び摂政、国務大臣国会議員裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書いている。天皇から始まっている。天皇は公務員とは言いませんけど、公務をしているという点では広い意味では公務員かもしれません。この中で一番真面目に憲法を守ってきたのは天皇かなという気がします。特に前の天皇はほんと真面目に一生懸命憲法1条にいう、日本国及び日本国民統合の象徴として何をしたらいいんだろうと一生懸命考えて行動していたと思います。それは憲法をちゃんと守る、憲法の精神を自分自身が体現する事だと。それが、例えば平和とか自由とかそれを自分として示すということが、象徴としての役割なんだろうと、そんなふうに考えていたんじゃなかろうかなと思いますね。
 私、政治主導は正しいと思います。政治に従うのが行政だというのは当然だと思うんです。政治家つまり市長だとか市議会議員だとか、国会議員だとかという人たちは、国民や住民の直接選挙で選ばれるわけですから。明らかにその国民や住民の代表ですからそちらの方が権威を持つということは当然です。その下で役人は仕事をすると。しかしながらこの政治家というのは往々にして先ほど申し上げたようにお友達のために仕事する。一部の奉仕者になりがちである。自分のために金を作ってくれる人、票を集めてくれる人。そういう人のために仕事をするという風になってしまうんですよね。政治家の中でも一番質の悪い政治家というのは次の選挙しか考えてないわけで、選挙が終わったとたんに次の選挙のことを考えている。そういう政治家に対して役人と言われる人達、官僚という人たちは、政治家にないものを持っているわけであってですね、それは知識とか経験とか、あるいは現場の情報とか長い間に培われた専門性とか、それから政治的中立性、それから公平性ですね、一部の奉仕者にならない全体の奉仕者になるという、こういう傾向は政治家よりも官僚の方が強く持っていると。そういう官僚がいることによって政治家が一部の利益に走ることを抑制するという、そういう関係があると思います。そういう意味で政と官の間には緊張関係がなければいけないと思うんですね。

 私が38年間公務員をやっていた中で、常に心していたのは、憲法15条や99条で求められている、憲法が求めている公務員として仕事をするとこれは当然のこととして考えてきたわけですけども。と同時にですね、またその前川喜平という私自身は国家公務員の仕事をしているけれども、その前に一個人であり一国民であると。その意識は失うまいと思っていたわけですね。だからこそ安保法制反対のデモに出かけて行ったりしたわけですけども。つまり個人の尊厳とか国民主権という憲法の基本的な原理がありますけども、その中で役人である前に一個人であり、役人である前に一国民である、そういう意識は失うまいと思ってきた。非常に大事なことだと思います。むしろこの意識を持っているからこその役人としての仕事の中で人権を侵害してはいけない、個人の尊厳をあくまでも尊重しなきゃいけないという意識が生まれますし、それから一国民という意識があれば、そこの国民に対する責任感ってことが生まれてくるということで、私は文部科学省の部下や後輩達にも役人である前に、一個人であり一国民であることを忘れないようにしなさい、人間としての自分の魂を失うべきでなない、失ってはいけない。魂を売るなと、一時的に貸してもいいが、決して売るなと、一時的に貸してもいいが、後で返してもらえと、言ってきた。やりたくない仕事をさせられるということはあるんですよ。魂は貸したけれども取り戻すということを、繰り返してきたわけです。そういう風に政治のもとで仕事するんだけれども、しかし一国民、あるいは地方自治であれば一住民であるという意識は失ってはいけないと思うんですね。
 役人と政治家の関係について言うと、議院内閣制の下における国政よりも、大統領制である一人の首長のもとにある地方自治の方がより政治に左右されやすい部分があると思います。一人の首長さんの意向でもう振り回されると、今大阪市なんかも明らかにそうですけれども、そういうことが起きる。そういう時にその政治家と役人の関係どうあるべきかというのはなかなか難しいとろこです。その政治家の下で仕事をしている役人としては、どうしたってご無理ごもっともですね。従わざるをえないという場合はあると思うんですよね。一方で役人はですね、政治家の事をバカにしきっているという事多いわけです。私なども、どうしても尊敬できない政治家がたくさんいるわけでね。本当もう馬鹿じゃないの、馬鹿だろうと思わざるを得ない人はたくさんいるわけです。その代表者に対しても出来るだけものの道理をわかってもらうということが必要だということだと思います。
 ただあるべき政と官の関係をどんどんぶち壊してきたのがこの安倍・菅政権だと思うんですね。それはもう官邸の権力の集中、官邸主導の政治というものの中でその官僚が先ほど申し上げたように下僕化、私兵化されてきた。その中心となった組織は、皆さんもご承知の通り内閣人事局ですけども。この内閣人事局を通じて官房長官が権限を握ったわけですね。官房長官がうんと言わないと人事が進まないということが起きたわけで、これは霞ヶ関の審議官以上700人ぐらいの人事を一手に官邸が握ってしまったわけす。任命権が移ってわけではないんですね。各省の公務員の任命権は依然として各省の大臣が持っているわけですけども、ただそれをその各省の大臣が行う幹部人事に対して承認を与える権限を官房長官が握っている。承認権というのは承認しないと言った途端にから拒否権になるわけですね。その拒否権というのはそれを何度も何度も拒否権を行使すると実質的任命権に移ってきてしまいます。学術会議についても同じ事を狙っていると思うんですね。実は官僚人事についてはまったくもう完全にそうなっているわけです。本来は承認権であるものが実質的任命権になってしまっている。それを菅官房長官のもとでお膳立てをしてきたのはその官房副長官である杉田さんという人で、杉田さんに様々な情報を与えてきたのは内閣情報調査室だったり、内閣人事局もそうですけども、そうやって人事を牛耳ってきた。日本の官僚組織は、元々は官僚組織の中での自立性を持っていたんですね。役人の人事は役人の中で行われてきた。それが完全に政治の支配のもとに入ってしまって、アメリカの政府機構に近くなってきた。アメリカの政府機関の公務員というのはポリティカルアポイントメントと言って、政権が変わるたびに各省の幹部がガラッと変わるんですね。それに近づいていると思います。各省の独自性が失われて、官邸の指示で各省が動くという関係が出来ています。

 今の菅政権はそういうことが起きているわけで、ちょっとでも菅さんの意見に合わないことを言うと左遷されると、最近になってやっと前の自治税務局長だった平島さんという方が発言するようになっていますけど、この平島さんという人が左遷されたという話ではもう霞ヶ関では有名な話です。ふるさと納税という菅さんが大好きな制度があるんですね。このふるさと納税をすすめていくと、これは金持ち優遇税制ですよと、金持ちだけが得をする。そして地方税制度をものすごくゆがめている。本来入るべき住民税収入が入らなくなるわけですから。こういうこういうのは愚かな政策なんだと、続けるべきではないという、まっとうな役人が官房長官に進言したら、お前何を言うかと飛ばされてしまった。本来事務次官になってもおかしくなかった人が、自治税務局長という主要ポストから自治大学校の校長という地方公務員の研修施設の長のポストに追いやられるということが起きている。こういうのを見ていたらともかく官邸には逆らえない、特に菅さんには逆らえないという風に霞ヶ関の役人はみんなそう思うわけです。ですからもう無理が通れば道理が引っ込むということが起きてしまう。そういう中で様々な間違った政策がどんどん通ってしまうということが起きるわけで、特にこの新型コロナウイルス対策で行われた政策の中にはとんちんかんと言うか、場当たり的で、ほとんど意味のないことがたくさんあったんですね。「アベノマスク」なんかもその最たるもので、そのために500億円を使ったんですね。これも本当にも何もかもですね、どぶに金を捨てているようなものですね。一方でPCR検査が進まない。このPCR検査こそ本当に既得権益を打破してやるべき事だと思うんですけどもそれができていない。本当に規制改革やる気あるのかと言いたいぐらいですけども。
 私の関心から言えば、全国一斉休校です。全国一斉休校というのは、失政とか悪政を通り越して人災だと思います。こんなことやる必要なかったんです。休校が必要だった学校というのはいくつかあったと思います。しかし、どう考えたって全国で一斉に休校にする必要性は全くなかったと思います。これは官邸の暴走だと言ってよいと思います。すくなくとも教職員から子供にうつさないようにすると、それから3密を避けるという意味で、できるところから少人数学級を始めていくということが必要だと思います。そういうことをせずに学校の休校を長引かせたと、これは本当にもう間違った政策だったと思います。
   最後に菅政権が安倍政権とどう違うか。あの基本的に同じです。元々安倍政権が安倍・菅政権だったわけでこの政権の権力を維持拡大する機能役割を果たしていたのは菅さんですから菅さんがいなかったら安倍政権こんなに続かなかったと思うんですね。ですからこの本質は同じです。安倍・菅政権から菅・菅政権なっただけであって、いま菅さんは今内閣総理大臣ですけども内閣総理大臣やりつつ官房長官も引き続きやっているようなもんですよね。これまでの官僚の中では安倍側近官僚と、菅側近官僚の間の確執みたいなものがあったわけですけど、それがなくなった。全部菅側近官僚だけになった。だからどうしましょうねって話。もう政権交代しかないんですよ。ということで終わらせたいと思います。

【会場からの質問に答えて】
 一つは「少人数学級について」のご質問がありましたね。日本の学校の学級規模が国際的に見て大きすぎるという事はもう明らかなことなのですね。私も文部科学省で仕事している間、何とか少人数学級を進めていきたいという気持ちはありましたけれども、旧民主党政権の下でどこまで行けるかなと思ったら小学校1年生で終わっちゃったんですね。1年生だけ35人にしてそこで終わってしまっています。国としては。国の基準これは標準法で「標準」と言っていますけど、国の標準は小学校1年生だけ35人、小学校2年生以上は40人のままですけども、これはなんとかまずは全て35人にし、30人にするということが必要だと思います。そのためには教職員の定数を増やさなきゃいけないし、そのためには義務教育費の国庫負担金を含めて財源をちゃんと用意しなければならないわけで、最終的には財務省が予算を付けなければいけないわけですね。今、文部科学省はその気になっているわけですが、元々文部科学省はその気ですけれども、ずっと財務省の壁に阻まれてきたわけです。ただこの政権が本気でやろうとしているかというとそうではないと思います。本気で少人数学級をやろうとするのであれば、この前の所信表明演説の中に入っていたはずですよね。入っていないんですよ。菅さんの所信表明演説の中に少人数学級の少の字も入ってないです。教育に関してほとんど言ってないです。デジタル化の中でですね、学校のICT化を進めていくとだけしか書いてなくてですね、それ以外の教育について言及してないんですよね、この菅さんの最初の演説は。これはもうやる気はないなと。今は文部科学省と財務省の間で予算折衝をしているという事になっていますけれども、12月の終わりになって人数学級を本格的に始めるということになるだろうかと考えると、ちょっと私はあまり期待が持てないと。この政権の本気でやろうとしているとは思えないんですね。これはやはり政権交代しなければ少人数学級できないんじゃないかと思っています。

 もう一つの「学校の規模については相反する意見もありますが」というご質問ですけど、学校の規模、学校を統合すると規模は大きくなるわけですね。そうしないと小規模校のままになるわけですね。学級の規模とは別に学校の規模という議論も確かにあるんですね。一定の学校の規模があった方が学校教育のためには良い、という考え方はやはり教育の世界では一般的な考え方としてはある。文部科学省もアクティブラーニングということを言う時に、「主体的で対話的で深い学び」と言っているので、子供同士、児童生徒の間での議論が成り立つような規模というのは必要じゃないかと考えているわけなので、例えば一学級3人しかいないということになるとですね、これはその十分な対話的な授業ができないじゃないかという問題はあります。しかしあの小規模な学校になった時のデメリットとは別にメリットもあるわけで、むしろ一人一人に目が届くわけですから、学力保障はかなりできますね。ただそういう対話的な部分、社会性を身に付ける部分に問題が出てくると。それはそれでですね、統合しなくても克服する道があるわけです。小規模校であってもその小規模校のデメリットを克服する道はあるんだと。これは情報として知っておく必要があると思います。こうすれば別に統合しなくても一緒に勉強するっていうことはできるじゃないかと。
 それから一斉休校の話で「教育委員会の自主性、独立性というものがどういうものかを明らかにした。」失っているということですね。「文部省都道府県と市町村教委の上意下達なのかそれとも忖度の関係なのでしょうかと」いう質問がありました。
 休校の時、内閣総理大臣が2月27日にいきなり全国一斉休校と言ったわけですね。実は総理大臣が全国一斉休校という前、2日前の2月25日に文部科学省が課長レベルで出した文章があるんです。それは一斉休校しろなんて言ってません。新型コロナウイルス対策として休校が必要な場合があると、それは学校の中で教職員あるいは児童生徒の感染者が出た場合休校だと。それから地域の中で感染者が出て学校の中に濃厚接触者がいた場合には、その濃厚接触者の出勤や登校を控えてもらうんだという考え方で、濃厚接触者がいたっていうことがあっても休校にしろとまでは言っていないわけです。その2日後に総理が一斉休校と言ってその翌日には事務次官の名前で一斉休校っていう通知を出しているわけで、それを受け取った教育委員会にしたらですね3日前と言っていること違うじゃないかと、3日前の課長さんから来たのとその3日後に事務次官から来たものとでまるっきり違うこと書いてあるのですから。そのどっちがまともかというのは、読めばわかるわけですよね。ところがもうほとんどの市町村教育委員会は、あるいは都道府県教育委員会もそうですけれども、上意下達で総理が言っているんだからとか文部科学事務次官からの通知が来たんだと言ってですね、それだけを理由にして一斉休校に入ってしまった。総理が言っているからとか文部科学省が言っているからとか言って休校にしてしまう。これは本当に自分で考えない大人の見本ですよね。これは子供の手本にできないですよ。私は子供に話をするときはこんな大人の真似をしてはいけません。自分で考えましょう。こう言っています。これは地方自治にも反するわけで、そんな学校を休校にするかしないかというのは地方自治の問題ですから。地方自治にも反している。
 それから政と官の関係でやはり言及すべきだったのは近畿財務局の赤木俊夫さんという方の自殺の問題ですね。「これをどう思うか」と、ご質問もあるのでこの話だけしてやめたいと思います。私は赤木俊夫さんという方は本当に立派な公務員だと思います。私の雇い主は国民だと言ってはばからなかった、もう真っ正直にその国民のために仕事するって言うことに誇りを持って生きていた人なんだと思うんですね。彼の場合は面従腹背してなかったですよ。要するに自分が組織の中で行っている仕事そのものが、もうそのまま国のためになっているんだという、そこにアイデンティティのギャップがなかったんだと思うです。アイデンティティが一体化していた。組織のアイデンティティと自分の個人のアイデンティティが一体化していた。ところが、組織の中でやる仕事と自分が正しいと思う正義の間にものすごいギャップが、正反対のことが起きたんですね。こんなことをしてはいけないことだというアイデンティティクライシス、これがものすごい心の重圧になって、心の病になっていったんだと思います。本当に気の毒な人だと思いますけど。そうさせたのは、直接的には佐川さんということになっていますけど、私は官邸だと思いますね。その官邸の関係が明らかになっていない。そこは赤木雅子さんという奥様が訴訟を起こしておられますけど、この訴訟の中で真実が究明されるといいなと思っているんですけど、おそらく今の政府は隠し通すでしょうね。しかしこれはあの赤木俊夫さんのためにも我々は忘れてはいけない問題だと思います。国会の国政調査権のもとで証人喚問するということは当然できるわけですから、国会で多数を占めた多数者が衆議院であれ、参議院であれ、それをやればよい。証人喚問というのは偽証すれば刑事罰が与えられるわけですからね。そうやって私はきちんと真相を解明して責任を追及するということは忘れてはならないようにしてはいけないなと思っております」。

●特別報告 「コロナ禍で横浜市の保健所はどうなっているか」
田中美穂氏(横浜市従労組役員・保健師)
 続いて、「コロナ禍で横浜市の保健所はどうなっているか」と題して、特別報告を横浜市従の執行委員で保健師の田中美穂さんが以下のとおり行いました。

  「まず、保健所というものがどういう位置づけになっているかというと、厚生労働省は、保健所というのは『地域住民の健康の保持増進や公衆衛生の向上のための関係機関』として、その中核機関として位置づけられています。それ以外にも公衆衛生の部署として地域衛生研究所と市町村保健センターというこの三つが掲げられています。保健所というのは公衆衛生で地域保健法上必ず設置をしなければいけないという風になっています。ただし地方公共団体の組織としてはこの市町村保健センターとか今は福祉事務所とかと統合して設置されていることも多いです。政令市なので横浜市では保健所の業務と市町村保健センター業務を私たち保健師は合わせて持っているという位置づけになります。
 横浜の保健所がどうなっているかということで、まず最初に横浜の保健所がどこにあるか、皆さんはご存知ですか。横浜の保健所は1か所です。新しい新市庁舎その中に部署としてあります。もしかしたら市民のには保健所が1か所ということも知られてないかもしれない。2007年4月からは1保健所18支所の体制になっています。保健所が1か所になったのはこの時ですけれども、2002年の1月からは福祉と保健の統合により保健師が業務別の配置になりました。それまでは私たちは、赤ちゃんからお年寄りまで全部保健に関すること、健康に関することをやっていたんですが、もう子供のことは子供のところ、障害のことは障害、高齢のことは高齢、感染症のところは、一応健康づくり係という所で感染症をやるっていう風に業務別に分断をして配置されるようになっていました。それが2007年の4月からは1保健所18支所体制ということで、もともとの保健所というのは支所として残した形で今は存在をしています。
 この1保健所18支所にした意味というのは、「大規模な感染症や食中毒が発生した時にも迅速で的確な対応ができるよう横浜市全域を所管する横浜市保健所を平成19年4月に設置しました」。つまり今回のような大規模な感染症が起きた時にきちんと指示命令系統を出して迅速に対応するために1保健所をわざわざ作ったんだ。健康危機管理の強化のためにこの1保健所18支所体制にしたという風に言っています。ただその時に先ほど言ったように業務別に人を配置しましたので、今回の感染症の部署はその当時の業務量に合わせて人を分けたので、今ですね人員は保健師が3名から5名という状況になっています。しかも医師は、センター長はそれまで必ず医師だったんですけれども、この時から医師でなくてもよいということになりまして、現在ちょっと色々調べてみましたら、保健所にセンター長が医師でない区がかなりありました。しかも医者がいない区もありました。そういう中で今回のコロナ対応が行われているということになります。各区の福祉保健課というところの中に健康づくり係があって、ここが今回のコロナの対応の中心を担っている。という風に思っていただければと思います。
 では実際どうだったかということですけれども、最初の頃と現在とで少し違っています。まず緊急事態宣言が解除されるぐらいまでっていうのはとにかく皆さんもご存知のように、PCR 検査がもう本当に狭き門でした。本当に皆さんが少し熱があって、しかも『周りでそんなに接してはないけれども、患者さんが出たんだけど私はどうしたらいいの?』とか。とにかく感染症自体がよくわからなかったので、市民の不安、そういった相談はもう本当に凄かったです。帰国者接触者センターというのをご存知のように横浜市でも作られましたけれども、これがいつも繋がらない。病院もそこにまず患者さん、検査をしてほしいなっていう人があると電話をかけるんですけど、ももうまず繋がらないんですよ。それで支所であるである区の方にもかかってくるんですけども、そっちもなかなか繋がらないということで、かなり市民の方からは不安の声を聞いている状況でした。それから PCR 検査陽性の方への対応、濃厚接触者の方への対応ですが、まあだいぶ変わっては来ているんですけれども、当時は自家用車でその検査場に行くのもダメだったりしたので全部民間救急にお願いをして、そこに防護服を着るのを手伝ったりとかそういった手配なんかも本当に煩雑でした。
 それから一旦終息しかけて、現在に至るまでの間にだいぶいろんな運動も実を結んだのかなと思うんですけど、今もPCR検査が割と病院の判断ですとか、保健所の方も必要の人には受けてもらえるようなそういった体制、ドライブスルーのような簡易検査場も結構できましたので、今は当時に比べるとどんどんと整ってきたので、不必要に不安になるような状況がないことにはなってきたのかなと思います。そのかわりに逆に今度は数が増えるわけですよね。そうすると検査の調整だったり、濃厚接触で連絡が入ればそれに対して今度は健康観察をしたりとか、そういった連絡等々が本当に増えてきたように思います。絶対数がもう本当に増えましたね。超勤も本当に恒常的になっていて、他の課の保健師たちの応援も結構継続して行ったところもありますし、ただ上の人の考えによっては全然話も来なくて、いいのかなとか、そんな風な状況があったりとか、各区でバラバラな状況がありました。 クラスター対応班というができて、横浜市よくやっているなという感じですけれども、実際その対応班が各区に入ってくれるので人的には区の方で助かった部分もあったようですけれども、人員を増やしているわけでは決してなくって、あっちからこっちから寄せ集めてなんとなくクラスター班というのを作っているので、元々の業務が減っているわけじゃない中なので本当に慢性的に人のない中でやりくりをしたという状況がありました。
 それから本庁舎の、1保健所のところの状況というのは、直接にやり取りがないのでわからないんですけれども、7月頃に聞いた話ではそこの4月5月の超勤が180時間ぐらいとかという人もいたとか。超勤だけでですよ。今も4月から7月の超勤者の数っていうのが実績として結構公表されるんですけれども、その保健所の健康安全課というところですけど、そこの超勤の80時間越えが多分90何人、延べ数ですけども90何人とか100時間超えも40人位とか、結構な超勤を、超過勤務を強いられている。しかもそれが長期間になっていますので抜本的にやっぱり問題だなというのは明らかになっています。応援を私たちもすると言いましたが、緊急事態宣言の時には子供の部署の乳幼児健診とかも全部止まっていましたし、私達も地域に出る事というのが全部事業が止まっていたので、応援も割とやりやすかったんですけれども、緊急事態宣言後は、その辺がまた動き出すわけですよ。そうすると特に子供の部署は悲惨だと思います。乳幼児健診で、一回に少ないところでも30、多いところで100人越えでくる健診を一気にやると、密になるからっていうことで、それを避けるために人数を減らして回数を増やす。もしくは二部制にするとか、その間消毒もするとか、子ども家庭で乳幼児健診に関わる人は疲弊してきています。
 体制上、健康危機管理をするために1保健所にしたと言うけれども全然もう対応できていない。普通、応援と言うと一時的ですよね。それが今もう恒常的になっているという事でやっぱりこの問題、体制上の問題というのは大きいなと思います。それから縦割りになっているので、例えば私の場合、保健師業務というのが保健所時代だったら赤ちゃんからお年寄りまであって感染症がぱっと出た時には感染症にわーっとかかって、少し落ち着いたらちょっとずついろんなことをやろうとか、そういう優先順位をつけたやり取りが普通だったらできるはずですが、今縦割りなのでそれを誰も判断できないんです。もうそれぞれの部署のことだけで精一杯になっているという状況がありますので、やっぱりこれも体制の問題だなという風に思っています。

 参考にですね政令指定都市の保健所数を書いてみました。自治労連の資料からこれは抜粋したものですが、人口当たりの保健所数。1995年に横浜市は18か所あったのが今1か所です。保健所あたりの人口は375万に対して1箇所、次に大きな大阪市ですね。今日は住民投票が行われていますけど、大阪市はもともと24か所保健所がありました。それが今1箇所でまぁワースト2ですけれども人口比でいくと。ただ支所あたりに対応する人口でいくと横浜がこれ計算すると20万人ぐらいです。大体平均。大阪だと24か所あるので11万ということで対応する。やっぱりこう見なきゃいけない。人口の数自体も全然違うということで横浜がいかにお粗末な状況かというのが分かるかと思います。
 では、こういった状況で私たちが何をしたらいいのかなっていうのをやはり仲間で考えています。一つ目にはこの保健所機能として健康危機管理問題の検証と仕組みの再考ということをあげました。この18保健所から1保健所になる時に、実は横浜市従でも結構当局と折衝したりやり取りをしているっていうのを、今回私も歴史を紐解きまして学んだところこういった体制についてやっぱりおかしいよと。本当に健康危機管理を考えるんだったら保健師は単独配置をせずに、人員を多く持って危機管理ができるようにするべきだっていうことを実は述べていたっていうことが分かりました。全くその通りです。やはりきちんと検証をさせていく。私たちも一緒に検証していくっていうことは必要かなと思っています。 それから保健師が分散配置になったことで今回こういった余裕のない体制っていうのも出てきました。やはりあの市従が元々言っていたように多くの人数でいろんな事業をやっていけるような、それは地域の健康の問題に責任を持ってやるという事になるんですけれども、そういった体制をやっぱり今こそこのコロナ禍で問題になったからこそ考えていくべきではないかという風に思っています。
 感染症対応っていうのはただおさまるように、「健康どうですか」と聞くだけではないんですよね。そういう聞く中でやっぱりこの人こういうことになるんだな。こういう生活動線があってこうなったんだな。生活背景とか生活実態を私たちが感じることで、今度はそれを地域の健康に反映させていく地域づくり的な視点で関わるっていうような役割も実はあるんですが、もうほんと今の体制ではそれがもう縦割りなので難しいんです。無理ではないけれどもやっぱり難しいです。やっぱりそういったことに抜本的に見えるような体制を作っていくということを今後も取り組んでいきたいと思っております。
 全国的にもすごく大きな流れができていますので、そういったことにも与しながら頑張っていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました」。      
 
  以上で全体会を終了し、午後は分科会が行われました。 
  【民営化、公務公共性分科会】
テーマ:自治体はどこへ〜危機の時代の職場と職員の働き方の実態、自治体のあり方
◆これまでの第一分科会は…。
 冒頭、これまでのテーマを振り返り、自治体が直面してきた課題を確認しながら、今年度のテーマである危機の時代=「コロナ禍」「自然災害」「働き方改革」「AI化」について講演と報告で深めていくことを確認しました。
2016年 県内自治体における民間委託・指定管理制度の実施の実態と課題
2017年 改めて問う。地方公務員とは何か
2018年 会計年度職員制度は何をもたらすか
2019年 AIと公務労働、自治体
◆講演「働き方改革と自治体職員〜AI・ロボティクスと公務労働」黒田健一(明治大学名誉教授)
 最初に黒田先生から、表題の講演をしていただきました。先生からは、1999年平成の大合併開始以降から、「公務員制度改革」「任期付き職員」「指定管理制度」「人事評価」「会計年度職員制度」など、自治体の職員の「働かせ方」が大きく変えられてきたことが説明され、公務サービスにも市場原理が導入されてきており、この上に立って、「自治体戦略2040構想」や「AI導入」「スマート自治体」「society5.0」などが出てきていることが詳細に解説されました。公務員が「全体の奉仕者」から「一部の奉仕者」へ変質してきている事実を的確にとらえ、市民・職員が個別具体的に点検と監視を強めていく必要があることが強調されました。
◆職場からの報告
 3人から報告がありました。
 最初に水戸川慶太さん(神奈川県職員労働組合)から「神奈川県でのコロナ対策にかかる保健所の現状」が報告されました。1997年に県内で759か所あった保健所が、2020年現在では441か所と激減している現状と県の保健福祉事務所でのコロナ対応で疲弊した職場実態、組合として県人事委員会に要請署名を提出した経過などが話されました。
 次に横川啓さん(鎌倉市職員労働組合)から「鎌倉市でのコロナ特別休暇の顛末」が報告されました。鎌倉市では、3月2日に突然庁内通知が発せられ、コロナ禍での業務削減のための特別休暇(6割支給)が規則改正のもとで新設されました。労働条件の改悪にもかかわらず組合との協議もなしに行われたうえで、国や県内自治体とも均衡を欠き、法制度としても整合の取れないもので、組合として申し入れと交渉を重ねる中で撤回させることができた経過が報告されました。
 最後に、沓名正晴さん(神奈川国公共闘事務局長)から「コロナ禍における国公職場の在宅勤務、リモートワークの問題点と課題」は報告されました。国家公務員のコロナ禍での休暇制度や在宅勤務の実態が報告されました。特に窓がなく換気できない状況の中で、裁判所が長期に閉鎖されたことや、感染を恐れ、地方の災害復旧に都市部の職員が対応できない現実などが話されました。
◆意見交換
 最後に、参加者も交え意見交換を行いました。自治体でマイナンバーを担当している職員から、申請が急増し窓口がみちになっている実態と、取得した人も本来の使い方がされないと思われる実態があると報告されました。GOTOもそうだが、特定の大規模企業への利益誘導となっている。弱い部分への配慮が欠けている。メリットもあるがデメリットもある。デメリットに議論がされていないことが問題だ。マイナンバーカードを使わない、使えない人も認めていく対応が必要ではないか、などの議論がありました。また、各自治体職場で職員にマイナンバーを強制する動きなども報告されました。

【環境・まちづくり分科会】
テーマ:住民無視の大規模開発
 第48回神奈川自治体学校の環境・まちづくり分科会のテーマとしては、3年前に行った、住民無視の大規模開発問題(カジノ誘致を伴う新山下ふ頭の再開発、上郷開発、相模原のリニア新駅周辺開発等)に引き続く第2弾として、横浜市や川崎市、平塚市で起きている「住民無視の大規模開発」問題にテーマを絞って、問題提起と運動展開の報告等を行うこととしました。
参加者は、23名でしたが、今回は、ちょうど、カジノの誘致反対の住民投票条例制定の署名運動最終版の時期ともかさなり、その運動かかわってこられた住民団体の方々が多く参加されました。また、平塚市の住民無視の強引な公園整備計画に反対する方々等の参加も目立ちました。司会進行は神奈川自治体問題研究所常任理事の鈴木久夫氏で、巧みな話術によりスムースに進行しました。
【報告1】 
 最初に報告されたのは、平塚市日本共産党市議の松本敏子氏で、平塚市で起っている[Park―PFI事業による湘南海岸公園瀧城ケ丘ゾーン整備・管理運営事業]の問題点や課題等について、パワーポイントを駆使してわかりやすく報告されました。
 この報告を聞いて驚いたことは、公園という市民の共有財産を、公募してきた民間企業(この場合は積水ハウス)の利益に丸投げして市の責任を放棄するという、どこの市町村でも起こりうる共通の問題点と、湘南海岸沿いの公園特有の防災に役立ってきた防風林の伐採、すなわちこの地特有の貴重な財産が破壊されるという特殊な問題をはらみ、広く市民の反対運動が展開されていることでした。
 PFIとは、「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=私的資金の先導)」の略で、2001年に登場した小泉純一郎首相の聖域なき構造改革の下での規制緩和の一環で導入されて以降、公共施設の建設、管理運営に至るすべてを公共が民間に丸投げする究極の規制緩和で、これを国が積極的に導入をはかってきたものです。この公園版が平塚市の湘南海岸公園で進行しているのです。何が共通で問題なのか、松本氏は次の問題を指摘しています。
@公園の整備内容が、市民の声を聴くのではなく、企業の提案で決まること。
A事業者が決定しないうちはどんな公園になるか行政から答えられない。
B事業者が決定したら、住民が異を唱えても変更できない。
C勝手に公園内の建蔽率を増やし、ビル等の高い建物も建てられるようにすることも可。
D契約期間を10年から20年に延長変更する。企業への行政からの委託料を払い続ける。
等々、市と企業の好き勝手に公園という財産を住民から取り上げるという問題点を指摘されました。 また、この公園特有の課題として
@湘南海岸公園は、国道134号線を挟んで、海と反対側に面しており、その中のプールが老朽化したので、その改修をすることには何ら異存はないのに、市はプールの改修を契機に道の駅を始めとした新たなアミューズセンターを建設することを目指し、PFI事業に乗り出したこと、その最大の問題が、海からの強風に伴う高波、砂などから市民生活を守ってきた防風林を伐採するという計画であること。
A平塚海岸沿いは、広く市民に親しまれた海岸として定着しており、その防風林が貴重な緑としても憩いの場としても、市民に親しまれてきた。この植樹帯を残す運動が広く求められている。
 以上のような問題点、要望が多くの市民から寄せられているにも関わらず、今、市長は市民に背を向け、8割の市民が市の方針に賛成しているなどという、根拠の疑わしいアンケート結果を発表したり、反対意見をもつマスコミを排除したりと市民の意向に背を向けている。これらの非民主的態度を批判しつつ、今後も日本共産党と市民が手を取り合って、計画撤回まで粘り強く運動を展開していくとの決意を表明されました。
【報告2】
 次に、川崎市宮前区鷺沼駅前での大規模再開発事業の見直し、現区役所、図書館、市民館の存続と2つの図書館・市民館の設置を求める等、多くの申し入れを行い、市民本位の再開発を目指す運動について、自治体問題研究所理事で、川崎市政研究会の小久保善一氏より、報告が行われた。行政と開発準備組合の東急(株)がタッグを組んで、秘密裏に行われる再開発事業に市民がどう対抗していくか、その困難な課題がためされた典型的事例かもしれません。
 計画は、宮前区鷺沼駅前に146m、37階建て、92m、20階建ての2棟のタワーマンション、区役所や市民会館、図書館の移設、交通広場の創出などをうたい文句とした計画となっていた。この事業に対する市の税金支出は、何と補助金額で100億円、総事業費は500億円にも上る。このような大規模な税金支出が行われるにも関わらず、情報公開請求には黒塗りの回答であったり、「容積率500%だから住民説明は必要がない=実質774%」としたりして説明がないまま推進されてきました。
2015年の市と東急電鉄が包括協定書を締結して以降、始めて2020年の環境アセスの縦覧中に、開発地周辺300mの範囲の住民に限定した説明会を開催した。
 会は、2019年には、「区役所・市民館・図書館の移転に反対し、鷺沼駅前再開発を考える会」を結成し、移転に反対する意見書17,840通を提出し、23万人が住む宮前区には図書館・市民館が最低2つ必要であること、タワーマンション2棟による、日照不足、風害、交通渋滞など環境破壊が一層ひどくなる計画であり、環境に配慮した見直しが必要であることを訴えてきました。
【報告3】
3番目として横浜から、今最も旬な、2020年9月4日にスタートをして11月4日までに行っている「カジノの是非を住民投票条例で決める市民署名運動」の真っ最中ということもあり、今回は、その活動の途中経過を含めての報告をその署名運動の中心として進めているカジノ誘致反対横浜連絡会事務局長の菅野隆雄氏より報告をいただきました。 新型コロナ感染は、カジノ業界に深刻なダメージを与え、ラスベガス・サンズが日本への進出撤退を5月に表明、その他日本への参入を目指す5社も軒並み収益を半減しており、きわめて深刻な経営危機に陥っていること、さらにこれにとどめを刺すことが大切で、住民投票制定署名は50万を超える署名を集めることを訴えた。(この住民署名は12月5日締め切られ、19万3103筆の署名が集まり、住民投票に必要な6万2604筆のおよそ3倍の署名が集まった。
しかし、今年の1月6日から8日の市議会で、自民・公明の反対で否決され、勝負は今年の横浜市長選挙に舞台がうつることとなりました。
【報告4】
 最後の報告として、自体問題研究所理事である、矢後保次氏より、菅野さんの報告を補強する意味で、カジノ誘致が憲法に基づく地方自治に反するとして、このコロナ禍でも、従来の計画を変えずに、しかも、港湾協会の会長が反対しているにも関わらず、強行し、住民投票条例も否定し、議会による多数決で押し切ろうとする姿勢を厳しく糾弾しました。
【質疑・討論】
 これら4人の報告を終えて、会場からの質問と意見に移り、4人ほどの方々から質問と意見表明があった。やはり、質問の多くが、この時期旬な話題のカジノ誘致反対の課題への質問が多かったです。「住民投票条例制定署名の今後の展開と展望に関する質問」に対しては、「住民投票に必要な6万2604筆は現時点ですでに突破しており、陳情としては、採択されることは確実であるが、今後市議会で自民・公明の多数で否決されることは十分予想されるため、できるだけ多く、50万署名を集め、市議会にプレッシャーを掛けていきたい。」と回答、また、カジノ誘致反対陣営側で、今、住民投票条例制定署名と同時に行われている市長リコール署名への対応等に面食らっている。どう対応すべきか」という質問も出されました。 これに対しては、「カジノ誘致反対陣営の一部の方々が、住民投票条例制定では、議会の推進陣営が多数を持っているので、否決されることが確実なため、直接に市長リコールの方が早道だとして、意見が割れて、独自に運動されている。これはこれで運動の一形態として、やむを得ない運動」という経緯も述べられました。
平塚の湘南海岸公園のPFI問題では、出席者から運動に対する激励の意見が出された。特に樹林地帯の伐採反対は、保安林として県が指定すれば、保全されるとの市の答弁を引き出して以降、専門家を呼んでの勉強会や県議会への陳情、噂の東京マガジンへの出演、地域自治会と共同で実施した「海街フェス」などを実施して、その貴重な樹林地帯の必要性を市民ぐるみで盛り上げている」ことなどが報告されました。
 鷺沼駅再開発事業に関しては、意見表明として、「どの都市の事例でも同様であるが、一部企業と行政が癒着して、秘密裏に計画を練って、基本方針を発表する時点では、ほとんど骨格が決まっていて、一般市民の意見が反映される機会が全くないのが実情である。このため、これらに対抗する政策を、日ごろから構築し、大規模再開発ではなく、身の丈にあった、中小規模の共同開発、建て替えの推進等が提案できる住民側の専門家集団の政策スタッフの構築が求められる。」との意見表明がありました。
【平和・基地分科会】
テーマ:米軍基地とコロナ感染
【講師】新倉康雄氏(原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会事務局長)
(講師の話)
米国防総省は3月30日以後、米軍基地の感染状況を非公表にすると発表、日本政府も屈服してしまったため7月20日まで非公表とされた。以後、毎週水曜日と金曜日にその時点での基地内に隔離されている感染者数を公表するが累計は出さない。また部隊名や行動履歴も非公表。
 日米地位協定ではパスポートや旅券なしでも出入国は自由にできて、基地にも自由に出入りすることができる。横須賀基地にトランプ大統領が降り立つた時も同様。
 自衛隊の「たかなみ」にもPCR検査の体制はなく野放しになっている。
 どうしてこうなっているのか、それは日米地位協定に「検疫」に関する規定が無く、「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」とあり、米兵は日本への入国に関する手続きはなく、検疫もできない状況。
 日米合同委員会では、合衆国軍の検疫はアメリカ側の軍医が行い、日本側に通告することになっている。
 2013年1月の日米合同委員会では、「人の感染」について67の疾病について確認した場合、可能な限り早期に通報することとしている。
 米軍人等が民間空港から入国する場合は日本当局が検疫を行い、米軍基地から入国する場合は米側が検疫を行い、感染者等を発見した場合は日本側に通告し、日米双方で対応を協議することになっている。横須賀基地でコロナが発生した場合、その情報は次の2ルートから情報が入ることになっている。
※在日米軍から在日大使館、外務省を経て横須賀市へ
※基地内の米海軍横須賀病院から横須賀市保健所へ
 ただし、年代や性別、業務内容は報告されず感染経路は不明のまま。 安倍9条改憲の破綻と「戦争できる国づくり」に対する菅内閣の新たな野望に対し、 国民の反対運動と世論が大きく広がっている。
 主な経過は次のとおり。
3月26日 外務省は横須賀市に対し、「横須賀基地に配属されている米海軍兵が新型コロナウイルスの感染者になったと情報提供。翌27日には空母レーガンの乗組員2名が感染。
3月30日 米国防総省は個別の米軍基地の感染状況を非公表にすると発表、日本政府も了承。
4月6日 在日米軍司令部が関東地方の基地や施設を対象に「非常事態宣言」
4月 7日 安倍総理が首都圏など7都道府県に「緊急事態宣言」
4月15日 沖縄弁護士会が米軍と日本政府の非公表措置に抗議の会長声明。
5月27日 渉外知事会(基地を抱える15都道府県で構成)が日本政府の責任で米軍に感染状況を開示するよう求めよ、と要請。
6月4日 横須賀上地市長が在日米海軍司令官と横須賀基地師司令官に「安全保障の立場からコロナ感染者数非公表は理解できる」と発言。
6月11日 青森・三沢市長が感染情報を公表すると市議会答弁。
6月22日 日本共産党・田村智子議員が参議院決算委員会で茂木外務大臣・河野防衛大臣に感染の公表を求め追求。
6月24日 逗子市議会がコロナ感染公表を求める意見書を採択。
7月 4日 米独立記念日。沖縄、横須賀、岩国などで感染拡大。
7月15日 横須賀市内の民間宿泊施設を入国時の米軍関係者に14日間の待機場所として提供していることが発覚。市は「どこが問題なのか」と開き直る。
沖縄県・北谷町では町長が米軍・沖縄防衛局に猛抗議、町内のリゾートホテル活用を中止させる。
7月21日 米国防省、個別の基地の感染者数のみ公表。累計、部隊名、行動履歴は非公表。
7月31日 横須賀市、基地関係県市協議会から退会。上地市長は「いまは日米地位協定の改定を求める時期ではない。運用の改善で十分」と発言。
8月20日 空母セオドア・ルーズベルトの感染米兵を一時、日本に移送する計画が発覚。
8月26日 京丹後市にある米軍経ケ埼通信所バンドレーダーの上部組織、在日米陸軍第38防空砲兵旅団(相模原市)のマシュー・ダルトン司令官と京丹後市・中山泰市長との間で「行動履歴」の開示に同意。
8月29日 在日米軍全国18基地で感染確認。(赤旗記事)
9月2日 安保破棄中央実行委員会が「米軍基地とコロナ感染」でオンライン交流会。
(参加者の質問・意見・報告等)
・米軍からコロナ感染通告を受けた保健所の扱いはどうなるのか。
・横須賀市長の態度の悪化は何故か〜アメリカ訪問から急激に変わったのは何故か。
・屈辱的な日米地位協定をなぜ日本が取り続けるのか。
・相模総合補給廠のミサイル司令部について、報告。
・米軍基地への抗議書類、昨年は1時間もかからずに提出したが今年は30人近くで3時間もねばって受け取らせた。
・イージス・アショアの配備とその能力について。
・核兵器禁止条約批准と被爆者・国民の運動について。
・米軍のコロナ感染者への対応の不安。
・相模原市基地対策課との懇談について。
・菅政権の本質について。
・横浜カジノ誘致に反対のとりくみ・上瀬谷通信基地へのとりくみ。
 その他、それぞれの参加者が抱えている問題点、問題意識等が議論された。

【子育て・教育分科会】
テーマ:コロナ禍の中でのこども
初めに:司会の五十嵐マリ子さんが次のように発言しました。
 コロナ禍の今、子どもたちの心や身体が大変なことになっています。この分科会では、子どもたちの心と身体の問題を話し合いたいと思います。保育、小中学校、養護学校、学童、児童相談所そして児童館などから、子どもたちの実態を話して頂き、互いに共感しながら、どうやって子どもたちを健やかに育てることができるかをみんなで考えていきたいと思います。
 この後、各分野からの発言が続きました。
1.保育の分野から:認可保育所  菅野昌子さん(メッッセージ)、家庭保育 矢後寿恵さん
 保育園では緊急事態宣言が出た時政府は開所を求めました。横浜市は保護者に対し登園自粛を要請しましたが、医療現場などで働く保護者のために、不安な中保育を続けました。緊急宣言解除後、7月からは消毒、マスク着用、3密を避けながらの保育を実施しました。外部の人の受け入れをしない、保護者の保育室への立ち入りを規制、そして、仕事が休みの時や産育休の方へは家庭保育の協力を今でも行っています。
 保護者参加の行事は中止し、子どもを真ん中に職員と保護者と連携する保育ができないまま、半年が過ぎました。
 保育では、手洗い、消毒、換気はできても、密を避けることはできません。
 コロナ禍で改めて感じるのは、この国の職員配置基準の低さです。そして、子どもの育ちを支える職員の処遇の改善の必要性です。
2.小学校教師から:貞光正二さん
 小学校では、安倍首相のもとで、突然の一斉休校の要請を受けました。6月いっぱいまで休校の状態になりました。卒業式は、保護者は校庭で待機、歌は歌わないという形式的なものになりました。校庭を開放しましたが、一時間ずつ交代で遊び、2割くらいの子どもが来ました。
 親が家にいない子は学校が一時預かりで引き受けました。教師が輪番で面倒を見ました。1日いる子はお弁当持参でしたが、親からお金を渡され、コンビニでおにぎりを一つだけ買ってくる子などが多くて気になりました。
 入学式は保護者が1名のみの参加でした。始業式はプリントを渡すのみで、その後も休校が続きました。
 6月から分散登校が始まりましたが、午前、午後に分かれて登校しました。初めて20人以下学級になりました。徐々に給食が始まり、分散登校もなくなり、今に至っています。
 市の行事はすべて中止になり、宿泊行事などは各学校独自の判断で日帰りになりました。遠足も近くの大きな公園にお弁当を持って行くという形でした。
 春の運動会は全て中止、秋に振替になり、平日の午前中だけで実施する所がほとんどでした。
 職員は夏休みが短くなり、その後は夜8〜9時位まで仕事をする、長時間勤務の状態に戻っています。
 また、今学校現場で、担任がいないクラスがある状態が続いています。新採用を増やしてほしいし来年度が心配です。
3.中学校教師より:境光春さん
 いきなり一斉休校になり、卒業式と終業式のみ実施しました。生徒、教職員とPTA会長のみの参加でした。担任が毎日電話をして、生徒の様子を聞いていました。休校の決定は各学校で決めるべきで、教育委員会が決めるべきことではありません。それに、学校はクラスターの発生もなく逆に安全です。
 6月になって再開しましたが、分散登校で、出席番号で午前中は偶数、午後は奇数といった形を取りました。教師は2回同じ授業をし、30分授業だが、検温、消毒などがあり、プリントも教師が一人で配るなどたいへんでした。授業中はしゃべらない、歌わない、音楽も体育もたいへんで、トイレもソーシャルディスタンスで並びました。
 授業は自宅でプリント学習をしたが、後で試験をしたら全然できていないし、体育祭を10月にやったら、走って転び、骨折した生徒がいました。
 分散登校の時、今まで不登校だった子が学校に来たが、いつもの授業に戻ったらまた来なくなってしまいました。
 修学旅行の準備をしたのに行かれず、「○○できなかった。こんちくしょう」とこんちくしょう集会をやって発散しました。
 文化祭は、合唱コンクールを学年ごとに実施したが、今年の三年生は何もできずに本当にかわいそうです。
4.特別支援学校より:乙守貴子さん
 障がい児は臨時休校になって、お母さんが1日子どもを見るのがたいへんでした。放課後デイは通常放課後だけですが、休校中は11時頃から開所してくれました。障がい児は基本的にひとりで留守番はできないので、ほとんどの学校が緊急一時預かりをしました。横浜はスクールバスも出し、給食もありましたのでいい方でした。保護者の自宅勤務などで3月は3分のT、4,5月は5分の1くらいに減って行きました。
 分散登校が始まってからは日替わりで子どもを預かりました。子どもによっては、のびのびと過ごした子もいますが、感染が怖くてずっと家にいた子には10円はげができたりもしました。
 行事は基本的にすべて中止です。スクールバスが密になるので、公共交通機関や自家用車を使ってもらいました。スクールバスも一台増やしてもらいましたが、介助者の予算がないので、教師が輪番で乗っています。
 また、コロナとは別ですが、特別支援学校の児童生徒数が増えていて、全体的に学校が足りません。しかし、特別支援学校には設置基準がないので、是非設置基準を作って欲しいと運動してきました。
 小中学校の特別支援学級の人数も増えていて、1クラス8人につき担任がひとりですが、それではとてもたいへんです。せめて6人にひとりにしてほしいです。通級指導学級(発達障がい児)にも問題があります。
5.学童保育より:堀江恵理子さん
 学童は専用の遊び場がないので地域の公園に連れていったら、学校に通報されてしまいました。公園が少なすぎて密になってしまうので、一時間も歩いて遠くの公園に行きました。習い事がないので時間を気にせずあそぶことができました。
 新一年生は何も習っていないのに宿題が出されるなどとてもたいへんでした。
 高学年の子で保育料の補助金がでなくなると学童を辞めていく子どもが出てきて将来が心配ですし、運営的にもたいへんになっています。
 一年生の保護者の顔が見えないので、ズームで保護者会や歓迎会をして保護者との関係づくりをしました。また、楽しみだったキャンプや遠足に行けなくて残念でした。
6.児童相談所より:畑井田泰司さん
 横浜には児童相談所が4カ所あります。コロナ禍での虐待の件数は、
4月ー447件、5月ー660件、6月ー790件、7月ー741件(ここまではいつものペース)
8月ー538件、9月ー543件(減っている)
 半年で3800件、一日当たり20〜30件位のペース。
 これにはいろいろな背景があるが、調査で学校や保育園に行っても、休園や休校で把握ができないことがあります。地域の子育て拠点もコロナで閉鎖し、子どもの状況を追えない状態でした。また、コロナが理由で訪問拒否もあり、なかなか会えないこともあります。
 コロナで経営状態が悪化したり、家庭学習の面倒を見る負担など、お父さん、お母さんにストレスがたまり、子どもに暴力を振るってしまうこともあり、決して極悪人ではなく、普通に生活している人がほとんどです。
 一時保護所は横浜に4カ所あり、常に満床状態です。食堂は交代制で、一人部屋が確保できない状態で、子ども同士のトラブルも多くあります。
 ケースワーカーさんを増員していますが、新人の教育体制ができていないので人材育成が課題です。
 「子どもには教育を受ける権利があります」という子どもの権利条約第28条がとてもたいせつだと思います。子どもが等しく学べる環境を作って行くことが必要です。
7.児童館より:中村興史さん(品川区の児童館に勤務)
 児童館ってなに?
  児童館とは0歳から18歳までの子どもが自由に来館できる場所です。午前中は主に乳幼児とお母さんが集まり、サークル活動などを行います。
午後は低学年から来館を始め、高学年、中学生などが遊びに来ます。
 コロナ禍の中で、児童館は不要不急の施設なので、3月2日から6月下旬まで閉館しましたが、児童館の役割について考えさせられる期間でした。まず乳幼児の利用が開始されましたが、予約制をとりました。小学生は7月中旬以降受け入れを開始し、交代制やきた順の定員制をとったりして、館長の判断で柔軟にやりました。今もできる限り午前は乳幼児、午後は小学生と時間を分けて運営しています。
 元々自由に来館できる所でしたが、コロナの影響で登録制にせざるを得ませんでした。コロナで親が行くことを許さず、来なくなった子もいます。
子どもの様子は
  *動きたい、走りたい、鬼ごっこしたいという子が多い。(高学年も低学年も)
  *甘えたい子が増えている。べたべたする。ちょっかいを出して大人の気を引きたい。
 子どもは群れて遊ぶのが当たり前なので、密になってしまうが、子どもたちの自由に遊びたい気持ちをブロックすることはできません。自由に遊べる遊び場、たまり場の重要性をより強く再認識しています。
8.自由討論からの発言
*「あそびはこどもにとって主食だ」
 6月に学校に行ったら、子どもが沈んだ感じだった。あそべない、しゃべっちゃいけない、給食もぼそぼそ黙って食べる。 自然学級でキャンプやスキーに行っている。子どもたちは滝つぼに飛び込んだり、火おこししたり、のびのびとあそんでいる。挑戦的なこと、難しいことを乗り越えるのが子どもたちには大事なこと。コロナで学校が自由でなくなっている。静かにさせることのつけが5年10年後に回ってくるのではと危惧している。
  *小児科の先生によると、子どもは小学校に上がる頃には病気に対する抵抗力が格段に高まる。普通の大人と同じ位の抵抗力がついてくる。コロナで気をつけなければならないのは高齢者と乳児だ。ピリピリする必要はない。いつまでも前を向けだの、友達と離れていろだの言われ続けたのでは、活動もできず、子ども時代の思い出が奪われてしまう。
  *自分の気持ちを書いてみようと、「三年生になって」という題で作文をだしたらとてもいい作文ができた。時間の制約がないのでとても良かった。オール5をあげたい位一生懸命書いていた。
9.まとめ   コーディネーター 長尾演雄先生
 今まで人と人とが交わる、密度の高い交わりが発達の要因だと学んできましたが、その発達論を壊さなければならないような時代になっています。コロナと共存しなければならない時代に入ってきたのだろうと思っています。大人も子どももどういう生活をすることで、コロナと共存,共生しながらなおかつ人間的成長を遂げるかという大きな課題を投げかけられているのでしょう。
 この課題を乗り越えれば、今までと違ったコロナ時代の社会を作れることになるのでしょう。体験したことのない体験をすることで子どもが一回りも二回りも成長できるような時代ができるのでしょう。
 次の分科会で、今日の分科会をさらに発展させることができればいいと思っています。

【女性行政分科会】
テーマ:コロナ禍とジェンダー
 最初に太田伊早子弁護士から話を聞きました。太田弁護士からの話の要旨は次のとおりです。 まず、「ジェンダーギャップ指数」(世界フォーラム2019年)によると日本は153か国中121位、特に経済分野では115位で女性は男性の所得の半分程度、政治分野では144位で国会議員の割合は13.6%、教育分野では91位で大学・大学院の女性の割合は32.4%と世界から遅れをとっている。
そして、日本という国は不平等であるとの前提から、コロナの実態がより子どもや女性、青年など弱者に影響が出てくる。家庭内のジェンダー不平等が問題にもなっている。不平等の問題を洗い出してみようと、憲法に照らして話がすすめられた。
コロナ禍で浮かび上がってきた実態は、2月に突然の学校閉鎖により遊ぶ権利が阻害され、子どもたちの人間として成長する権利が奪われたこと、大学生もバイト先がなくなるなど、学費などの公的支援がなく、大学をやめなければならないこと、10万円の定額給付金では、所帯主(男)が家族分の受取人のため、直接女性が受け取れないことなどがクローズアップされた。憲法の「個人の尊厳」13条にある本来あるべき権利が認識されていないのが問題。
日本労働弁護団の「全国一斉新型コロナウイルス労働問題ホットライン」でも非正規労働者からの賃金不払いなど深刻な相談が多い。正規は守られているが、1995年「新時代の『日本型経営』」により非正規が2000万人を超えている。コロナの影響により2020年7月時点で、同年1月と比べると107万人の非正規労働者が失職、内8割が女性である。特に女性はエッセンシャルワーカが多く、医療、介護、福祉、保育分野では、低賃金で働いている。
自粛生活で家庭内の家事・育児負担増によりジェンダー問題の後退がある。DVの増加も深刻化している。LGBTQへの生活に与える影響もある。
菅政権は「自助・共助・公助」というが、法的にはない考え方、法に基づいて第13条の「個人の尊厳」や第25条・26条・27条・28条の社会権、第22条の公共の福祉、29条の財産権など、憲法に基づいて住民のくらしを守る政治が必要。
また、住民自治(地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義の要素)や団体自治(地方自治が国から独立した団体にゆだねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるといつ自由主義的・地方分権的要素)に基づき解決していく必要がある。
報告の最初は、カンガールの会代表・高島恵子さん(副会長の荒井絵梨さんが発熱のため島さんが代読)からのお話しです。
カンガールの会は、横浜市青葉区助産院「バースあおば」に拠点を置いて普段は妊婦さん、産後ママの身体と心のサポート、妊婦さん、産後ママの交流の場や学びの場づくりの活動を実施している。 新型コロナウイルス感染拡大を通じて本当に安心して産めるのか。もし感染してしまったら…希望する助産院で産めない、帝王切開になってしまう、母乳があげられないかもしれない。しかし、PCR検査で陰性がわかれば、安心して産める。 妊婦さんと赤ちゃんを守ることはもちろん感染を拡大させないために安心してお産に臨むために妊婦さんにはPCR検査が必要という結論に至った。
5月のゴールデンウイーク明けから「妊婦さんにPCR検査を」と緊急署名活動を実施。紙の署名とともにカンガルーの会員さんなどの協力も受けて電子署名のサイトの立上げ、署名を集めた。1か月足らずで2140筆に。 幸いにも理解が進んだのか署名の効果か政府は6月補正予算に妊婦のPCR検査の助成が盛り込まれた。 段々と仕組みができ始め東京都は10月2日から運用開始に。神奈川は助産院にはマニュアルが配られ、運用可能なようだが県のホームページには記事が見つからず具体的な情報が分かりにくくなっている。あまり利用して欲しくないかのようにも思える。
妊婦さんのPCR検査が無償で受けられるという事を妊婦さんに周知していきたいと思っている。一方で偽陽性も出る検査で、もし陽性になってしまい隔離となった場合、上の子と離れ、その間どうしたらいいのか、誰が世話をするのか、などという課題もある。さらに私たちが署名活動で求めていた立ち会い出産のためにパートナーのPCR検査も補助の対象にという要望についてはまだ実現していない。
私たちの訴えがどこまで届いているのか、この先にはどんな課題があるのかも合わせて、継続して観察を続けたい。
   次の報告は、澤田幸子さん(神奈川労連労働相談センター・事務局長)から「コロナ禍の働く女性たち(労働相談から)She-session」のお話しです。
コロナ禍で相談件数が1月〜9月は1273件(前年860件)で前年比1.48%増。4月〜7月は史上最高(コロナ禍相談…718件)と最高の件数となった。
相談者の性別は男性40.0%、女性58.4%、年代は30代以下27.2%、雇用形態は正社員39.3%、パート・契約・アルバイト(臨時を含)43.7%、派遣・請負10.0%と非正規が53.6%となる。相談内容はコロナ休業手当が26.6%、労働条件の切り下げ13.4%、解雇・雇止め・退職強要13.1%とコロナ休業が続く中、会社都合の休業や時短、労働日削減に対する手当が保障されないなど、労働権が侵害されている事態が起きている。
具体的な相談事例をあげると、「専門学校の講師、コロナで休業になり60%保障がもらえない」(50代女性)、「ブライダルのデザイナーを4年。週4日勤務が週1日になり、補償がない」(30代女性)、「居酒屋で2年間バイトで勤務。4月からは正規のみと、電話で解雇言われた」(20代女性)、「医療法人で正規のマッサージ師、仕事が減り、正規からパートへと言われた」(50代女性)など、非正規や弱い立場にいる女性たちの労働権が侵され、生活への深刻な影響が出ている実態が浮かびあがった。
コロナ禍で、在宅ワークを余儀なくされ男性は仕事、女性は家事・育児への負担が増え、性別役割分業が後戻りしていることや雇用形態(性別・障害者・国籍)による格差など、ジェンダー問題が見えてきた。
人間らしく働くためにはディセントワークの実現が重要。そのためには@非正規雇用労働者の保護のための立法措置(日雇い派遣、日々雇用、個人請負など)が必要、A雇用保険制度の拡充、1年〜3年の給付補償と安定した職業の確保や再就職支援、B国・自治体の産業政策の転換、職を失った労働者に対する長期安定雇用政策、SDGsの具体化、Cリストラ規制が必要である。
そして、労働者の尊厳を守るためには、労働組合運動の主流化と国政革新が課題である。
 参加者からは、様々な実態が出され、活発な意見交換がされた。
〇子どもへの虐待が増え、児相での措置が増えている。
〇学童保育も閉鎖され、子どもの居場所がなくなった。住民の声で学校が居場所をつくった。 〇講師の話で、10万円の給付金を帯主が受取人になったのは、国家の管理の手法という話は、腑に落ちた。受け取らなかった人はどのくらいいたのか。結果を自治体に聞く必要がある。
〇給付金が受け取れないのは、添付書類の不足、障害を持っている一人暮らしの方、DVの問題で住民票が移せない、などがあるのではないか。
〇相模原市でパートの保育士、休業手当が出ない。市に電話して、通知を出させた。特別休暇がとれるようになり、年休を返してもらえた。海老名市では休むと4割賃金カット。
〇雇用調整助成金は100/100のはず。学校が休校で仕事を休んだ場合ももらえるはずだ。副業の問題が深刻。
〇市民自治の確立が必要。
〇コロナとジェンダーの関係では、自殺者が多いのは関係あるのか。
〇女性の自殺が多いのは、コロナとジェンダーと無関係ではない。
〇子どもの妊娠が増えた。性教育の問題を考える必要がある。
〇助産院では助産師が学校に妊娠・出産についての話をしに出向いている。出かけることは可能。
〇県は、財政難といって、来年度7〜8%シーリングをかけると言っている。
〇市の仕事はジェンダー視点が必要。
〇60代70代になっても働いているが、パート・アルバイトが多い。
最後に、太田弁護士は、政治や行政の役割はくらしを守る事。一人ひとりがこの社会の中で生きていく権利と尊厳もって生きていくことが、全員が恩恵を受けているかどうか。教育の中に人権教育として入れていく必要がある。自由権などを守るためには予算措置が必要。社会保障を敵視している。総理大臣が自助とか言っていることが攻撃的、それに打ち勝っていきたい。その役割が地方公共団体、そこが住民のくらしを守るという役割を徹底的にやっていただきたい。とまとめました。

【地域経済・産業分科会】
テーマ:コロナ禍の後の経済
1.分科会の考え
コロナ禍の収束の目途が立たない今日、県内の経済状況は一向に回復の見通しが見えない状況になっています。
政府は、「GO-TOキャンペーン」を繰り広げ必死に経済の回復を推し進めようとしていますが、県内の倒産・廃業は依然として続き、特に飲食業・観光業など深刻な状況が続いています。
この分科会では、特にコロナ禍後の経済はどうなっていくのか、中央大学の村上研一教授を講師に迎え、問題提起をしていただき、その後、業者はどうしたらいいのか、行政は何をしたらいいのか、講演をもとに皆さんと一緒に意見交換をしながら方向性を見出さればと分科会の企画を考えました。
2.分科会の流れ及び報告の主な点について
  最初に主催者から分科会の進行について説明を行い、その後村上教授から資料に基づき報告をしてもらい、報告の後、意見交流を行いました。
報告の中では、コロナ危機後の経済展望として経済成長率予想を、IMFの世界経済見通しをもとに報告。
この中では経済成長率で「米中逆転」の時期が早まる可能性があり、米中対立の深刻かが更に深まるのではないかと問題提起がされました。
国内経済では、内閣府の景気動向指数や、地域経済動向から、自動車を中心に輸出が拡大するが、国内の消費・設備投資は停滞が続くこと、輸出産業が集積する神奈川県の回復は展望できるのかと問題提起がされました。
その後、コロナ危機前から日本の国際競争力の低下が各種のデーターから顕著になっていること。その要因のひとつに中国産業の躍進があること。反対に日本産業の競争力が低下していると報告。さらに、各種の貿易に関するデーターや新聞の記事などを参考に電気産業の動向や、半導体電子部品や通信機、発電機、更には自動車産業、鉄鋼及び金属関連、医薬品及び化学製品などの状況から見えるものについて報告。
最後に、日本経済や県内の経済の課題について問題提起をしました。
3.出された主な意見・質問内容について
以上のような主な報告を行ったあと、参加者からは、下記のような主な意見や質問がだされていました。
〇地域の特徴は、どのようなものなのか
〇今後どうしたらいいのか
具体的な話が出てくる中で、大切な事は、地域の人が何を求めているのか地域の要求を知る事が必要。その為に、自らの地域がどうなっているのか、もっともっと知る事が必要であり、知る事から出発する事が大切となりました。
〇県内の状況はどのようになっているのか、特徴は?
    以上の質問に対して、
1)再生エネルギーの取り組みを推進すること
2)輸出一辺倒からの脱却
   などの意見交流がありました。意見交流では、参加者全員が発言し活発な交流が行われました。
4.分科会の感想まとめ
参加者からの主な感想は、下記の通りです。
〇日本経済のリアルについてデーターをもとに、たくさんの発見があり良かったです。
〇コロナ後の経済を人々の暮らしがよくなる方向に打ち出すことの大切さを痛感しました。
〇先生が詳しい資料を作成してくれたので、話が聞きやすく理解できた。また、勉強になる資料としても使えるので便利。
〇地域経済・産業と言うより国際経済について理解が深まった。
〇経済の集約・集中から分散する形となる地域経済の在り方についてもう少し話して欲しかった。
〇大変勉強になりました。
〇ポストコロナの経済政策はどうなるのか考えていきたい。
  などの声がよせられました。
以上の感想から、参加者からは大変勉強になったとの感想が共通していて分科会としてよかったと思いますが、反面業者の参加や自治体職員の参加が少ない事が今後の課題となりました。

【社会保障分科会】
テーマ:国保の都道府県単位化と市町村国保改善の運動
今年4月から3か年の新たな「国保運営方針」がスタートします。国は都道府県単位での保険料の統一化を強制し、自治体の独自の努力を抑え込もうとしています。分科会では、国保の都道府県単位化の狙いと神奈川県での国保運営方針の方向をふまえ、自治体での具体的な改善手法などもふくめ交流を行い、認識を深めました。
 講演
   ●「国保の都道府県単位化と市町村国保改善の運動」と題し、根本隆氏(神奈川県社保協事務局長)から、なぜ政府が国保の都道府県単位化を執拗にすすめているのかを探り、対抗軸となる運動について話されました。
 国保の都道府県単位化は、国保財政の運営責任を都道府県が負うことで「効率的な医療提供体制」=「医療費抑制」をすすめる仕組みをつくりあげることが目的。そして、「標準的な保険料等の住民負担の在り方」として、都道府県単位での「保険料水準の統一化」を打ち出し、都道府県が医療提供体制(医療費水準)に見合う国保の保険料水準を決めていくこととされている。国保の都道府県単位化は、社会保障制度の改悪の一環として、医療費の削減を目的として始まった。
 また、市町村国保の厳しい財政事情を逆手にとり、これを解決するためには国の財政負担を増加することが最良であるにもかかわらず、都道府県に医療費抑制の責任を負わせるという構造となっている。都道府県単位化に向けて、全国知事会は国に対して、市町村国保に1兆円の投入を要望したが、3,400億円の財政支出に止まっている根本問題があることを指摘。
 「都道府県単位化」の焦点は、「法定外繰り入れ」と「統一保険料の動向」にあり、神奈川県の2018年度からの「国保運営方針」では、統一保険料と法定外繰入金について次のように明記している。
<統一保険料>
各市町村において、法定外繰入額に大きく差が生じているなど、現時点では、統一保険料水準とする環境が整っていないため、統一保険料水準とはしない。ただし、今後において、統一保険料水準とする環境が整った段階で、別途、統一保険料水準とすることについて、県及び県内全市町村で検討を行う。
<法定外繰入金>
決算補填等を目的とした法定外繰入金は、本来国保の被保険者の保険料から賄うべき費用を広く住民全体から徴収しているものであり、削減すべき費用である。ただし、法定外繰入金の解消・削減は、国保被保険者に係る保険料負担上昇に直接結びつくことから、解消・削減にあたっては、計画的、段階的に行うべきである。
 保険料水準の統一については、全国の都道府県の中で、実施時期を明記する運営方針がみられるが、神奈川県は将来に先送りしている。また、決算補填等を目的とした法定外繰入金の解消について、令和5年と期限を切った運営方針となる見込みだが、到達状況を踏まえた見直しが可能になっており、神奈川県独自の特徴となっている。国の圧力は相当なものだから、削減・解消の方向への動きは強まると思われる。
 そして、最後に国保の都道府県単位化の対抗軸となる運動の具体化として、以下のことが提起された。
〇学習活動をすすめつつ、県・市町村との認識を共有化し運動を積み上げ、労働運動における位置づけも強め、全国的な運動の発展を展望すること。
〇後期高齢者医療制度・介護保険制度の改善を含めた広い視野で一体的に運動を推進すること。
  助言
   ●助言者の神田敏史氏(神奈川自治労連委員長)からは、神奈川県の国保運営方針のポイントが報告されました。
  討論
   ●参加者の討論では、自治体財政が厳しい中で、どう法定外繰り入れを確保すれば良いのか。生活保護を国保に組み入れる議論も出ており、注意が必要。そもそも生活保護と国保とは性格が違い、生保利用者への専門的なサポート体制が必要なものである、などが議論され、参加者層の傾向もあり、深い議論が行われる、有意義な分科会になりました。

【暮らし分科会】
テーマ:コロナ感染症過の暮らしの変化と市民の取組
 今年の自治体学校暮らし分科会は、神奈川自治体学校全体のテーマ「危機の時代の地域と自治体」を受けて、コロナ感染症過の暮らしの変化と市民の取組を「医療と食」について市民の活動を学び、交流しました。
 分科会前半の「医療」では、
@神奈川県保険医協会主幹の田中麻衣子さんから、「新型」コロナ感染拡大における第一線医療の現状」で、「自ら感染の危険を伴う患者受け入れ態勢の困難さ」、「一般の患者受け入れが困難になり病院の経営に響く」という状況。「国、行政の医療機関・事業者や従事者への支援の必要性」が話されました。
A横浜市の保健師の田中美穂さんから、「コロナ過で横浜市の保健所は」として、「全区にあった保健所が1所」に「事務業務を行いながら感染症対策をする長時間労働になる」実態が報告されました。
B元神奈川県保健所職員の赤堀正光氏さんからは、国の政策による「県保健所の公衆衛生活動の縮小した」、「専門職不足でコロナ対応で市からの支援受けている」などの実態が報告されました。
 分科会後半の「コロナ禍で見えた食の危機と行政の役割では、
@「横浜市の学校給食休止から見えたことと行政の役割について」、横浜学校給食を良くする会代表委員 鈴木圭子さんから「コロナで停止となり、子どもたちに給食は欠かせないと実感」した。(給食停止中に「希望者に給食を」の取組)『中学校に給食を』の運動を強めている」との報告、
A「子ども食堂から見えたこと」について磯子区の子ども食堂運営委員の牛山和子さんから、「子どもたちに喜ばれたし、親ごさんたちとも話が出来た。地域の色々な人と協力して実現できた」などの報告をいただきました。
 意見交換では、PCR検査の強化の必要性、中学校給食実現の取組の工夫など参加者の経験を踏まえた発言が交わされました。大須理事長から締めのお話しをいただき、分科会を終了しました。
今回の暮らし分科会は、「二つの分野についての報告と交流」であったことが大きな特徴でした。それは、医療・公衆衛生関係者、子育て・教育関係者、女性運動団体、自治体議員や議員候補者多彩な参加者に現れています。久しぶりに?名を超える参加でした。

                        

2019年に開催した、第47回神奈川自治体学校のもようはこちら
2018年に開催した、第46回神奈川自治体学校のもようはこちら
2017年に開催した、第45回神奈川自治体学校のもようはこちら
2016年に開催した、第44回神奈川自治体学校のもようはこちら
2015年に開催した、第43回神奈川自治体学校のもようはこちら
2014年に開催した、第42回神奈川自治体学校のもようはこちら

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2021年3月24日更新